こんにちは。ひとりで.comです。
2017年4月25日放送のガイアの夜明けは「”ふるさと復活”に賭ける!~熊本に生きる人々~」と題して、熊本地震から1年経過し、復興を進める阿蘇の人々を特集します。
震災前に戻すのではなく、その先を目指す!熊本の復興
昨年4月に発生した熊本地震から1年。私たちは再び、熊本へ飛んだ。甚大な被害にあった阿蘇の人々は、今どうしているのか?そこでは、観光地として有名な阿蘇に、再び客を呼び込むための試行錯誤が続いていた。また、地震によって影響を受けた人々の中には、ひとりで子育てをしながら働くシングルマザーたちの姿も。彼女たちは、自立を目指し動き出していた。地震からの復興、さらにその先を見据えて奮闘する熊本の人々の姿を見つめる。
【目次】
阿蘇内牧温泉 蘇山郷の立て直し
熊本県阿蘇、火山の噴火でできたカルデラという特殊な地形に5万人が住んでいる。九州屈指の観光地であるが、2016年の阿蘇市への宿泊客は、昨年の地震の影響によって前年2015年の約78万人から半減し、約41万人となっていた。
街の有名な温泉街である阿蘇内牧温泉も冷え込んでいた。温泉街の中でいち早く立て直しを図っている旅館が”蘇山郷”。かつて、歌人の与謝野鉄幹、与謝野晶子夫妻も泊まったという杉の間は被害をまぬがれていた。
蘇山郷では、地元で取れた旬の食材を使った懐石料理が自慢。
地震で止まってしまった温泉を掘り直し、2016年7月に営業再開を果たした。宿泊客も以前の8割まで回復しているといいます。地震を機に一部の部屋を外国人向けに改装し客単価をあげた。最上階には洒落たバーを用意。
阿蘇プラザホテルの決断
一方、まだ復活半ばの温泉宿もある。そのひとつが阿蘇プラザホテル。地震で地盤がずれてしまったため、大浴場の温泉を汲み上げることができなくなり、昨年の4月から使えずにいるという。
いま、地下650メートルまで温泉を掘り直している。2017年5月上旬にはお湯が出る見込みである。こうした温泉の採掘や館内の修繕費用におよそ2億円かかった。4分の3は国の補助金で賄ったが、残りは借金。
本来であれば350人が宿泊できるのであるが、取材のこの日は1割の30人ほど。これまでは、修学旅行などの団体客が中心だったこのホテルは苦戦を強いられていた。
2017年4月9日、阿蘇プラザホテルの社長は、大きな決断を社員に伝えようとしていた。これまで和室として使っていた部屋を大改造し、住みたくなるような洋室に変えようというのだ。ピンチをチャンスに変えるべく、チャレンジしようというのである。
東京銀座の熊本県アンテナショップ
東京銀座にある熊本のアンテナショップ。震災直後は、物流網が麻痺し、一時は1,000アイテムあった商品が100点ほどまで減ってしまった。現在は物流網も回復し、震災前と同じくらいのラインナップになっている。
しかし、いくつもの商品がまだ震災前の生産量を取り戻せていない。
熊本を代表する銘菓の「陣太鼓」
中に求肥が入っているのが特徴であるが、震災で工場が半壊。いまは工場の一部を復旧して生産を再開しているが、3割から4割のラインナップのみ再開できているという。
また、赤酒という熊本の正月のおとそとして使われており、赤酒を飲むのが熊本の正月の定番である。正月で飲みきれなかったものを料理用にみりんの代わりとして使うのが一般的だという。
こちらの蔵も震災で半壊。現在は蔵ではなく倉庫の一部を製造所に造り替えて製造を再開している。
熊本を代表する郷土料理の馬刺しを製造している「千興ファーム」は敷地内に仮設工場をたて、生産を再開している。
三ツ星ブランド阿部牧場
2016年4月、熊本の阿部牧場。阿部牧場の牛乳は食品のミシュランガイドと呼ばれる国際コンクールで優秀味覚賞を牛乳としては日本初受賞した。しかし、観光客が激減した影響により、売れ残った牛乳を浄化槽に廃棄する事がしばしば行われていた。
2017年4月、大きな被害を免れた工場では以前と同じように三ツ星ブランドの牛乳を生産していた。県外にも販売ルートを広げることで売上を回復させたという。銀行から5,000万の融資を受け新たな設備投資まで行っていた。作業効率をあげるため、牛乳を搾る機械を最新の設備にし、さらなる販路拡大を目指していた。
一見、順調に見える阿部牧場ですが…牧場内にはいまも大きな地割れが起きたままの状態になっている。質の良い牧草を大量に確保するためには、この地割れ地帯の復活が必須なのです。
道が分断されたパン工房の新商品開発
パン工房 豆の木は、阿蘇で人気のパン屋さん。店一番のおすすめは阿蘇の小麦で作るフランスパン。毎日およそ30種類ものパンを作っている。配達先は道の駅。観光客は地震によって3割以上減っている。パン工房 豆の木は売上の大半を道の駅に頼っている。この冬は売上が半分にまで落ちこんだ。
観光客減少の主な要因は交通網の分断。熊本市内を結ぶ国道は土砂崩れにより通行止めに。迂回路を通れば、時間にして30分も違わないが、客足は遠のいたままである。
一方鉄道を見てみると、熊本市内から阿蘇を抜けて大分に出るJR豊肥本線は一部の区間で通行止めに。大分から阿蘇に来ることはできるが、熊本駅から阿蘇駅に行くことはできない。
この鉄道の寸断が、パン工房 豆の木の客足に大きな影響を与えていた。
こうした状況において、パン工房 豆の木の売上を取り戻すために新たなアイディアが必要だった。熊本県外へも売ることができる新たなパンの開発のために熊本県産業技術センターで試作品作りを始めることにした。
ベースとなる材料は、阿蘇の小麦を発酵させたパン生地。普段使っているものと変わらないようだが、作っていたのは”パン生地で作ったせんべい”。水分を飛ばしているため、日持ちがして販路を拡大出来るというのです。材料の配合や味付けを変えながら8種類の試作品を作り、試食を行います。
目指しているのは、赤ちゃんからお年寄りまで食べられる優しい食感。ところが…材料の配合が悪く、硬すぎてしまう。試食しておいしかったのは、豆乳とおからを入れたものとフランスパンの味と香りが楽しめるものだった。1日も早い商品化を目指すことになりました。
女性たちが立ち上がる:スーパーウーマンプロジェクト
熊本県熊本市。市内にあるとある貸事務所でSUPER WOMAN PROJECT(スーパーウーマンプロジェクト)という団体をスタートした人たちがいた。
活動の中心となっているのが、阿蘇の土(リモナイト)を配合した陶器のアクセサリーなど、熊本の素材を使った商品作り。リモナイトは阿蘇山のカルデラ付近にあり、においを吸着する性質をもっていることから、消臭効果があると言われている。その特徴を活かして、開発したのが、犬用の首飾り「AsoCakela ペット用アロマチャーム」
その他にも、女性視点で様々な商品を開発。
竹を元にKAGUYAというインテリア商品を開発。。熊本の祭りで使われた灯籠を炭焼きにして商品化した。竹炭がにおいを吸収しバチルス菌がにおいを分解する。商品試験では、アンモニアなどの匂いを2時間でほぼ分解することが証明されている。
こうしたオリジナル商品が売れることで、関わった女性たちに収入が入る仕組みとなっている。このSUPER WOMAN PROJECT(スーパーウーマンプロジェクト)に参加している女性達は現在40人以上。それぞれの生活がかかっている。
震災から1年、SUPER WOMAN PROJECT(スーパーウーマンプロジェクト)では、新たな問題が浮上していた。事務所には、在庫が入ったダンボールの山ができていた。震災直後は復興支援の後押しもあり、商品も売れていたが、日が経つにつれて、商品が売れなくなってきていた。
東京にあるカレイドジャパンという企業。海外の化粧品が日本に進出する際、アドバイスを求められるような企業である。SUPER WOMAN PROJECT(スーパーウーマンプロジェクト)の宮田さんは、ここに自分たちの商品がなぜ売れないのかアドバイスをもらいに来た。
どんなに素晴らしいブランドストーリーがうしろに抱えていようと商品を先に作ってしまうと売り先がなくなってしまう。せっけんを開発するとなったら、ターゲット層に合わせたせっけんを作らないといけない。それをどこまで見据えているかというのがビジネスモデルでは大事になってくる。
すなわち、自分たちの思いだけで商品を作ってもリスクを抱えるだけで、売上には繋がりにくい…。
東京滞在5日目。この日の訪問先は、女性向けのシェアハウスを都内で7,000室以上管理運営するスマートライフ。消臭効果の高いKAGUYAの売り込みに来た。スマートライフで管理している部屋はオーナーから借りているものだが、それをいかに長持ちさせるかは管理会社としての使命。まずはシェアハウス10軒においてもらうことが決まった。
熊本地震から1年経過したが、復興はまだ道半ば。以前の状態に戻っているとは言えない。しかしそんな中、前を向き動き出した熊本の人々。彼らからは、地震の前の状態に戻すのではなく、その先を目指すという力強い思いを感じることができた。その挑戦を今後も見続けていきたい。