2017年2月25日放送のNEC presents クロスロードは、乳酸菌発酵飼料の生みの親、株式会社バイオバランス社長の内藤善夫氏を特集します。
乳酸菌で動物・野菜をおいしく!バイオバランス
株式会社バイオバランス。この会社が扱うのは、乳酸菌。それも人用のではなく、家畜用の乳酸菌である。この乳酸菌で日本の農業を変えようとしている。
この乳酸菌を活用して、ランクが最低とされていた肉もおいしくしてしまった。また肉のみならず野菜までも美味しく変えてしまった。一体どういうことなのだろうか?
家畜の常識を覆す乳酸菌の堆肥
群馬県前橋市の須藤牧場。ここでは100頭の乳牛が家畜されている。しかし、ここの牧場は全然臭いがしないという。通常、乳牛の家畜では、あの独特の臭いがするが、この須藤牧場では、牛が本当にいるのか、と思ってしまうほど臭いがしないという。
また、牛が育てられている寝床にある土にも特徴がある。一般的な酪農では、寝床は乾燥させる事が大前提となっている。水分量が多いと雑菌が繁殖してしまい牛が病気にかかりやすくなってしまうためである。
しかし、この牧場における土は非常に水分量が多い。これは、ほとんどが牛の尿とフンで構成されているという。フンと尿に木くずをまぜて発酵させると、その時に熱が出て、その熱によって有害な菌が死滅し牛が病気にかかりにくくなる、という仕組みとなっている。
牛に与えているエサに、牛の腸内環境を良くする特別な種類の乳酸菌を混ぜている。この乳酸菌を摂取することによって、腸内のO-157菌や大腸菌といった悪玉菌が少なくなり、栄養素を吸収しやすくなる善玉菌が増加する。こうすることによって、リサイクルできる土を生み出すフンや尿のとなるのである。
実際、須藤牧場ではこの仕組によって牛が病気にかかりにくくなり、年間80万円の治療費が削減された。
また、牛の最新管理システムを導入しており、牛の重要な活動要素である”反芻”と”活動”と”睡眠”を判断し、その状況によって、従業員のスマホに知らせが届く仕組みになっている。
人件費の削減にも繋がるバイオバランス
内藤氏の乳酸菌を使う農家は全国に約200ヶ所存在する。熊本県阿蘇市にある山本牧場もそのひとつである。この山本牧場では250頭の乳牛を管理している。ここでもあの乳酸菌が使われている。この乳酸菌、正式にはバイオバランス(乳酸菌発酵飼料)と呼ぶが、これを使って寝床の乾燥に注意を払わずに済むことによって、飼育の作業量も軽減されている。
通常、この山本牧場の広さの場合、乳牛250頭の飼育には5人 – 6人の従業員が必要だが、山本牧場はたった3人で飼育を行っている。それだけ管理も楽になるというのである。
もちろん、このバイオバランスを使えば良いというわけではない。人間が、健康に良いものを食べていればそれで健康になるのか、と言ったらそうではないように、暴飲暴食を避け、適度に運動を行い、ストレスを軽減する、そういったところまで内藤氏はアドバイスすることもあるという。
世界初の発見と野菜の肥料にも活用
アンティ・ムッファ株と呼ばれる乳酸菌で、内藤氏が世界で初めて発見した乳酸菌である。牛だけでなく、豚や鶏にも効果があり日本をはじめ、中国・韓国・アメリカなどでも特許を取得している。
愛知県南知多。広大な畑では、大根やにんじんが育てられていた。この農家では、バイオバランス(乳酸菌発酵飼料)を使った牧場の堆肥を土に混ぜただけで、それだけで甘い野菜ができるようになったという。
実は、堆肥は一般的には産業廃棄物扱いとなるため、処理をするのにお金がかかるのだが、乳酸菌によって美味しい野菜ができると売れるようになったという。
バイオバランス / 内藤善夫氏の経歴は?
1986年、高校卒業後、新聞広告会社に就職した内藤氏。しかし、こどもの頃からの夢だった海外に行きたいと思い、わずか2年で会社を退職。渡航費が一番安かったからという理由で中国に留学した。そこでイタリアの友人からもらった1本のワインが人生の転機となったのです。
そのワインを飲んだ瞬間のおいしさが忘れられず、美味しいワインの理由が知りたいと突き動かされ、25歳でイタリアに渡る。
そこで、美味しいワインのためにはおいしいブドウが、さらにおいしいブドウの為には良い土壌が必要だとわかった。そして、自然で農薬もなく育つ森には微生物が関与している事を知り、いつしか興味は土から菌へと移っていくのです。
良質な堆肥を作るのは動物を健康にすれば良い、その為に必要だったのが乳酸菌だったのです。
1995年に乳酸菌の権威である大学教授に飛び込みで弟子入り。そこで5年勉強し、世界初の乳酸菌を発見し、34歳の2002年にで家畜用の乳酸菌製造会社を設立したのです。
雄のホルスタインをおいしい肉に…
今まで美味しくないと言われ、価値が一番低いとされていた牛肉を乳酸菌を使って、美味しい肉に変身させることに成功した。その正体は…乳牛としては利用できない雄のホルスタインである。雄のホルスタインの仔牛は約10年前は1頭2,000円 – 2,500円の価値しかなかった。それほどの価値しかないため、育てるコストも考えて殺処分されていた。それをなんとかしたいと思い、乳酸菌を使った飼育方法によって肉の質を高める事にチャレンジしたのである。
海外からも「美味しい牛肉を作る」として注目されている。
乳酸菌を使った飼料で育ったホルスタインの肉を使ったフレンチレストランを今後オープンするという。