こんにちは。ひとりで.comです。
2017年2月7日放送のガイアの夜明けは「消えゆく”伝統工芸”の逆襲!」と題して、京都の職人が新製品開発に挑む様子を特集します。
伝統工芸とフランスのデザイナーがコラボ
京都市が行う海外への商品開発の挑戦
京都のある場所に伝統工芸の10社が集まっていました。そこへ外国人の団体が入ってきた。ここで行われていたのは「京都の伝統工芸」と「フランスのプロダクトデザイナー」による商品開発プロジェクト。京都市が主催で行っているイベントである。フランスのデザイナーは100組以上の中から選ばれた人たち。
中でも意外にも人気があったのが、創業240年の老舗企業、仏壇仏具を取り扱う「京仏具 小堀」(https://www.kyo-butsugu.jp/)。フランスのデザイナーからはいきなりこんな質問が…
「値下げはできますか?」
話し合いを終えると、デザイナーはその場で商品案を書き始めた。染色の会社と一緒に防水パンツを以下のような形で作りたいと商品案をだしてきた。
客層 | 中〜高所得者 |
販売目標 | 300着 |
価格帯 | 100ユーロ(約1万2,000円) |
集まった提案書を元にどの商品を具体的に製作するかを決めていきます。
京都市上京区にある「日吉屋」。和傘の老舗。現社長は5代目の西堀耕太郎氏。ある製品で海外進出に成功した。それが、和傘を活用した照明器具である。上記のプロジェクトを仕掛けたのが西堀氏である。
今や世界15カ国のホテル・レストランなどに販売している。5代目の西堀氏が家業を継いだのは13年前。その当時の2003年の年商はわずか約160万円で廃業寸前だった。しかし、海外に打って出たことで、いまや海外を含め年商は2億円。
この西堀氏とコラボレートし、伝統工芸を新たな製品に変身させた企業がある。
それが、京人形の「み彌け」のバッグである。「み彌け」はもともと雛人形や五月人形、羽子板などといった日本の伝統的な人形を中心に販売を行っていた会社である。その技術を応用し、京人形をみ彌けのバッグ(Samurai Armor Bag)として生まれ変わらせた。これには京人形で用いられる甲冑づくりの技術が用いられている。
他にも、京友禅の型紙を作る繊細な技術を活かし、それを応用し作られたのが、タブレットケースやキャンドルカバーである。こちらは、西村友禅彫刻店の技術が使われている。型紙の模様はひとつひとつ職人の手で作られており、それが幻想的な模様を浮かび上がらせる。
キャンドルカバー 木灯( komorebi )は薄い木製でできており、繊細な模様が浮かび上がるものとなっている。
清水焼丈夫窯が挑む花瓶
京都市の東に位置する清水焼団地。ここには、清水焼の窯元や関連企業が70社ほど集まっている。清水焼は、京都の伝統工芸のひとつであるが、1980年頃に600件ほどあった清水焼関連の事業所は3分の1の200件ほどにまで減少してしまっている。
そのひとつ、丈夫窯。家族経営の小さな窯元である。当主の加藤氏と母と妻、長女で経営を行っている。作品の特徴は独特な赤と鮮やかなグラデーションにある。
この丈夫窯がフランスのデザイナーと手を組んで新たな製品を生み出すこととなった。このデザイナーはエルメスで経験を積んだ実力の持ち主。色使いと色の交じり合う感じに惹かれたという。彼らが提案するのは、ひとつで2つの顔を持つ花瓶。対照的な2色で塗り分ける事で、全く違う雰囲気を楽しめるというものです。
ヨーロッパの市場を詳しく調べた結果、3万円から5万円の市場を目指すことになった。身振り手振りでコミュニケーションを取りながら試作品を作り上げていく。
実は丈夫窯の当主の加藤氏、以前フランスで苦い経験をしたことがあった。自信作の赤い花瓶をパリで試験販売したことがあったが、1ヶ月で1つも売れなかったという。アドバイザーにその理由を伺ったところ、赤い色がフランスでは血の色を連想させたため、購買に至らなかったのではないか…と分析し、加藤氏も納得した。
丈夫窯の製作工程では、陶器の表面に色とガラス層をつけるため、釉薬というものを使用する。鉱物の粉を混ぜ合わせ熱すると化学反応を起こし様々な色を出すことができる。それを電気釜に入れて800度の高温で24時間焼く。色のパターンは160パターン。一度、色で苦い経験のある加藤氏は、リベンジの為にできるところまでやろうと意気込んでいる。
結果的にフランス人デザイナーから選ばれたのは12種類の色の組み合わせ。これを作品化していきます。しかし、そこで問題が発生します。色付けをするための釉薬は、色によってその特徴が変わります。これまである程度決められた色を使っていたため、どのくらいの色であればどれだけ塗れば良い…というのが経験値的にわかっていたが、新たな色となるとそれがわからなくなる。
加藤氏が懸念したとおり、焼いた花瓶にヒビが入ってしまった。また、色のグラデーションもバラツキが生じてしまった。また1からやり直しになってしまった。失敗を取り戻すため、連日夜遅くまで試作品作りが行われた。
仏壇の職人技術を活かす装飾用タイル
仏具の製造販売を行う、京仏具 小堀。1775年創業。寺が使う仏具の修復も行う。仏具業界は今後10年で約半分になると推計されており、職人が毎月のように廃業した、という話を聞くそうである。
仏壇は、土台部分の木地、漆塗り、彫刻、金箔など様々な工程を経て完成する。その複雑さもあって、ひとつの仏壇ができるまでに20人もの職人が作業をすることもある。
しかし、近年の生活様式の変化によって、伝統的な大きな仏壇を置く家庭が減っている。そのため、仏壇の販売台数も減少し、職人の仕事も減っているのである。
フランス人デザイナーは、仏壇の技術を室内装飾用のタイルに活用したいと提案をしてきた。なんとフランス人デザイナーは、漆塗りを途中で終わらせて、手作り感を演出したいと言ってきたのである。あまりにも漆塗りが綺麗すぎて、逆に工業製品やプラスチックみたいな印象になってしまうため、敢えて手作り感を演出するために、漆塗りを途中で終わらせたデザインにしたいという。
漆塗り職人からすれば、漆塗り=真っ平らにしれキレイに塗る、という事しかこれまでやってこなかったため、戸惑いを隠しきれない。
しかし、そのタイルの試作品はフランス人デザイナーから高評価を得た。新たな要望も加えながら、作品を仕上げていく。
フランスの世界最大級の展示会への出品
2017年1月20日、世界最大級のインテリアデザインの見本市、メゾン・エ・オブジェが行われた。約140の国と地域から3,000社が参加。ここで京都職人チームのブースが出展されている。風呂敷を使ったバッグや絞り染めのスカーフ、変わったところでは屏風のテーブル。いずれも伝統工芸が盛り込まれている。
そこに丈夫窯の加藤氏の姿もあった。試作を重ね、グラデーションの問題や、ひび割れの問題もうまく解決されていた。実は花瓶、様々な会社が出展しているため、ライバルも多く通り過ぎていく人が多い。加藤氏はなんとか見よう見まねで自分の言葉で説明し、取引のチャンスを得ることができた。
仏具の小堀が作った装飾用のタイルも展示されていた。
展示会から3日後、仏具の小堀が作った装飾用タイルをホテルのインテリアに使いたいとモロッコのカサブランカにある木製品の会社から問い合わせが入った。
また、丈夫窯の加藤氏にもとにはフランス人デザイナーから、花瓶が売れた、という嬉しい知らせが届いた。購入者は、友人へのプレゼントとして購入したという。
日本の伝統工芸の技術で作られた新しい製品が、海外で認められ始めた。昔ながらの伝統工芸品の売上は年々減っています。しかし、製品が売れなくなったからと言って、その技術までも失ってしまっては惜しい気がします。優れた技術があれば時代を越えて素晴らしい製品が作れる、京都の職人たちの取り組みがそれを証明してくれるのではないでしょうか?