こんにちは。ひとりで.comです。
2016年12月6日のガイアの夜明けは「今こそ、地元の”助っ人”に!~地域の銀行マン・信金マン~」と題してふるさと再生・ふるさと投資の特集をします。
地銀・信金マンが地方再生・ふるさと投資
大阪シティ信用金庫の企業マッチングによる新商品開発の仕組み
大阪シティ信用金庫。大阪府大阪市中央区に本社を置き、大阪府下に90もの支店と2,000人もの職員を抱える大阪府最大級の信用金庫である。
この大阪シティ信用金庫が近年、地域密着型の中小零細企業の支援策を行っているという。
大阪府松原市。全国でも有数の金網の街である。元々はこの地域は河内木綿の産地である。しかし江戸時代以降、外国から安価で良質な木綿が入ってくるようになり、木綿産業は衰退を辿っていた。そこで、木綿の織る技術を転用できる金網が徐々に広がるようになったため、今でも金網が地場の有数の事業となっている。
そんな金網工場のひとつにマツバラ金網という中小企業がある。創業は1934年で26人の会社である。大阪シティ信用金庫の営業マンは週に3回はこの会社を訪れ、入金の手続きを代行したり、会社の状況を確認しているという。
マツバラ金網では、一番細い金網で0.016mmの細さを誇る。髪の毛の5分の1ほどの細さである。
この細い金属を産業用フィルターとしてガスやオイルを濾過する為に製造販売している。この金網の技術を応用してインテリア向けの金網を開発するなど、新たな領域へ進出しようとしている。
こうした中小零細企業の細かな情報を逐一営業マンに入力させ情報を蓄積しているのが大阪シティ信用金庫である。取引先約2,400社分の製品の強みや弱み、社長の経歴や趣味などの細かい情報を集約している。
これを活用し、取引先企業の悩み(販路拡大や取引先のお客さん知り合いの要望)を解決しようというのだ。欲しい技術を見つけたいと思っている企業があれば、それを探して結びつけてあげる。それによって、融資を取り付けることを最終的な目的としている。
そんな取り組みの実例を見てみよう。
大阪府大阪市西成区に本社を置く、津川製作所。創業は1963年で従業員30人規模のモーター製造工場である。モーターとは電力を動力に変える装置。津川製作所ではモーターの設計から製造まで一貫して供給可能な高い技術を持つ。
そんな企業に、知り合いの農家から相談があった。
収穫した野菜を一輪車に乗せて運ぶ作業。この作業が高齢化により体力的に難しくなってきているので、何か機械化できないだろうか…という相談である。
販売価格の目標は10万円以下。
さっそく大阪シティ信用金庫のデータベースにて回路設計などができる企業がないか検索をする。すると当てはまる企業が13社でてきた。その1社が
である。2013年創業、従業員6名で産業用ロボットの基盤を作っている会社である。この会社の技術を応用すれば、ゼロから開発する必要がないため、低コストで製作できそう、ということである。
津川製作所のモーター技術と株式会社ケーエスラボラトリーの回路技術を組み合わせて、電動アシスト機能付きの一輪車を開発した。5つのモーターを組み合わせ、通常の1,000倍以上の力になるという。これで計算上は100キロ以上のものも運べるという。今後も改良が必要だが農家からも反応は上々。
こういった取り組みを大阪シティ信用金庫は各所で行っている。大阪シティ信用金庫は企業特性上、大阪府とその近郊のみでしか営業できない。従って、大阪府内の企業数減衰は死活問題であるという。大阪府内の企業が活性すれば、彼らの融資も増える、という中長期的な活動の一環といえるだろう。
地銀マンが”ふるさと投資”で中小企業を支援
ふるさと投資…という言葉をご存知だろうか?
ふるさと投資とは、内閣府地⽅創⽣推進室が事務局となって、地方創生の為にクラウドファウンディングができる仕組みの事を指す。
内閣官房の資料によると…
ふるさと投資…
地域資源の活用やブランド化など、地方創生等の地方資源活性化に資する取り組みを支える様々な事業に対するクラウドファウンディング等を用いた小口投資であって、地域の自治体等の活動と調和が図れるもの
出典:「ふるさと投資」連絡会議
と定義されている。
ふるさと投資は、『セキュリテ』というサイト名で運営されており、ミュージックセキュリティーズ株式会社という会社が運営している。
このふるさと投資を活用して、地域の活動を支援していこうとしているのが兵庫県豊岡市に本社を置く但馬銀行である。兵庫県の但馬地方はこの15年間で3割も事業者数が減少している。先ほどの大阪シティ信用金庫と同様に、地方の事業者数減少は、地方銀行にとっては死活問題である。なんとか地方の事業者に元気を取り戻してもらうためにも、この制度を活用して、盛り上げていきたいということである。
ではどのように地方銀行の但馬銀行と中小企業がこのふるさと投資を活用しているかについて見ていこう。
和菓子の老舗:谷常製菓
創業から150年の歴史を持つ谷常製菓。和菓子と洋菓子の専門店で昔から地元の人に愛されてきた企業である。これまで作ったお菓子を保存する手段がなく、店頭で販売することしかできてこなかった同社。
ふるさと投資を活用して、瞬間冷凍機を200万で購入した。これにより、パティシエが丹精込めて作った菓子を瞬間冷凍することで長期間保存ができるようになった。できたてとほぼ同品質で解凍することができるようになったため、これまでよりも販路を大きく広げる事ができるようになった。
これを機会に大阪の高島屋にも期間限定で初出店。
栗きゃらめるという同社の一押し品が高島屋にて提供できるようになったのも瞬間冷凍機を購入できたからの成果である。店舗に訪れたお客さんからの評価も上々で、近いうちに但馬地方から新たなヒット商品が生まれるかもしれない。
耕作放棄地の再利用ではちみつ作り:マイハニー
兵庫県養父市。ここは農業の国家戦略特区にも指定されている。この地域でマイハニーという会社が養蜂場を運営している。かつては農地だったところが高齢化と後継者不足で耕作放棄地となっており、その面積は年々増えている。そういった放置された耕作放棄地を活用してレンゲやボリジといった花を育て、はちみつを収穫している。
資金調達や販路拡大等に但馬銀行も積極的に協力している。販路拡大の際には、パティスリー・アッシュ・カトウという洋菓子店を紹介し、マイハニーで作ったはちみつを味見してもらう。また道の駅『但馬のまほろば』に置いてもらえないかと積極的に売り込む。
また、資金調達面では、ふるさと投資を活用。ふるさと投資の申請には数字も含めた事業計画書が必要だが、その作成も支援する形で、積極的な協力を行っている。実際、ふるさと投資を開始すると、開始からわずか5日で目標とする460万の支援を達成。全国から143人の投資家から投資資金を調達することに成功した。
上記の例だけでなく、ふるさと投資は全国でも実施例が増えている。
例1:ふるさとたまご村(京都府宇治田原町)
100%国産のエサで育った鶏の卵を生産している。黄身の色は少し薄いが濃厚な卵で、生産量拡大のため、ふるさと投資を活用して資金を募ったところ200人以上から投資があったという。その結果、事業が拡大。投資家は、この企業の新しい卵10個を受け取り、元本と配当1.4%を受け取った。
例2:米鶴酒造(山形県高畠町)
原料の酒米を地元産だけにこだわった純米酒を作っていた。その生産を増やすため、酒米の購入費をふるさと投資でまかなった。投資家は純米大吟醸を受取、元本と配当金7.2%を受け取ることができた。
上記はうまくいった一例である。もちろん事業がうまくいかない場合は、元本や配当金は保証されないため、投資家の目も厳しい。
但馬銀行では今後もふるさと投資を活用して、但馬地方の企業活性化を続けていくというが、直接融資ではなく、ふるさと投資を活用する理由を以下のように述べている。
「創業間もない事業者が取り組みを多くの人に知ってもらう為に融資よりもふるさと投資を活用したほうが良いのではないか?」
すなわち、設備や雇用が生まれたあとに銀行が融資でバックアップしようという考えのようである。