こんにちは。ひとりで.comです。
2016年11月28日放送の未来世紀ジパングは沸騰キューバ!トランプ大統領誕生で日本にチャンス!?と題して、54年ぶりにアメリカとの国交を回復したキューバの今を特集します。
国交断絶キューバ革命と社会主義の終焉
【目次】
キューバ革命から社会主義国へ
世界でも有数の社会主義国キューバ。その歴史は今から50年以上も前に遡る。今でも50年前に逆戻りしたかのように1950年代のクラシックカーが街を現役で走っている。そんなキューバも変化の時代を迎えている。
キューバは1950年代まで民主主義国家であった。アメリカのフロリダ半島からほんの数百キロに位置するという土地柄、アメリカとの関係は深かった。当時は「アメリカの裏庭」とまで呼ばれるほどだ。キューバ政権はアメリカの支配下のような状態で、アメリカのいいなりの状態であり、汚職にまみれていた。
そんなキューバにおいて、革命を起こしたのがフィデル・カストロとチェ・ゲバラである。2人が立ち上がり、当時の親米政権を打倒。社会主義国家を宣言したのが1959年のキューバ革命である。
キューバ革命に当時対応したのが、アメリカのアイゼンハワー大統領。1961年には、アメリカがキューバとの国交を断絶し、キューバへの経済制裁を発動させた。
そんなキューバに近づいたのが旧ソ連である。ソ連がキューバ国内にミサイル配備を計画。米ソが核戦争寸前の事態にまで発展した。当時のケネディ大統領が「核戦争が起きる可能性は2分の1」と言うほどの危機的状況であった。
以降キューバは、ソ連からの原油を安く調達し、それを海外に売る…という方式で外貨を稼いでいた。ソ連の崩壊以降は、ベネズエラから原油を調達し、同様に海外に売ることでなんとか国の崩壊を防いできた。
オバマ大統領は、キューバを国際的に孤立させることによる民主化を促進させる…というこれまでのアメリカの政策を時代遅れ、と表してキューバへの経済制裁を解除する方向で動いていた。その歴史的な瞬間として、2016年3月現職大統領が88年ぶりにキューバへ降り立った。
しかしながら、キューバへの経済制裁の解除は、一部のみしか今のところ実現できていない。実はアメリカでは、議会とのねじれにより、キューバへの経済制裁の解除を議会から承認されずにいるのが現状だ。従って、一部大統領権限でできる事のみが制裁解除に至っている。本来であれば、貿易の自由化や海外からの投資といった制裁解除も行いたいと考えているが、現時点で実現できているのは以下の3点のみである。
- 旅行者によるラム酒や葉巻の持ち帰り
- キューバ宛の郵便の配達
- キューバへの渡航(制限付き)※ただし家族への訪問、学術会議などの目的制限がある
とは言え、長きに続いた社会主義によって、貧困であることには変わらないキューバ国民は少しずつ民主主義国家への道のりを歩み始めているのである。
観光立国キューバに向けて日本との意外な関係とは?
オバマ大統領による、段階的な経済制裁の解除によって、キューバへの渡航が行きやすくなった面がある。それによって、キューバへの観光客も増えているという。
HISも2015年にツアーデスクを設置。実際、日本からの海外への旅行者数は昨対比4倍以上に伸びている。特に男性に人気があるという。いい葉巻、いいお酒、クラシックカーが男性心をくすぐるという。旅行先としての魅力のひとつには治安の良さもあげられる。
ヨーロッパやアジアなど世界各国から現在の社会主義国のキューバの最後を見ようと、観光客が押し寄せている。その観光ビジネスを担っているのが、キューバから出稼ぎに出ていた人々である。
社会主義国家キューバの労働環境と生活基盤
キューバは社会主義国家であるゆえに生活基盤や労働環境も大きく制限されている。例えば、キューバの労働者は全員公務員扱いとなる。医者も企業で働くひとも皆公務員という扱いで、給与格差もほとんどなく平均月収は日本円で2,000円ほどである。
食料は未だに配給制であり、キューバの主食であるお米は月にひとりあたり3.2kg。黒豆は300gの割り当て。油、砂糖、塩、コーヒーなども配給されるが、1ヶ月の分量としては非常に少なく、家族構成によっては、3日で配給される食料がなくなってしまうほどだという。
道端では、使い捨てライターの修理屋があり、ガスの充填で8円。石の交換で8円。人々はなんでも修理して大切に使っている。そういったものを大切にする文化が今でも根付いている。
それでも、民主化の波はキューバ国内にも押し寄せている。これまで、GoogleやFACEBOOK等などのインターネットは分断されていたが、最近政府が解禁。徐々にスマートフォンが国民の中でも普及し始めている。外の世界は悪だ…と政府によって情報統制されてきた中でインターネットの解禁によって、世界の常識がキューバ国内にも浸透し始めている。ただし。まだまだインターネット環境は一部の地域でのみしか発展していないため、スマートフォンを持つ市民はこぞって高級ホテルの前に集まり、高級ホテルから漏れるWi-Fiを拾ってインターネットを行っている。キューバではインターネットを行うには、インターネットカードと呼ばれるものを購入する必要がある。1枚220円で1時間ほど利用可能。平均月収の10分の1ほどの価格である。
貧困層に対してもインターネットを普及させるべく、Google等がキューバへの無償でのインターネット環境の支援も行い始めているという。
キューバドリームで月給が50倍に。
昨今、キューバ国内から外国に出稼ぎにでていた人々が自由化の流れを見て国内に戻ってきているという。そういった人たちが出稼ぎで稼いできた貯蓄を元手にキューバ国内で観光ビジネスに乗り出し始めている。
例えば、部屋の1室を貸し出して1泊4,000円、観光タクシー事業で1時間4,000円で観光客を相手にビジネスを行っている。タクシーの運転手はこれまで月給2,000円だったのが、月給10万円になっているという。今後はレストランに氷を売る事業などをやろうと考えているという。
平等であるはずの国に少しずつ格差が生まれ始めている。
フィデル・カストロが愛したニッポン
キューバ国民が日本の何を知っているかと聞くと、決まって”オチン”という。これは、NHKの連続小説「おしん」のことである。カストロ議長も愛した物語である。
1994年キューバで放送されていたNHK連続小説「おしん」は視聴率80%以上とも言われていた。貧しさと戦うおしんに共感したキューバ国民。キューバ人ならほぼ全員知っているほど有名である。
カストロ議長も「日本が戦争に負けても大国になったのは国民がおしんのように頑張って働いたからだ」として、国民にはたらきかけていたという。
世界で最も長い稼動…シエンフエゴス発電所
キューバの世界遺産の街、シエンフエゴス。ここに国全体の12%の電力を供給している発電所がある。シエンフエゴス発電所である。1978年、日立製作所が当時300億円をかけて建設した発電所であり、今でも日立ハイテクノロジーズの社員がメンテナンスの技術指導を行っている。日立製作所が知る中で、世界で一番長期間稼動している発電設備である。40年経った今でも現役で動いているという。それを支えているのはキューバ人の勤勉さである。
1979年の稼働当初、日立製作所の職員が徹底的に操作方法を教え込んだ。それを忠実に守ってきたからこそ今でも稼働し続けている。忠実に守り続けることが長期間稼働させるために必要だと発電所の所長は言う。
発電所の所長は「日本人からは技術だけでなく、勤勉さも学んだ。生まれはキューバでも心は日本人だ」という。
2016年11月、これまでキューバの民主化を進めてきた民主党のオバマ大統領から保守党のトランプ大統領が当選。2016年11月25日には、1959年キューバ革命を起こした革命家のフィデル・カストロ議長が90歳で死去。
カリスマを失ったキューバは今後どうなっていくのか…今後も目が離せない。