[クローズアップ現代+] 「週休3日」最前線 収入はどうなる?残業は?– 2017年8月3日

クローズアップ現代
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こんにちは。ひとりで.comです。

2017年8月2日放送のNHK クローズアップ現代+は「週休3日」最前線 収入はどうなる?残業は?と題して企業の働き方改革として注目される週休3日制について特集します。

 

週休3日制で何が変わる?

 

 

大手宅配会社 佐川急便が導入を決めたことでいま注目が集まる週休3日制正社員制度。人手不足で悩む企業を中心に、いまや10年前の倍以上の企業が導入を決めている。実際、週休3日制の導入によって、就職希望者が増えたという企業もある。さらに、週休3日婚まで登場。

しかし、週休3日になることによって、収入が減るのではないか、残業が増えるのではないか、という不安や懸念も浮かび上がる。そもそも会社の業績は大丈夫なのか、などの最前線に迫る。

 

 

国の調べによると、週休3日を導入している企業は全体の5.8%になるという。これは10年前の2倍に当たるという。具体的にどういった企業が導入しているかというと…

 

企業名 業種 タイプ
佐川急便 運輸 労働時間→同

給料→同

ファーストリテイリング アパレル
アルペン スポーツ
トットメイト 保育
ウチヤマホールディングス 介護
日本KFCホールディングス 飲食 労働時間→減

給料→減

ヤフー IT
日本IBM IT

 

週休3日制を導入する企業は大きく2つに分けられ、労働時間をこれまでの8時間から10時間に伸ばし、週の労働時間は変わらずに給料も変わらなくしている場合と、1日の労働時間もこれまでと変わらずにその分給料も下がる場合とがある。

 

多くの場合は、人手不足を解消したいと考えておこなっているケースが多いようであるが、実際どのような変化が起きているのだろうか。

 

 

福岡県の介護施設さわやか清田館の場合

 

福岡県北九州市の介護施設さわやか清田館では、正社員7名が週休3日制を導入した。週休3日制の導入によって、プライベートを充実させ、人材の確保をしようという狙いがあるという。この介護施設の場合、週の労働時間は40時間のまま変わらず、週休3日制を導入している。そのシフトの変化は以下のようになっている。

 

週休2日 週休3日
週休2日 週休3日

 

しかし、とある社員は週休3日制になって、生活が大きく変わったという。この社員は、自宅で1人認知症の母親の面倒を見ており、夜勤が終わる朝8時過ぎに母親のデイケアの送迎ができるようになり、これまで以上に母親とのコミュニケーションが増え、仕事との両立がしやすくなったと言います。

 

さらに、中には、週休3日のおかげで、結婚できたという人もいるという。この社員は、夫婦ともに介護職をしており、これまでは就業時間が不規則のため、なかなか会う時間も作れずにいたという。しかし、旦那さんが週休3日になったことで、一緒にいられる時間が明らかに増えたという。そして今年6月に結婚できたという。いわば”週休3日婚”である。

 

そして、残業時間にも大きな変化が起きているという。この会社では、週休3日制を導入したことによって、残業時間が年間850時間も減ったのだという。これは年間およそ90万円ほどの効果だという。所定内労働時間が8時間から10時間になることによって、これまで通常残業しなければ処理できなかった残業が、時間内にこなせるようになったのだという。

 

週休3日制によって、必要となる人員は増えたが、その分採用はしやすくなったのだという。

 

 

 

増える週休3日制希望者たち

 

週休3日制の導入を希望する人の割合が増えているという。

20代 59.0%
30代 52.1%
40代 50.3%
50代 50.0%

 

週休3日専門の転職コンサルタントまで登場しており、育児やプライベートと両立しながら生活したいという人が増えているという。

 

 

週休3日制を導入する企業の中には、人材確保だけでなく、サービス向上ができているという企業もある。例えば、保育事業を営むトットメイトでは、保育園の開演時間8時から18時までの間に所定労働時間10時間の社員を充てることができ、利用者からも送り迎え時に同じ人が対応してくれるという事で、評価も上々であるという。

さらに、企業の競争力強化に活用しようと、ヤフー株式会社は1日8時間勤務での週休3日制を導入している。社員の才能をどのように最大限活用できるかという点において、週休3日制の導入にとどまらず、テレワークの導入など、社員のひとりひとりが価値の発揮にどのように貢献するのかを考えるきっかけにしてもらいたいという。

 

 

週休3日制がいま増えている理由として、人事コンサルタントの西村創一朗氏は2つの理由を上げている。

ひとつめは人材確保。これだけ売り手市場の中でひとりでも優秀な人を採用するため、あるいは退職を防止するために週休3日制を導入しているのではないか。

ふたつめはイノベーション創出。週休3日を導入することによって、これまで仕事でいっぱいいっぱいだった社員が、インプットの機会が増えるあるいは、海外旅行などでリフレッシュできる、こうしたことによって斬新なアイディアを発揮できるのではないか。

 

 

さらに、働き方研究のエキスパートである佐藤博樹氏は、週休3日制の落とし穴について

特に10時間勤務となる週休3日制に対する落とし穴として3つあると考えている。

ひとつめは、1日あたりの労働時間が長くなるため、ストレスが溜まりやすくなるのではないかという点。ふたつめは、平日のゆとりが非常に少なくなってしまうのではないか。みっつめは、普通の働き方改革を脇において10時間勤務で本当の意味での働き方改革が阻害されてしまうのではないか、という3点である。

と述べている。

 

 

 

 

週休3日制で残業代は減るのか?

 

週休3日制の導入において、残業代はどうなるのか…例えば、運輸業の場合、平均的な給与は以下のようになっている。

 

運輸業残業
運輸業残業

 

上記運輸業の場合、平均的な所定外給与(残業など)は59,000円と全体の15%ほどを占めている。週休3日制の導入によって、この部分が削られてしまうとなると、生活に大きな影響が出てしまうと考えられる。

 

そこで、収入源を副業でカバーする人も出てきている。

都内のサイボウズというIT企業ではたらく中村龍太さんは、これまで外資系企業の営業マンとして猛烈に働いてきたが、4年前、この起業に週休3日社員として転職してきた。中村さんは週休3日のうち1日を副業として、農業を行っている。実際に農業生産法人に所属し、希少種の栽培と販路の開拓を担っている。

住んでいる場所が、妻の実家で農家のため、農機具や農地などにお金がかからないのだという。天気や自分の健康でゆったりと仕事ができるのも気に入っているのだという。

中村さんは、4年前転職を考える際、こどもと専業主婦の家族構成を考えると一気に収入を減らすことができず、転職にも足踏みしていたが、週休3日のサイボウズと副業でこれまでの収入の6割を確保できることがわかり、転職に踏み切ることができたのだという。

 

副業は、収入だけでなく、思わぬメリットもあったのだという。本業のITを農業にフル活用させ畑に設置したセンサーから温度と湿度のデータを収集し、最適な収穫時期を予測する装置を作り上げた。これによって、安定的な出荷体制を実現できたのだという。このシステムは本業のIT企業が作っているもので、ここから他の農業法人にも売ることができ、営業成績もアップしたという。

 

 

トップのコミットメントで生産性があがる吉原精工

 

さらに、週休3日の導入で労働時間を減らし、給与水準は維持するということにチャレンジしている企業もある。それが、吉原精工という町工場である。

この町工場では、週休3日の社員は夕方の17時から翌1時までの8時間を週4日働き、週の労働時間は32時間となる。それでも給与は同じ年収600万以上となる。

今後は、日中の時間でも週休3日制を導入したいと考えているという。

この吉原精工では、これまでも残業をゼロにする改革を行い成功してきている。その秘訣は、残業代を基本給に組み込むことであるという。残業代はこれまで生活給の一部として組み込まれてしまっていたため、それをなくすと社員はやる気をなくすと考え、このような対策を取ったのだという。

早く仕事が終わっても給与は削られないという安心感から、社員同士の助け合いが加速し、自分の担当以外の仕事も対応するようになったり、ベテランが持っているノウハウが共有されたり、さらに会社のトップは無理な仕事は断るなど、良いサイクルが会社で起こるようになっているのだという。

 

これに関して、中央大学大学院教授の佐藤博樹氏は、

トップの決断が重要である。単に残業削減するだけじゃなく、それができるような仕組みにすることが大切で、これは大企業でも、働き方をいかに改革していくかが重要である

という。

 

また、せっかくの休みに副業というのは本末転倒なのでは?という意見に対して人事コンサルタントの西村創一朗氏は

働く個人にとって重要な事は、どんな事を副業にするかという事であると考えている。副業には大きくわけて2つあり、自分がやりたいこと、できることを副業にするポジティブな副業と残業代を補うためにやむにやまれず行うネガティブな副業。そのうち、ポジティブな副業に取り組む事が重要で、新しいことをすることよって、新たな知識やスキルをみにつけ場合によっては、それが本業でのイノベーションを生むことにつながるのではないかと思う。

という。