こんにちは。ひとりで.comです。
2016年12月22日放送のカンブリア宮殿は「和食の異端児が切り拓く!進化する日本料理の未来」と題して、菊乃井の村田 吉弘氏が登場します。
[菊乃井]日本料理を科学で解明!次世代に手軽な日本料理を
タカシマヤで売れる「幻のいなり寿司」
東京二子玉川の代名詞、玉川タカシマヤのデパ地下にある名店の売り場がある。
そこで行列を生み出していた商品が「いなり寿司」。和風でさっぱりしているお揚げが特徴的で、京都の有名豆腐店からわざわざ取り寄せているという。できたてを食べてもらうため、すぐ裏の調理場で握っている。1日100個限定で昼過ぎには売り切れてしまうことから「幻のいなり寿司」とも呼ばれる。
この「いなり寿司」を作っているのが、
京都の老舗料亭「菊乃井」である。菊乃井は創業1912年の創業100年あまりの老舗料亭。お店に1歩踏み入れると和をテーマにした庭と落ち着いた空間。そこで月替りで厳選した素材を提供するスタイルをとっている。
京都本店ではミシュランで3つ星を獲得しており、東京赤坂店はミシュラン2つ星、そして京都の露庵店もミシュラン2つ星。合計7つ星の料亭である。
菊乃井:日本料理を科学する
東京赤坂店では、京都本店で使っている食材を使っている。従って毎日朝8時に瀬戸内海などで取れた魚介が店に届く仕組みになっている。
旬の食材を使う事にこだわっている菊乃井では毎月メニューを変えている。10種類にも及ぶ料理は全て三代目の村田 吉弘氏が考えている。
赤坂店をオープンしたのが2014年。その時村田氏が考えていたのが、一般の人、若者でも手がとどく料金の和食である。
「一般の人が1回の料理で手が届かない料金設定を行っている料理屋は、一部の特定の人向けのお店ということ。もっと多くの人、若者にも和食を楽しんで、喜んでもらいたい、そして日本料理を広げていきたい」
そう、村田氏は考えているとのことである。
1951年、3代目を約束された長男として生まれる。修行期間はたった3年だけで、1976年に親から言われるがまま、親の資金援助によって「とにかくやってみろ」とお店をスタートさせた。しかし、一向にお客さんは来ない。
一体何が問題なのかかわらない状態で、とにかく料理本を熟読したという。そしてあることに気づいた。
日本料理の本には、
「一口大に切って、うす塩を振って、さっと湯がく」
なんとも曖昧な表現である。
一方、フランス料理の本には、食材の量や調理すべき時間などが細かく記載されている。
「フランス料理の料理人に聞くと、調理方法を論理的に説明できる。勘とか経験よりも何度でどうすればどう反応するか、科学の分野に近い事を言う」
そこから、村田氏は徹底的に料理研究に没頭する。それは、分量などの分野にとどまらず、何をどう混ぜたらどんな香りがするのか、という科学的な分野にまで及んだ。
「料理はすなわち科学。科学的な目線がないと料理に進化はない」
という。
家庭にも本格的な日本料理を届けたいと思い、ネット販売も行っている。
最近売り出したのは「すっぽんスープ」。村田氏のオススメの一品。
材料のスッポンは、自然豊かな愛媛県宇和島の水幸苑という養殖場で育ったスッポンを使用。エサにはアジのすり身などの無添加のものを使用し、高価な高麗人参も混ぜているという。商品化に5年かかった自慢の一品。
日本料理の危機??海外進出へ
「和食」は3年前の2013年、ユネスコの無形文化遺産に指定された。実はその際、ユネスコに働きかけたのも村田氏だという。村田氏は
「ユネスコへの文化遺産としての登録は絶滅危惧種であることも指している」
と日本料理の承継への危機感を頂いていた。
そんな強い危機感を持つ村田氏は海外進出をもくろんでいた。
イギリスロンドンにできた日本食レストラン「トキメイテ」。ここはJA全農が経営し、村田氏がプロデュースを任された。
2014年、EUへの和牛輸出が解禁となったため、まだ馴染みのない和牛を使った日本料理を広めようと試みている。ここで、サントリーのウィスキーと和牛を組み合わせたキャンペーンを行い、日本料理に目を向けさせたいという。
イチジクとバニラを組み合わせて和のテイストがあるソースを作ろうと言うのだ。イチジクを用いた八丁味噌風イチジクソースを作ったのだ。なぜその組み合わせで味噌ができるのか…それは村田氏が味噌を科学的に理解しているからである。
八丁味噌は、長期熟成によってアミノ酸と糖の「メイラード反応」が進み、独特の旨味が引き出される。イチジクも同様で、イチジクに含まれるタンパク質や糖に熱を加える事で同じ「メイラード反応」を起こし、近い味ができるのではないかと考えた。
「だしも昆布も醤油もないところで味噌ができない…と言ってしまったら日本料理の料理人ではない。全然ものがなくても、日本料理の料理人である限りは”日本料理”を作らないとダメ」
料理評論家からの評判も上々だった。
村田流人材育成法 – 真の料理人は考える –
菊乃井での人材育成法は他の料理店とは異なる。通常、料亭などの日本料理屋の場合、新人は下積みをして、その間に先輩からそのやり方を盗め、といったような徒弟制度をとっている場合が多い。しかし、菊乃井では、
- 先輩が新人の専属コーチ
- まかないは新人が担当
というような形式を取っている。先輩が新人を教えることによって、新人はひとつひとつの作業や道具の使い方を早く習得することができる。一方先輩にとっても、適当に教えるわけにはいかないので、しっかり振り返りを行った上で新人に教える必要がある。
また、社員向けの料理であるまかないは新人が担当する事に決まっている。お客の料理が作れない新人にとって、まかない作りは実践の場である。
菊乃井のPCの中には「菊乃井大全集」というファイルがある。ここには、菊乃井で作られる全てのレシピの材料や調理方法が事細かに記されている。これを再現すれば誰でも村田氏の料理を作ることができる。
「料理人は考えなければダメである。料理という字は、理(ことわり)を料(はか)り定めると書く。お客がどういう状況で料理を食べるのかをいろいろ考えた上で、その考えが深いほどよい料理ができる」