こんにちは。ひとりで.comです。
2016年10月25日放送のガイアの夜明けは「医療現場を救う! 町工場の〝技〟」と題して医工連携の現場を特集する
町工場の技!医工連携で現場を変える!
医療機器の分野は、様々な製造・販売の規制もあって、新規参入のハードルが高い。高齢化により日本の医療機器市場はおよそ3兆円にまで拡大しているが、国内メーカーは伸び悩んでおり、海外メーカーが5割に迫る勢いでシェアを広げている。しかし今、全国各地で「医工連携」と呼ばれる取り組みが始まっている。日本の〝ものづくり〟を支える中小企業と医師たちが連携し、新たな医療機器を開発しようというものだ。町工場独自の〝技〟で医療の常識を変えようと挑む人たちを追う。
【目次】
鳥取のドリルメーカー「株式会社ビック・ツール」の月光ドリル
整形外科医療で骨の滑りをなくす「月光ドリル」
鳥取県にある株式会社ビック・ツール。創業は1980年で今年で36年になる。従業員が60名ほどの中小企業である。主に、工業用のドリルを製造・販売している。
株式会社ビック・ツールの主力製品は「月光ドリル」(GEKKOUドリル)という工業用ドリルである。月光ドリルはこれまでのドリルの回転軸の掘り方を三日月状にすることによって、切れ味を大幅に向上させることに成功した。
このGEKKOUドリルに目をつけたのが医療現場である。
整形外科の現場で、人工関節を入れる際や骨折のプレートを入れる際、ドリルで骨に穴を開ける必要があるが、従来利用しているドリルだと、骨の表面で滑ってしまい、ドリルを斜めに入れることができなかった。
従って、一度ドリルを垂直に入れた後、斜めにドリルを倒して入れることによって斜めの穴を開けている。しかし、この方法だと、必要以上の面積、穴をあける必要があり、時間もかかる上に患者の負担にもなってしまう。
そこでGEKKOUドリルの技術を応用して、整形外科用のドリルを開発することに成功した。このGEKKOUドリルを使うと斜めに穴を開ける際にも骨の上で滑ることなく穴を開けることができ、医師からの評価も上々である。
月光ドリルは、2016年10月に医療機器として正式に認められた。今後は整形外科の世界で月光ドリルが一気に広がっていくと予想される。
歯科インプラントで熱を抑えた「月光ドリル」
この技術は、整形外科の医師だけでなく、歯科医も使いたいとの要望があがってきた。医療用の月光ドリルよりも更に細い、直径2ミリの世界である。
歯科インプラントの現場では、顎の骨に穴を開けることが多い。しかし、穴を開ける際、摩擦熱が発生してしまい、温度があがりすぎると、その熱によって骨が壊死してしまう可能性があるため、実際の現場では、水をかけながらドリルを扱っている。
水をかけることによって、ドリルが見にくくなるため、時間もかかってしまい、患者さんにも歯科医にも負担となる。
この負担を解決するために、新たなドリルが欲しいというのが今回の要望である。
その要望にも月光ドリルの技術が活かされる。
月光ドリルの先端の角度や切り込み部分の角度など、試作に試作を重ねた。その回数は60回以上。温度を下げるために至った結論は
ドリルの回転数を下げる事
ドリルの回転数を下げると温度は下がるがその分、穴をあけるスピードが遅くなる。時間がかかってしまうとこれまでと変わらなくなってしまうため、そのバランス感覚が非常に難しいところである。
結果的に通常1,200回転以上の速度で回すインプラント用のドリルを、500回転で回すことによって、温度を下げることと時間をかけずに骨に穴をあける事、両方を実現可能とした。
点滴の常識を変える!入江工研の吊るさない点滴
埼玉県川越市にある入江工研株式会社。昭和41年創業、従業員190名を誇る大型真空バルブで国内シェア6割を誇る企業である。
新幹線や衛星、半導体メーカーなどでその技術製品が活用されている。工業用製品がメインの入江工研に医療現場から試作品作成の依頼が舞い込んできた。
吊るさない点滴
である。
例えば、訪問介護の現場。急遽点滴を打たなければならない状況においては、点滴を吊るす場所にいつも苦労する。場合によっては、部屋の電気の紐に点滴を巻きつけることによって、点滴が流れ落ちるように工夫する。また、点滴の場所を固定してしまうことによって、点滴をうっている約2時間もの間、患者さんの行動を制限させてしまう。
訪問介護の現場以外でも、点滴は点滴スタンドを持って歩く必要があり、倒れないように最新の注意を払わなければならない。
実はこの点滴をスタンドに立てて歩く、というスタイル、100年もの間その方式に変化がないという。もっと自由度が高い点滴を作れないか…という事で、真空技術に長けている入江工研に白羽の矢がたった。
入江工研としては、はじめての医療業界への挑戦。医療業界への挑戦は入江工研としては念願だった…。というのも2008年のリーマンショックの影響により、一時期売上が3割ほど減少した時期があった。そういった背景もあり、景気に左右されない業界への進出を考えている矢先、飛び込んできた話であったからだ。
まだ試作段階で、病院からも完全に満足いく製品には仕上がっていない。大きさや重さなどクリアしなければいけない課題はたくさんある。
これからも入江工研の挑戦は続く。