[ガイアの夜明け] ( 長野県伊那市 / 宮崎県都城市 / 北海道上士幌町 ) どこへ行く?ふるさと納税 – 2017年7月10日

ガイアの夜明け
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こんにちは。ひとりで.comです。

2017年7月10日放送のガイアの夜明けは「どこへ行く?ふるさと納税」と題して10年目を迎えたふるさと納税のいまと今後を特集する。

 

10年目を迎えたふるさと納税はいったいどこへ行く?

 

今年で10年目を迎える『ふるさと納税』。

2016年度の全体の寄付額は前年度比1.7倍の2844億円となり、これまで財政難に喘いでいた地方都市の新たな財源として存在価値は高まるばかりだ。その一方で、返礼品競争の過熱や新たな地域間格差が生まれるなど、当初想定していなかった面も出てきた。

この4月には、一部の返礼品が制度の趣旨に反するとして、総務省が見直しの通知を出すなど、地方分権のあり方が問われる事態にまで発展している。

10年という歩みの中でふるさと納税が生み出してきた功罪を検証し、今後、制度が継続していくためには何が必要なのか、様々な視点から探っていく。

 

 

資産性の高いものはダメ?ふるさと納税のいま

 

石川県七尾市
石川県七尾市

 

石川県七尾市の沖合いでは、定置網が行われていた。アジやトビウオ、ブリや鯛などが豊富に取れるこの漁場では、わずか2時間後にセリにかけられる。石川県で中島ストアーを営む中島さんは取れた魚を自社に持ち帰りすぐに調理にかける。しかしこの魚はスーパーに並ぶわけではない。ふるさと納税の返礼品なのだという。

 

七尾市では、1万円ふるさと納税を寄付すると、「能登の朝どれ お寿司の詰め合わせ」が返礼品として送られるのである。通常、獲れた魚をそのまま送る自治体が多い中で、七尾市では食べやすいようにと切り身にした状態で送ってくれる。

その一手間もあってか、七尾市では約1年でおよそ2億円のふるさと納税を集めることができた。

ふるさと納税とは、好きな自治体に寄付できる制度で例えばとある自治体に10万円寄付すると手数料2,000円を除いた9万8,000円が翌年の税金から控除される。ふるさと納税では、返礼品と呼ばれるお礼を用意している自治体が多いため、実質負担2,000円で返礼品がもらえるとあって、人気を集めている。

そのため、返礼品目当ての人が増えてきている。

自治体の中には、最新のパソコンやオーダーメードの家具、更には人気な教会で結婚式を挙げられるものや、マグロの解体ショーといったものまであり、競争が加熱している。

 

そうした中、今年3月31日、管轄する総務省が一部の返礼品に待ったをかけたのです。高額なもの金券や家電など資産性が高いものなどは送らないように、そして、寄付に対する返礼品の割合を3割程度とするように指針を出したのである。

 

それに反対したのが、三重県志摩市である。この街の返礼品が真珠のアクセサリー。2万円から100万円の寄付に対しておよそ40種類が返礼品となっているが、これに対して”資産性が高い”として取りやめの声がかかったのである。

しかし、真珠の養殖は100年続く地場産業であり、事業者からは不満の声が噴出している。

 

 




 

 

 

 

家電製品は返礼品として認めない?伊那市の電化製品

 

長野県伊那市
長野県伊那市

 

長野県伊那市、この街も先の総務省の通知に揺れていた。

10万円の寄付にはテレビやオーディオ、30万円の寄付にはスチームオーブンレンジや人気海外メーカーの掃除機などがある。伊那市では、2年前に家電をふるさと納税の返戻品に加えたところ、寄付額が72億円と全国2位までなった。

 

街をまわると、電気製品関連の工場が点在する。大手から中小までおよそ20の工場が伊那市にはある。中には生産量日本一の部品もある。赤羽電具製作所は従業員50人ほどだが、ここでは電気基盤に使われる抵抗器を製造している。近年は安い海外製品に押されていた。

 

伊那市では、こうした地元で製造されている抵抗器などを採用している電化製品をふるさと納税の返礼品に採用したのである。さらに廃業が相次ぐ街の電気店を救う狙いもある。

街の電気店組合を通じて商品を買うことで下支えしようとしていたのです。ある電気店では、返礼品特需で初めて黒字に転じたという。

 

伊那市では、何を資産性と見るかについて議論を重ねた結果、10万を超えるか超えないかのラインで検討を進めていたが、この10万円というラインは今回の主旨にはそぐわないと再度総務省から見直しを名指しで求められてしまったのである。

 

総務省の見解としては、

部品ひとつをその地域で製造しているから地場産業の発展に寄与…としてしまうのは非常に難しい

という。

 

結果、伊那市では検討を重ねた結果、資産性の有無を問わず、家電製品の取扱いを辞める…とした。

 

 

 

 

返礼率8割の都城市が返礼品を一新

 

 

宮崎県都城市
宮崎県都城市

 

宮崎県都城市では、総務省の通知のあと、駆け込みでの寄付の問い合わせが殺到していた。

人口およそ16万人ながら、ふるさと納税の納税額を2年連続で1位を獲得している。2015年度は42億円、2016年は73億円である。

 

その原動力となっているのは、豪華な返礼品。2015年に寄付金として集めたふるさと納税の42億円のうち、実に33億円が返礼品に使われていた。予算上は8割ほどである。そのお得感は全国でも突出している。

方針を打ち出したのは池田市長。肉と焼酎のまちであることを知ってもらいたい…ということを主旨としているため、8割の返礼率は高くない市長は言う。

しかし、総務省の通知が出た直後、都城市は返礼率を3割に下げると発表した。

その動きに、動揺しているのは市の事業者たちである。そのひとつであるミートクリエイトは、返礼品として地元のブランド豚を市に買い上げてもらっていた。

実はこの会社、返礼品の売上を当てにして1年前にできたばかりの会社だという。2017年3月に地元向けにスーパーもオープン。返礼品のみを頼りにしては先行きが不安と考え、スーパーを立ち上げたのだが、スーパーの売上は思わしくないという。

実際、売上の3分の2はふるさと納税の売上で成り立っているという。

 

 

今年で創業70年をむかえる東郷織物東郷織物は大島紬や薩摩絣といった織物の中でも最高級品が主力製品である。一反織るのにおよそ2ヶ月、熟練の職人が1本1本糸を紡いでいく。

若者の和服離れも相まって、最盛期に3億円あった売上も今では5分の1にまで落ち込んでいる。

 

この東郷織物も返礼品の参加を検討していた。

 

試作を重ねた結果、ネクタイとタブレットケースを作ることとした。

 

6月1日の都城市のふるさと納税の返礼品のリニューアルとともに、東郷織物の品も数品発注が入っていた。

 

 

 

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ふるさと納税を何に使うかを打ち出し、人口が増加した北海道上士幌町

 

北海道十勝地方にある上士幌町。人口およそ4,900人のこの街のふるさと納税はいつもトップクラスである。地元特産の和牛を武器に2016年は21億円の寄付金を集めました。この街は、ふるさと納税の使いみちを明確にすることで大きな成果をあげている。

0歳からの保育料を無料にするなど、ふるさと納税の使いみちを子育て支援に使っている。

その結果、街に大きな変化が表れていた。

子育て支援を全面に打ち出すことで減り続けていた人口がプラスに転じたというのである。十勝管内からの移住者が増えているというのである。

 

居住者が増え、嬉しい半面、周囲の街からの移住者が多いこともあって、周囲の街は頭を抱えていた。

上士幌町の南に位置する本別町もそのひとつである。本別町の人口は1987年の1万2,500人から2017年には7,300人と約半減。跡継ぎがいないと廃業する店も後を絶たない。

本別町は昨年から本格的にふるさと納税の返礼品を扱い始めた。地元特産の黒豆を生かし、豆の街をアピール。少しずつ寄付金は集まってきているものの3,700万円とまだまだふるわない。

返礼品のラインナップをどうするのか、試行錯誤を続けている。

 

 

 

ふるさと納税が誕生してから10年。ここ数年、制度の良い面だけではなく問題点も指摘されるようになってきた。そもそもふるさと納税とは、地方とそれを応援したい人を結びつけるためにはじまった。現在の混乱を乗り切り、制度を定着させることができるか、それがいま問われていると言えそうです。