[クロスロード] ( 東京大学 / 数理工学 ) 数学を社会の役に立てたい! / 合原一幸 – 2017年3月11日

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こんにちは。ひとりで.comです。

2017年3月11日放送のNEC presentsクロスロードは「数学を社会の役に立てたい!」東京大学生産技術研究所教授 合原一幸氏を特集します。

 

数学で明るい未来を切り開く合原一幸氏

 

暮らしを変える数理工学

 

合原一幸
合原一幸

 

東京大学生産技術研究所教授 合原一幸氏。彼は内閣府が最先端研究者30人にも選ばれた数理工学の第一人者である。彼の最新論文は非常に難解で、彼の論文を読めるのは世界でも100人以下だと言われている。

いったいどんな研究をしているのかというと…数学を使って暮らしを変える”数理工学”という分野の第一人者である。

数理工学とは、社会の課題を解決する数式を生み出すこと、である。

例えば、インフルエンザで亡くなる犠牲者を最小にするための最適化問題。新型インフルエンザと季節性インフルエンザのワクチンがどのくらい必要かというのをこれまでの過去の実績から数式を導き出すと、そのワクチンの最適配分が見えてくる。

 

また、電力の問題として、いま風力発電に期待が集まっているが、風力発電は天候の影響を受けやすい。天候によっては発電できなくなったりするため、どのくらいの風力発電が最適なのかという最適解の算出が必要なのである。風力発電に頼ることによって停電を引き起こすことがないように数式を用いて計算できるようにするのも数理工学のひとつである。

 

 

 

ビッグデータ解析で病気を未然に防ぐ

 

サイエンスをはじめとする学術雑誌に論文を載せることが研究者の勤めのひとつである。この日は、兵庫県のとある医療福祉団体から講演の依頼を受けた。

数学と医療…どういった関係があるのだろうか。この日の講演のメインは…病気になる前に病気になることが分かる、ということ。それが、2012年に発表した論文「動的ネットワークバイオマーカーによる病気悪化の予兆の検出」である。この論文の中で、数学的に病気の予兆を発見することができる数式を示している。

この考え方は、漢方の世界では2000年も前から存在する”未病”の考え方に通じるものなのである。

 

漢方の研究で最先端をいく富山大学 和漢医薬総合研究所では、合原理論の実証実験が行われている。病気になるように薬を注射したマウスの遺伝子を一日置きに調査。遺伝子情報を合原氏の式で解析すると、数字の揺らぎを見つけることができたというのである。

すなわち、病気になる前をゼロ、病気になった状態を10とすると、その間には遺伝子情報の数値に揺らぎが発生しているという。そして、その揺らぎが起きている間に、マウスに対して漢方を投与すると、その揺らぎが消えるというのである。

 

ビックデータはある意味ゴミの山で、その中に宝物がある。それを取り出すためには数学がないと取り出すことができない

と合原教授は言う。

 

まだマウスでの実験段階だが、近い将来、人間においても病気になる前に病気を治すことができるようになるかもしれない。

 

 

芸術の分野にまで数理工学を応用

 

2010年、東京コレクションのステージで合原氏が関係する衣装がお披露目になったという。世界的ファッションデザイナーのエリ松居氏との合作でウェディングドレスのデザインに携わった。

エリ松居氏は、東京コレクションのステージで披露するドレスに”煙のデザイン”を用いたかったのであるが、どうデザインしてもうまくいかなかった。そこで、合原氏に依頼し、どうすれば煙のデザインをうまく表現できるか…を考えた。

合原氏曰く、煙を表現するには、対数螺旋という考え方を用いる必要があるという。対数螺旋とは、オウムガイの貝の形に用いられており、渦巻きが一定の法則に従って並べられている形のことを指す。

この対数螺旋を用いたドレスは、今ではアーティストの倉木麻衣さんも愛用しているという。

 

 

 

 

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合原一幸氏の略歴

 

1954年、福岡県北九州市生まれ。幼い頃から成績優秀だった合原さん。1970年に九州の名門進学校ラ・サール高校で寮生活を送っていた。1973年、東京大学理科Ⅰ類に入学し1977年には東京大学大学院に電子工学専攻として入学し、人間の脳に興味を持った。神経の活動を数式にできれば、脳のメカニズムを解明できるはずと思い、研究を始めたという。

実は、ヤリイカの神経と人間の脳の神経の基本原理は同じで、イカの神経に刺激を与えて、数式を導き出そうとしたのです。そして、合原さんの特徴は、そこにカオス理論を用いたところである。カオス理論とは、数学用語で、一見不規則に見える数字の羅列が実はある数式に置き換えることができるのです。このカオス理論がイカの神経にも当てはまると考え、その数式を導き出した。

 

 

 

数理工学でがん治療にも貢献

 

合原氏は、東京新宿メディカルセンターとの共同研究をプロジェクトとして進めている。それが、がんの増殖率を導き出すというものである。特に前立腺がんに有効なのではないかと考えられているもので、そもそも前立腺がんの有効な治療法のひとつに間欠的ホルモン療法というのがある。これは、患者への投薬をある一定期間期間休む事でがんを治療するという療法なのであるが、実はその投与を休むタイミングが重要なのである。しかし現在、そのタイミングについては、医師がその経験からタイミングを算出しているが、そのタイミングを数式で算出できるのではないか、と考え編み出したのである。

この研究によって、合原さんは2017年6月に「日本応用数理学会 業績賞」を受賞予定だという。