こんにちは。ひとりで.comです。
2016年12月20日放送のガイアの夜明けは「密着!「築地」7ヵ月 ~移転問題…そして新たな挑戦~」と題して移転問題に揺れる築地市場の今を特集します。
築地市場から豊洲市場への延期で奮闘する現場
2016年5月、築地では「ありがとう築地」と呼ばれる大がかりな祭りが行われていた。来場者数は15万人にも登った。しかし、この後まさか築地市場の豊洲への延期が起きるとは誰しもが考えていなかった、移転問題が延期することで多くの影響を受け、それでもなんとか良いものをお客さんに届けるために日々奮闘する築地の仲卸業者を特集する。
【目次】
築地市場最大の仲卸業者「山治」
築地の仲卸業者「山治」。この山治は築地最大の仲卸業者である。従業員は106人でマグロを除く鮮魚全般を取り扱っている。
1958年、今の先代である山崎治夫さんが、貝の取扱いからスタートした仲卸業者で、貝を買ったお客さんがタイが欲しいと言いタイを仕入れ、タイを買ったお客さんがヒラメも欲しいと言い、ヒラメを仕入れる、ということで拡大してきた。
築地には1日当たり1,600トンもの水産物が集まってくる。その中で良い魚を一瞬で目利きするのが仲卸の腕の見せどころ。約600社の仲卸業者が軒を連ねる。
山治は市場の移転を大きなチャンスと考えていた。
しかし、そのチャンスも大きな転換期を迎える。2016年11月の移転に向けて10年以上も準備を進めてきた山治。しかし小池都知事の記者会見で延期が決まった。呆然とする山治の従業員。魚を入れる水槽や製氷機など既に億単位の投資を行っていた。
山治の社長は従業員に対して徹底した経費削減を訴える。
移転後の築地の目玉を予定していた「築地魚河岸」
築地市場の目の前にある「築地魚河岸」。ここは元々中央区の持ち物で新市場に移った後でも築地の賑わいが消えないようにと35億円かけて作った場所である。
2016年11月19日にオープン予定で、既に60の業者が入居を決めていた。この場所は、築地から豊洲に山治が移ったあとでも営業を続けていけるようにと入居を決めていたが、今回の市場延期に伴い、山治の店舗が現築地市場内とこの築地魚河岸と2つで営業することになってしまった。
この隣接した2つの店舗でどのように棲み分けするのかについては、全く考えられてないという。
いつ辞めるべきか?移転で増える負担
一方別の悩みを抱える仲卸もある。それが有限会社徳永水産。家族経営の零細企業である。今年、得意先には「移転とともに閉店する」という手紙を送っていた。
閉店の理由は移転のために少なくとも1,000万の費用がかかると試算していたからだ。これが大きな負担となり、移転した先でもこの借金を背負ってもうまくやっていけるとは限らないため、2016年9月に閉店する予定だった。
実際、零細の仲卸業者については、移転をきっかけに閉店しようと考える店も多く、2011年に711軒あった仲卸業者も2016年には573軒にまで減っている。
徳永水産も閉店に向けて、従業員を10名から6名に減らし、閉店の準備を進めていた。深夜1時に築地に来て昼の13時に帰宅する…そんな生活も間もなく終わろうとしていた。
しかし、移転が延期になったことで全ての予定が狂ってしまった。お客さんからも移転が決まるまで続けてくれと言われることも多く、辞めるに辞められなくなってしまった。2016年11月中旬、安全性の確認のため移転は早くても1年後、場合によっては数年後になる可能性もあるという状況になってしまった。
縮小の一方で新たな参入企業も
嘉徳という仲卸業者は廃業を考えていた。それを2年前に買収したのが、株式会社プレコエフユニットという食品卸の会社である。これまでの仲卸のやり方を抜本的に変え、「嘉徳」の売上を25%アップさせた。多くの仲卸は常連客を待つのが基本スタイルだったが、この「嘉徳」は積極的に客を呼び込みます。通常、ケース単位で売る商品も1個単位で販売することで、客の利便性を高めた。
最大の特徴は築地から20分ほどの加工センター。
この加工センター宛にひと晩で200件ほどの注文が来るという。個人の商店では、魚を1匹仕入れても全て使いきれなかったり、手間を省くために捌いて売って欲しいという要望が多いという。そうした声に対応するため加工センターで捌いてから納品する。これまでの築地市場にはなかったサービスで売上を拡大している。
もともとプレコエフユニット(プレコ)は肉の加工・配送で成長した企業である。従って、魚の加工・配送はお手の物。肉の加工では、1万8,500店と契約していた。それを引っさげて水産業に参入してきた。
海外で日本の魚を販売する山治
11月17日、築地の仲卸「山治」の社長はアメリカロサンゼルスへ…Seafood showへ参加するためです。築地で買い付けた魚を「鮮魚セット」として販売しようというのだ。実は山治では、20年前から海外向けに販売を行っており、現在は12カ国に輸出を行っている。お客さんは主に、他国で日本食などを展開している人向けに販売している。
築地魚河岸のオープンと懸念的中
2016年11月19日、築地魚河岸のオープンの日を迎えた。とにかくいい商品を仕入れて並べ、値段をつけていくことでスタートすることにしました。当初抱いていた懸念は的中。ほとんどの人が素通りしてしまう状況だった。
市場 × IT で新たな顧客開拓「いなせり」
いなせりというサイトがある。このサイトは日本エンタープライズという東京都渋谷区にある企業が制作した。
この仕組みは仲卸業者がサイト上に売りたい魚をアップロードし、店舗がそれを買う。即日配送がウリでいなせりが配送をまとめて行う。仲卸組合の公式の事業なのでその信用力が高い。
このいなせりの仕組みにチャレンジしようと考えているのが、ノジ喜代という従業員10名でぶりとカツオが専門の仲卸業者。築地の中で元気よく売るだけでなく、新たなチャレンジをして売ってみる、といなせりに密かな期待を寄せる。
最終的にいなせりに参加するのは、仲卸業者600社のうち100社ほどとなった。
上記のノジ喜代だけでなく、高徳という従業員4名で冷凍マグロが専門とする仲卸業者も時間の制約も多く営業人数も少ないのでいなせりがどこまで売上に貢献してくれるのか期待をしているという。
いなせりの主なターゲットは、卸市場にこれまでいけなかった飲食店。この日訪れたのは栃木県をメインに6店舗を展開する寿司店「奴寿司 華月」。普段は宇都宮の市場から魚を仕入れているという。この店舗の場合だと、午前2時までに発注すれば午後4時すなわち夜の営業までには注文した魚が届くという。
ただし、まだ課題もあった。
もともと豊洲新市場移転に伴う目玉プロジェクトのひとつとして進んでいたこのいなせり。いなせり専用の荷捌きスペースも確保されていて、移転とともにその場所で荷捌きを行う予定となっていた。
しかし、移転が延期になったため、築地市場にはそれだけの場所がない。仲卸組合側は荷捌きスペースが確保できないということもあり、はじめのサービス提供エリアは23区内に限定すべきではないかと訴えてきた。サイト運営側としては、23区外の人こそ本当のターゲットと考えており、議論は平行線を辿る…一旦サイトのスタートは12月5日に延期されることとなった。
ついにいなせりのサイトオープン
2016年12月5日、ついにいなせりのサイトがオープンする日を迎えた。初日時点で、魚を出品した仲卸業者は26社で、商品数は280点となった。
先ほどの栃木県宇都宮の寿司店「奴寿司 華月」では、いなせりを見ながら何を注文するか決めていた。カキを20個、そして…ノジ喜代のブリ。さっそく常連客にすすめて食してもらうと、お客さんも大満足だった。
築地魚河岸に大きな変化が…
一方、オープン直後に閑散としていた「築地魚河岸」。オープン直後と異なり、人だかりができていた。実はこの「築地魚河岸」は本場の築地場内と異なり、午前9時を過ぎると午後2時までの間、一般客に販売することができる。目利きのプロである仲卸から質の良い魚が安く買えるとあって、大盛況。場内ではできなかった加工場をつくり、切り身でも販売していた。