[ガイアの夜明け]バター不足の本当の理由とは? 巨大”規制”に挑む! – 2016年11月22日 –

ガイアの夜明け
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こんにちは。ひとりで.comです。

2016年11月22日放送のガイアの夜明けは「巨大”規制”に挑む!〜明かされる「バター不足」の闇〜」と題して酪農家とJA、指定団体の間の50年続く規制に迫る。

 

JA / 指定団体と戦い自由な取引を目指す酪農家とMMJ

 

 

深刻な国内バターの不足

 

バター価格と生産量推移
バター価格と生産量推移

 

上記は、バターの生産量と卸売価格の推移である。折れ線グラフを見ると明らかな通り、バターの価格は高騰を続けている。スーパーなどではバターが売り切れている…という場面に出くわしたことがある人も多いだろう。消費者向けのバターはこの10年で4割も価格が高騰しているという。

 

クロワッサンを看板商品とする箱根ベーカリー。神奈川県箱根に本社を持ち、関東にて5店舗を構える人気ベーカリーである。クロワッサンの原料のひとつがバターであり、他のパンと比較しても大量のバターを必要とする。この箱根ベーカリーでは、クロワッサンの生地の4分の1ほどがバターで形成されている。

 

ベーカリーでもバター不足は近年深刻で、2016年は2015年の7割程度しか入荷できていないという。現在は、なんとか全国からバターを探し入荷をしているという。

 

国もこの国内におけるバター不足の状況を鑑み、海外から1万トンのバターを緊急輸入した。

 

 

 

生乳の取引を制限するJA / 指定団体の規制

 

 

そもそものきっかけはおよそ50年前にまで遡る。日本は戦後の状況下で経済が不安定だった。牛乳やチーズ、バターの原料となる生乳についてはその中でも際立って需給が不安定な状況にあった。生産者とメーカーの間では、「乳価紛争」と呼ばれるほどだった。生乳は同時の技術下において、腐りやすく長期保存が難しかった事も需給の不安定さを後押しした。

そうした背景をもとに、1961年には農業基本法の関連法案として「畜産物の価格安定等に関する法律(畜安法)」が成立。この畜安法によって、政府は、生乳とバターなどの乳製品の価格安定化を図るために、基準価格を決定することになった。

こうして、農協(JA)や全国の指定団体と呼ばれる組織が生まれることとなった。

 

 

指定団体制度
指定団体制度

 

 

 

全国に指定団体と呼ばれる組織が存在する。地域ごとに担当の指定団体が決められており、全国に10個の団体がある。

 

ガイアの夜明け 指定団体制度
ガイアの夜明け 指定団体制度

 

北海道 ホクレン農業協同組合連合会
東北地方 東北生乳販売農業協同組合連合会
北陸 北陸酪農業協同組合連合会
関東 関東生乳販売農業協同組合連合会
東海 東海酪農業協同組合連合会
近畿 近畿生乳販売農業協同組合連合会
中国 中国生乳販売農業協同組合連合会
四国 四国生乳販売農業協同組合連合会
九州 九州生乳販売農業協同組合連合会
沖縄 沖縄県酪農農業協同組合

 

 

株式会社MMJ(Milk Market Japan)の挑戦

 

北海道浜中町。ハーゲンダッツなどに生乳を提供する鈴久名牧場。この牧場ではおよそ460頭を飼育する。原料を自ら栽培してより高品質の生乳を作る努力をしている。

しかし、北海道で酪農をやっている限り値段は変わりない。指定団体が品質の如何によらずキロ単位で買い取る仕組みになっているからである。そして、指定団体が買い取った生乳が全て乳業メーカーに売られる。この手数料によって指定団体が成り立っている。

 

 

この制度に改革をもたらそうと奔走するのが、株式会社MMJである。株式会社MMJは生乳を買う民間の卸売業者である。上記の鈴久名牧場の生乳を買い取り、乳業メーカーに販売しようというのだ。北海道の指定団体である「ホクレン農業協同組合連合会」に生乳を売却しようとすると、キロあたり90円。しかし株式会社MMJに売却するとキロあたり100円となる。指定団体よりも10円高い。年間にするとこれだけで2,000万円以上も増収につながるという。

株式会社MMJはこうした取引を徐々に増やしており、現在全国で50件の契約を持っている。しかしこれでも全国の流通量の1%にしか過ぎない。

 

 

 

 

 

東北に本社を置く富士乳業。東北では「東北生乳販売農業協同組合連合会」が指定団体となっているが、上述の鈴久名牧場のように、指定団体を通さず流通を試みようとしている。

しかし、その旨を指定団体に申し出たところ、驚くべき回答が寄せられた。

  • 今後の支払いを現金にしろ
  • 保証金を3ヶ月分積みなさい

このように契約に不利な条件を突きつけてきた。そしてこれを拒むと生乳の供給をストップさせられたというのだ。

 

 

ホクレンがバターを作らない理由

ホクレンは国内の生乳の半分以上、国産バターの9割の流通を握っている。

 

 

先日、酪農家とホクレンで行われた意見交換会で以下のような会話が行われていた。

 

”山のようにバターがあったら買わない。どんどんなくなっていくと消費者心理からすれば「またバター不足が起こるのでは」と買いましという行為が起こる。”

 

すなわち、バターを意図的に不足状態にすることによって、バターの価格をあげることができる…と言っているように聞こえる。バター不足は意図的に作られているのではないか…。そんな疑問すら生じる。

 

実はここにはこの指定団体制度がもたらすカラクリが存在する。

 

ホクレン 流通価格
ホクレン 流通価格

 

実は、生乳を卸す際の価格というのは、一定価格に統一されている。上記の図を見ていただくとわかる通り、バターとして販売すると1キロあたり74円。牛乳として販売すると117円となる。同じ生乳でもその後の製品によって、価格が異なるのだ。

牛乳用に売ったほうが、バター用に売るよりもキロあたり30円以上も得なのである。

バターは輸入で対応できる。だからより高く売れる飲料向けに回す。こうした対応がバター不足を引き起こしているとかんがえられる。

 

 

 

 

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販売手数料だけで年間200万!? 阿寒町の酪農家

 

北海道でスローライフを求めて酪農を始めた釧路市阿寒町の福田さん。50頭の乳牛を飼育している。サラリーマンよりは収入はあがったが、労働時間は1日12時間で土日の休みはなしなので、どちらをよしとするかは微妙なところだという。

 

酪農家は各指定団体に多くの手数料を支払っているという。阿寒町の福田さんの場合、農協への手数料で月72,000円、指定団体であるホクレンへの手数料で月22,000円ほど払っている。更にそれ以外に様々な手数料が取られ月17万ほどになるという。生乳の販売手数料だけで年間200万以上払っていることになる。何かを買っても、売っても手数料がかかる状況になっているという。

 

福田さんは、この状況を改善したいと考え、JA阿寒の組合長に株式会社MMJを通して生乳を卸したい相談に行ったところ、

「JAとしては歓迎はできない。最後に選択するのは個人の責任だが、リスクは背負ってもらう。エサだけ買う人と農協100%の人とだと同じ価格というわけにはいかない…」

と言われた。

これでは、株式会社MMJを通して販売する意味がなくなってしまう。このようにして、指定団体を通さず売ろうとする酪農家を食い止めているのである。

 

しかし突然、2016年11月中旬、JA阿寒農協から「エサ代」を値上げしないと口頭で通告してきたという。福田さんは自由な取引への第一歩を出せた。

 

 

 

実は上記通告が来る1週間ほど前の2016年11月7日、政府も生乳の流通を改革しようと安倍晋三首相が

「生乳については指定団体に出荷する酪農家のみを補助対象とする仕組みをやめ、酪農家が販路を自由に選べ流通コストの削減と所得の向上が図れる公平な事業環境に変えます」

と公式に述べた。JA阿寒農協の取り決めもこの影響を受けてのことなのかもしれない。

 

 

このような社会システムは、戦後の需給バランスの調整を国として行ってきた結果が招いたものであると考えられる。全国にある指定団体も彼らのビジネスを成り立たせるために行っている。それは、当時の社会情勢上必要なものであったし、それがあったからこそ、酪農家は安定した生活を送れてきた側面もある。

 

しかし、冷蔵・冷凍技術が進歩してきた現代において、安定的に生乳を作り、それを供給する事も可能になってきた。したがって、これまで培ってきた指定団体制度に関しても見直しをする必要が出てきている。

 

 

また、これまで一律で買い取られていた生乳も今後は徐々にその品質や量によって、価格も変わってくる世の中が近い将来やってくると考えられる。酪農家自身も良いものを生産して乳業メーカーから選ばれるように努力していかなければならないだろう。