こんにちは。ひとりで.comです。
2017年7月3日放送のガイアの夜明けは「本場に挑む!”木工の匠”たち」と題して黒檀という木を活かした高級箸を作るマルナオのデザートスプーンによる海外への挑戦と、高級家具ミネルバの西陣織とのコラボ椅子の海外への挑戦を特集します。
木工の匠が挑む海外!マルナオとミネルバ
【目次】
マルナオの「極上 十六角箸」
新潟県三条市にあるマルナオ。観光客が遠回りしてでもやってくる店舗で、外国人の団体客も来る。客の目当てはお箸。安いものでも一膳3,000円もする高級お箸である。
数ある中でも一番人気が「極上 十六角箸」である。
材料は最高級の黒檀。黒檀は硬くて耐久性に優れている。マルナオの社長でもあり、職人でもある福田隆宏さん。黒檀を削るには10年以上の経験が必要だという。削るのには指先の感覚だけが頼りだといいます。お箸の先端は1.5ミリで硬い黒檀だからこそ実現できる細さである。
これだけ繊細なお箸のため、さまざまなものを掴むのが容易となり、食事が楽しくなる箸である。
水分を吸収しにくい黒檀箸はプレゼント用として人気急上昇中である。
世界にチャレンジするためにフランスの見本市に出展
マルナオは創業1939年で従業員は18名の小さな町工場で年間およそ2万膳を製造している。もともとは精巧な大工道具を作っていた。箸を作り始めたのは現在3代目の福田隆宏さんになってから。
最高級の「極上 十六角箸」は一膳15,000円ほどで決して安くはないが、贈答用として人気となっている。
箸を扱い始めてからそれまで約4,000万だった年間売上が約1億4,000万と約3倍にまであがった。そこで福田社長は大きな夢に挑戦しようとしていた。
食の胴部を作るにあたって本場フランスで勝負したい
福田さんは2017年1月、フランスで半年に1度開かれるメゾン・エ・オブジェという世界最大級のインテリア・デザインの見本市に参加することとなった。
今回は140の国と地域から約3,000社が参加していた。世界中のバイヤーが集まる商談の場である。一番目立つ場所に展示したのは、あの箸である。そしてヨーロッパ市場を意識して新作を用意していた。
新作として用意したのは、持ちての部分に黒檀を使ったナイフとフォークである。日本食ブームの追い風もあってか、次々とバイヤーは箸を手に取ります。
バイヤーからは、その技術の高さを評価してくれるが、商談には結びつかない。新作のナイフとフォークに関しては反応がいまひとつであった。
というのも、ナイフとフォークは出品数が多い商品で見本市にはライバルがひしめき合っていたのである。
世界に挑む新商品はデザートスプーン
新潟に戻った福田さんは、新たな商品の開発に取り組んでいた。
それがデザートスプーンである。
デザートスプーンは金やステンレスなどの金属でできていることが一般的である。今回は、それを得意の木で作ろうと言うのである。
まずは、新作に使う最高品質の材料を求めるためにインドネシアのスラウェシ島へ。スラウェシ島は世界でも有数の黒檀の産地である。
実は世界有数の黒檀の産地であるスラウェシ島でも年々黒檀の数が減っており、貴重な存在となっているという。
インドネシアから丁度良い黒檀を見つけた福田さんは早速試作品を作り始める。迷いが生じた際は自社のデザイナーに相談し、型を明確にしていく。
試作品をもって、福田さんはメゾン・ド・ラ・ブルゴーニュという神楽坂の名店に向かった。そこのシェフやフランス人スタッフにデザートスプーンの試作品を使ってもらおうと持ってきたのである。
改良を加えたデザートスプーンは薄さ0.5mmまで薄く仕上げた。
スプーンを口に入れる感じがしない。デザートの食感をより感じることができる
と評価も上々。
手応えを感じた福田さん、次の見本市に向けてさらなる改良を続けていく予定である。
伝統ある家具職人の企業:ミネルバ
東京都品川区にある西洋家具メーカーのミネルバ。創業は1966年、設計から組立まで15人の職人が働いている。創業者で会長の宮本茂紀さんは現在79歳。1953年、中学卒業後に東京港区の木工所で家具職人となった。
当時、新橋から芝にかけたエリアには木工所が軒を連ね、そこで働くことは一流の家具職人である証であった。ミネルバでは全ての家具を職人が手作りしている。
折り鶴をモチーフにしたTSURUという椅子は一脚32万円。オーダーを受けてから4週間掛けて作るTOKIOというソファは100万〜という価格設定である。
父の背中を見て、職人となった長男の宮本しげるさんが現在は、妻とともに経営を切り盛りしている。
海外で大量に作られる安い家具に押され、2007年度に約10億あった売上は2016年度は3億5,000万にまで落ち込んでいた。
西陣織で有名な細尾とのコラボレーション
2017年1月、長男の宮本しげるさんは京都の西陣織で有名な細尾に訪れていた。
※細尾については以下の記事でも特集されています。
細尾の12代目の細尾真孝さんは着物の需要が激減する中、西陣織の新しい価値を作り出そうと海外でのデザイナーとのコラボレーションを展開している。その細尾さんから願ってもない依頼の話があった。
ミネルバの技術と細尾 の西陣織を併せた新しい家具を展開していきたいとパートナーとして指名してくれたのである。
さっそく依頼された椅子の製作に向けて動き出した宮本さん。海外のデザイナーがデザインを自社のデザイナーと相談し、どのように実現できるかを詰めていく。
デザイナーが指定した椅子のフレームの直径は25mm。しかし、椅子は座る際に大きな負荷がかかるため、直径25mmではこわれてしまう可能性が高いと考えられる。
デザインを活かしながら、座り心地がよく壊れない椅子を作るか…いちからデザインを見直します。安定感も考え、椅子のフレームの直径は30mm、椅子のフレームの角度も微調整することとした。
椅子の製作には釘などは一切使わずに継ぎ手を使って組み立てていく。その為、少しでも緩みがあると壊れる原因となってしまう。良い塩梅にするために職人の腕が試されるのです。
製作開始からおよそ3週間、西陣織を使った椅子が完成した。完成した椅子をもって細尾へ訪れ、試作品をお披露目。しかし、そこでも問題が発生してしまった。座り心地を確認した際に、前脚のカーブフレームに亀裂が入ってしまったのである。
再度作り直す必要が出てきてしまった。自社工場へ持ち帰り、職人たちと相談し、継ぎ目を太くし、強度を上げるように設計し直すこととした。
継ぎ目の強度を増すと同時にフレームを30mmから28mmに細くし、クッションのサイズなども修正し、最初の試作品よりもスタイリッシュに仕上げることができた。
アメリカ・ニューヨークの展示会でまさかの展開が…
完成した試作品をもって乗り込んだのが、デザイン家具の本場であるアメリカ・ニューヨーク。この日市内の展示場では、ICFFという北米最大級のインテリア・家具の見本市が開かれていた。世界各国のデザイナーやバイヤーが集まるこの会場近くでテストマーケティングを仕掛けようとしていた。
そこにはアメリカで家具会社を営む男性やブルックリンのアートディレクターが訪れ、製作した椅子を高評価してくれた。その2日後、アートディレクターから連絡があり、思わぬ申し出が。
実用的なアートをテーマにした展示会を考えている。皆さんの椅子と実績を知りぜひ一緒に仕事がしたいと思った。企画に興味はないか?
アートディレクターが考えいたのが椅子をテーマにした「ISU ism」というプロジェクト。世界中のアーティストからデザインを募り、それを職人が実際に使える椅子として完成させるというものだった。
デザイナーの自由な発想を大事にしたいと考えており、その為には高い技術が必要なのだという。製作した椅子は販売することも視野に入れているというのです。
細やかな日本の木工技術。それを活かす場は日本人の生活スタイルの変化によりどんどん減っている。しかし木材は世界中で使われる材料。新たな活躍の場を求め続ければ、そこに生き残る道は表れてくる。
その姿勢こそが時代を越えて匠の技を受け継いでいく原動力になるのではないでしょうか?