こんにちは。ひとりで.comです。
2017年2月2日のカンブリア宮殿は「1食20円の寄付が途上国の給食に!肥満と飢餓の解消へ!日本発の社会事業」と題してNPO法人 TABLE FOR TWOの代表 小暮真久氏が登場。
寄付で肥満と飢餓の両方を解決するTABLE FOR TWO
【目次】
無印良品のレジに置かれた寄付システム
全国に400店舗を展開する無印良品。その店内の一角で行列ができている箇所がある。カフェ&ミール ムジと呼ばれるカフェスペースで無印良品の423店舗中、24店舗にて実施されている。お客は女性が中心。その理由はメニューにあるという。彼女たちの心を捉えているのは野菜中心のヘルシーな惣菜。かぼちゃのマリネやりんごのルッコラといったようにである。
野菜料理だけじゃなく、ハタハタのそぼろで作ったラザニアといったものもあり、女性の心をがっちり捉えている。好きな惣菜を選び、ゴハンとセットで850円から1,000円といった料金である。
無印良品のカフェのレジにはTABLE FOR TWOと書かれたカードが置いてある。それをレジに出すと、頼んだ料理の料金に+20円が上乗せされる。これでTABLE FOR TWOへの寄付が完了する。この20円はTABLE FOR TWOを通じて開発途上国の学校給食一食に生まれ変わるという。
TABLE FOR TWOとは「2人のための食卓」という意味。食べ物があり余り、肥満などに悩む先進国と貧しく飢餓に苦しむ途上国、この2つの食の不均衡を解消する一石二鳥の仕組みである。無印良品では3年前に導入。
このTABLE FOR TWOの取り組みに協力するレストランは約80社にのぼっているという。
もっと寄付金を集めているところもある。それは伊藤忠商事の社員食堂である。ここでは1日1,300人が食堂を利用するという。この食堂で提供されるヘルシーメニューには、最初から20円の寄付金が含まれて料金設定がされている。毎日120食が提供されるが、いつも売り切れるという。
現在、TABLE FOR TWOは約360の企業・官公庁などが食堂に導入している。TABLE FOR TWOはNPO法人で2007年に設立された。常勤職員は3名のみで運営している。その寄付金は年々増え続け2007年に113万円だったものが、2015年には1億3,600万円にものぼっている。
世界を飛び回る小暮氏
このNPO法人TABLE FOR TWOの代表はほとんど日本にいないという。ではどこにいるのか…ケニア共和国のルシンガ島である。島の人口はおよそ3万6,000人。多くは漁業や農業といった一次産業で生計を立てている。ここにある小学校をTABLE FOR TWOは支援している。
ケニアにおける貧困率は高く、1日約200円以下で生活している人の割合が43.4%にもなるという。
TABLE FOR TWOが支援した寄付金によって、小学校には朝の給食から配食されている。朝の給食は「ポリッジ」と呼ばれるイモや穀物を原料にしたお粥。この小学校にいる半数のこどもが昨夜と今朝ご飯を食べずに来ているという。4年前に給食が始まると、それまで学校に来ていなかった子供も学校に来るようになった。4割だった出席率が8割に増加。そして中学校へ進学する子供の率も増加したという。給食が教育の普及にも繋がっている。
今回、小暮氏がこの学校を訪れた目的は…支援した寄付金が正しく使われているか確認するためである。この学校では、予想以上に寄付金が大事に使われていた。
「日本だったらたった20円だが、ここに持ってくれば価値が何十倍にもなる。そういう意味でも大袈裟に言ったら子どもたちの未来を作っている食事だと思う」
と、小暮氏は言う。
これまでTABLE FOR TWOはアフリカ6カ国(ケニア・エチオピア・ウガンダ・ルワンダ・マラウイ・タンザニア)とフィリピン、計世界7カ国に対して給食の支援を行ってきた。しかし、支援を求める声は後を絶たない。
今回、アフリカに来た目的は、次に支援する小学校を決めるための聞き取り調査である。ケニア国内で給食を提供できている学校は3割に満たない。だからこそ、ケニアで支援を増やし続けているのである。
小暮氏は子どもたちにいつも聞くことがある。それは…
「勉強を続け、学校を卒業したらみんなはどんな職業に就きたい?」
と。
なぜ日本国内ではなく、アフリカやアメリカなのか?
日本国内においても格差社会が叫ばれ、貧困家庭がある中で、どうして日本のNPO法人が日本国内ではなく、世界の貧困に目を向けるのか、と聞かれることがあると思うが?
確かに、一つの例として東日本大震災の時、TABLE FOR TWOに対して厳しい意見が寄せられることが3ヶ月間ぐらいあったが、そういった際にいつも答えてるのは、我々は全部はできないので一番得意なところをやっている、アフリカの支援は得意で実績もあるので、そこに集中している…もしあなたがそう思われるのであればぜひやってください、もっとみんなが支援をやれば国内も海外もできる、それが理想ですが、まだそうするのが難しい。
と答えているという。
TABLE FOR TWO総選挙?
TABLE FOR TWOでは「TABLE FOR TWO総選挙」というイベントを実施しており、TABLE FOR TWOの取り組みに参加頂いている企業が食堂の自慢メニューを紹介する。例えば、ポーラが提供する島根県の郷土料理になぞらえた美肌御膳うずめ飯やいすゞ自動車の発芽玄米の味噌焼きおにぎりセットといったものがそれである。
この選挙では、気に入ったメニューにシールを集めて投票する仕組みとなっている。
TABLE FOR TWO小暮氏の経歴は?
人と同じことをするのが嫌いだった小暮氏は、早稲田大学理工学部で人工心臓を研究していた。卒業後もオーストラリアの大学院に4年間留学し、研究を続けた。このユニークな経歴が認められ、外資系コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社した。
しかし、コンサルタントという仕事に心から満足することができずに6年で退社。その後、映画会社の「松竹」に転職した。特にその当時、仕事をするのが嫌で仕方なかったという。しかもなぜ嫌なのかもわからない状態だった。そこで、小暮氏は、模造紙いっぱいにこれまで自分が考えてきたこと感じたことを書いた。そこには
・ルールを破るのが好きだった
・幸せは他社のために役立ちたいと願う時におのずと得られる
・誰かの為にビジネスで何ができるか
といった、本当の心の声が書き綴られていた。
ちょうどその頃、2006年ヤング・グローバル・リーダーズ会議でTABLE FOR TWOのアイディアが発表された。考えたのは、元マッキンゼーの同僚など日本人たちであった。
事業化を託された小暮氏は会社を辞め、NPO法人を立ち上げた。しかし…寄付を頼むべくアポを取ろうとすると、NPOと名乗るだけで電話を来られたり、寄付金の一部を事務所代や給与に使うと言うと驚かれたり、社会的信用がないということの難しさを痛感したという。
しかし、2008年度、メタボ検診が義務化され、企業の健康への姿勢が前向きになった。これが追い風となり、協力企業や団体が一気に増え、今やその数は650団体にも増えた。更に、企業や団体だけでなく、大学の食堂からも寄付金が集まり始めている。いまや120の大学に導入されている。また学生が運営するフットサル大会などでも寄付金を集める動きがはじまっている。その寄付金の決め方がユニークで1ゴールで10食という形で寄付金を決めている。
西友ではじめる新たな寄付の形
惣菜コーナーに並べられたお弁当にTABLE FOR TWOのマークが貼られている。これを買うことによって、TABLE FOR TWOの寄付金となるのだ。ただし、この寄付金は開発途上国の給食ではなく、菜園作りに充てられるという。これは、カロリーオフセットプログラムと呼ばれ、現在5カ国で菜園づくりを支援している。
肥満大国アメリカでの挑戦
TABLE FOR TWOの支援は近年、アメリカでも行われいる。世界一の経済大国でどのような支援がされているのだろうか。アメリカは肥満大国と言われるほど、人々の肥満が問題になっている。成人の実に36.5%がBMI値30以上の肥満だという。こどもも例外ではない…その原因は貧困にあるという。
アメリカでは、野菜が高く、冷凍食品が比較的安い。そうなると、貧困層の限られた生活費では、どうしても冷凍食品が多くなってしまう。
アメリカでは、貧富の格差と同時にこどもの肥満という問題も膨らんでいる。
TABLE FOR TWOの次なる舞台はアメリカ、ニューヨークのハーレム地区にある貧しい小学校。給食は税金で賄われており、コストを抑えるために食事の栄養バランスは二の次になっている。しかし、この小学校はTABLE FOR TWOの支援によって添加物を使わない給食を提供する配食会社に切り替える事ができた。アメリカの企業に寄付を募り、ヘルシーな給食メニューに変更できているという。
では、アメリカではどのように寄付金を集めているのか…。
現地の代表スタッフはホールフーズマーケットという全米で400店舗を展開する健康志向のスーパーにて「ハッピー弁当」という名前で寄付金付きのお弁当を提供する事で寄付金を集めていた。このハッピー弁当はTABLE FOR TWOと寿司チェーン「ゲンジ」が共同で開発したものである。
ゴルフと寄付という組み合わせ
TABLE FOR TWOが新たに進出したのが「ゴルフ」である。「ゴルフ菜園プロジェクト」と呼ばれ、ゴルフスコアの管理アプリを利用し、1バーディにつき10円を寄付するという仕組みを取り入れている。これが途上国での菜園作りに活かされる。このプロジェクト、開始から1年で約800万円の寄付が集まっている。