こんにちは。ひとりで.comです
2017年4月24日放送の未来世紀ジパングは「異常気象vsニッポンの”意外な技術”」と題して、音羽電機工業の避雷針技術、中国塗料の塗装技術を特集します。
ルワンダの雷被害、ベネチアの水害を救う日本の技術
アフリカのルワンダを襲う落雷の猛威
アフリカ、ルワンダ。人口およそ1,200万人のこの国は、20年前の大虐殺から復興を遂げている”アフリカの奇跡”と呼ばれる国である。昨今の成長は目覚ましく、2007年から10年間、経済成長率の平均は7.7%となっている。
その一方で豊かな自然にも恵まれており、観光の目玉は…野生のマウンテンゴリラ。日本人にも大人気である。
だが、そんなルワンダがいま深刻な危機に瀕していた。
ルワンダ西部のキヌヌ村。この村で雷の被害にあった人はほぼ全員であるという。実はルワンダは世界でも有数の雷多発地帯である。千の丘の国と呼ばれるほど、ルワンダには大小様々な山が連なっている。山に当たった空気が上昇気流となり積乱雲が発達し雷が発生しやすくなる。
しかし、最近の落雷の多さは異常だという。ルワンダ政府もその被害の大きさに頭を悩ませている。NASA(アメリカ航空宇宙局)が作った世界雷密度マップによると、ルワンダは危険を表す赤色の表記を通り越して真っ黒となっている。NASAが”世界の雷の首都”と名付けたほどである。
ルワンダはもともと雷が多い国だったが、近年特に強い雷が増えている。これは世界的な気候の変動や異常気象によって引き起こされている。
ルワンダでは、この雷によって、家畜が死んでしまったり、家が崩壊してしまったり、場合によっては、人を死に追いやるケースもある。また、近年IT立国を目指すルワンダにとって、電化製品への被害も多く、ビジネスにも影響を及ぼしている。
異常気象がもたらす雷被害は今後さらに増えていくと言われており、アメリカの研究によると2100年までに雷が50%が増えると予測されている。
ルワンダの雷被害を救う避雷針の音羽電機工業
兵庫県尼崎市にある音羽電機工業。国内でも唯一の雷対策の専門メーカーである。音羽電機工業には、世界でも珍しい雷の実験施設がある。雷には、家庭で使う電気の100万倍の力があると言われている。
雷の被害には大きく2つがあり、ひとつが直撃雷、もうひとつが側撃雷である。雷が直接モノや人に当たることをさすが、雷の被害で多いのは、この直撃雷ではなく、側撃雷だという。側撃雷とは、木や屋根などを伝って、より電気を通しやすい人間に飛び移る現象のことを指す。
音羽電機工業は創業1946年創業で、雷の技術一筋の企業である。その代表的なものが、避雷器と呼ばれるものである。避雷器は落雷で発生する強い電気を建物の外へ逃がす装置の事である。建物とアースを通じて地面に放電させる仕組みとなっている。
音羽電機工業の電柱用の避雷器は全国で約2,000万個設置されている。また、電車のパンタグラフやスカイツリーなどの高層建築物、清水寺などの木造建築物にも使われている。避雷器の分野では、国内シェア60%を誇るトップメーカーである。
音羽電機工業に研修に来ていたのはルワンダ人のムガルラ・アミリさん。ルワンダの技術者で元々は2014年に神戸情報大学院にIT技術の留学生として日本に来ていた。その中でたまたま音羽電機工業に見学に訪れ、避雷器の技術に出会ったのである。
ムガルラ・アミリさんは、音羽電機工業での研修を終え、ルワンダに帰国。向かったのは、トゥンバ高等技術専門学校。ここは、JICA(国際協力機構)などの支援で建設された学校である。雷センサーの実力を試すために戻ってきたのである。
音羽電機工業の避雷器をこのトゥンバ高等技術専門学校にも納入し、実際に落雷を防ぐことができるようになった。以前は、海外製の避雷器を導入していたが、効果はなかったという。
水の都ベネチアが”水没の都”に?
イタリア北東部に位置するベネチア。ベネチアと言えば、言わずと知れた運河の町。ゴンドラが行き交う街全体が世界遺産に登録されている。年間およそ2,000万人が訪れる世界的観光地である。
そんなベネチアの中心地が、サンマルコ広場。そんな水の都に異変が起きていた。サンマルコ広場の石畳の隙間から水が吹き出し、ヒドイ時はサンマルコ広場全体が水没してしまうという。
その原因は地球温暖化による高潮である。温暖化により海面の上昇、さらに巨大な低気圧の発生により、海面を吸い上げ、風で押しやられ街に襲いかかるため、高潮が発生する。
もともとベネチアは湾の中に作られた人工の島。1,500年前、敵の侵攻から逃れた人たちが街を形成した。そのため、海抜が低く、高潮の被害を受けやすい。これまでは、数年に1度の頻度で発生し”アクアアルタ”(高い水)と呼ばれ、ある種の風物詩と認識されていたが、ここ最近の異常気象で1年でおよそ65回も高潮が発生するようになってしまった。
海水による塩害で歴史的な建造物も被害を被っている。こうした水害に耐えかねて、街を出て行く人も少なくない。1955年に16万人いた人工も2015年には5.5万人となってしまった。この被害に現在どんな対策が取られているのか。
ベネチアの高潮予報センターでは、高潮が予測されると、街に警報をならすなどして注意を呼びかけているのであるが、抜本的な解決にはなっていない。
そんな中、先行きを更に暗くするデータがある。ベネチア周辺の水位は1870年から2015年までで約30センチ上昇しているという。このまいけば2050年には1年に435回、高潮が発生してしまう。
その危機を救う、日本の意外な技術があった。
モーゼプロジェクトの鍵をにぎる中国塗料
いま、ベネチアを高潮から守る「モーゼプロジェクト」というプロジェクトが進んでいる。イタリアは約7,000億の国家予算を投じて、世界中の最先端の技術を結集しているという。その中にいた日本人、横垣賢司さん。横垣さんは、高潮が入ってくる運河の入り口に埋められている可動式の水門のある技術に関わっているという。
このゲートは、ワンブロックで約20メートル四方で重さは168トンにも及ぶ。しかし、このゲートにはひとつ大きな問題があった。その問題を救うのが日本の技術だった。
横垣さんが勤めるのは中国塗料。創業100年、社員2,390人の老舗企業である。ベネチアのゲートには中国塗料で開発された特別な塗料が使われているのである。その特別な塗料が「バイオクリン」である。
その機能はというと、水の中でも海洋生物の付着を防ぐことができるのである。あの水門は、空気の浮力で浮かび上がる仕組みとなっているが、海洋生物などが付着すると、80トン以上も重量が増してしまい浮上しなくなっていまう。そこで中国塗料のバイオクリンが採用されたのである。
もともとは船舶の塗料として開発されたものであるが、それを応用してゲート用の塗料として作られている。さらにバイオクリンは環境にも優しい。通常、こういった塗料は有害なものが多いが、バイオクリンは天然由来のシリコン樹脂を使っているため、害が少ないのである。
モーゼプロジェクトは2018年から稼働予定なのであるが、ひとつだけ問題がある…それは、水門は5年に1度、陸に揚げてバイオクリンを塗り直す必要があるのだが、海底に固定されている結合部分に関しては、陸に揚げる事ができない。
そこで、中国塗料は水中で塗料を塗る技術を開発。接着などで使う樹脂を混ぜ、半固体にすることによって、水中でも塗料を塗ることができるようにしたのだ。これは、世界初の技術だという。
今回のあらすじ
異常気象が原因で、水の都ベネチアが水没の危機に瀕しているという。イタリアは水没を止める国家プロジェクトを計画、巨大な可動式堤防で高潮が街に侵入するのを防ぐという。
その計画を日本の意外な技術が支えていた。それは塗料メーカーが開発した特殊な塗料…そのオンリーワン技術に迫る。一方、落雷による被害が世界一といわれる国がアフリカ・ルワンダだ。日本で唯一の雷対策専門のメーカーが最新技術で、人々の命を救おうとしていた。
“水の都”ベネチアが今、危機に瀕している。最近の異常気象で高潮が発生、街が年間50回以上も浸水しているという。ある予測によると、2050年には年間435回浸水するとも…イタリア政府は、世界遺産の街を守るため、巨大プロジェクトを進めていた。
その名は「モーゼ・プロジェクト」。高潮を堰き止めるため、巨大な防潮堤を建設する。しかも、普段は海の中に沈み、高潮の時だけ浮かび上がるという可動式堤防。総額7000億円を投じた国家プロジェクトだ。そのカギを握るのが、広島の塗料メーカー・中国塗料の技術だという。一体どういうことなのか?
雷による被害が世界一深刻と言われるのが、アフリカ・ルワンダだ。多くの人が落雷で命を落とし、民家や家畜にも直撃、さらに異常気象のせいで被害は年々ひどくなっているという。
そんなルワンダを救おうと日本の企業が立ち上がった。兵庫県尼崎市にある音羽電機工業は、「カミナリ一筋」70年の雷対策専門メーカー。ルワンダに進出するきっかけは、偶然受け入れることになったルワンダ人研修生の言葉だった。
「この会社の技術なら雷被害に苦しむルワンダの人々を助けられるかもしれない」