こんにちは。ひとりで.comです。
2017年7月18日放送のガイアの夜明けは「”食の革命者”たち~「先人の知恵」で絶品を作る!~」と題して地域で昔から厄介者とされてきた素材を使って、革命を起こす人々に迫る。
雪室で素材の味を活かす!火山灰の灰干しで魚の旨味を引き立てる
雪を使って温度を一定に保ち、糖度をあげる新潟の雪室
2016年11月、東京新宿の百貨店の食品売り場で飛ぶように売れていたのが高知県四万十町の雪室栗。雪室という古来からの保存方法で甘さが引き立てられているという栗。
栗の生産地からおよそ700キロの場所にある新潟県小千谷市。ここに栗を甘くする秘密がある。そこにあったのはもみ殻の山。そのもみ殻を掘ってみるとそこには雪が隠されていた。まだ時期は10月のため、初雪にもなっていない時期である。
その近くにある倉庫のようなところから地下道に入ると、そこに雪室があった。建物自体が雪ですっぽり覆われており、大きなかまくらのようになっている。雪室を覆うのは3,000トンもの雪。その雪をもみ殻で断熱し、1年中解けないようにしているのである。
この雪室で保存するだけで、栗が甘くなると言うのです。
糖度を測ってみると、その栗の糖度は25.1度であった。メロンですら20度ぐらいなので、相当甘い栗となっている。雪室に入れる前の栗は糖度が15度ぐらいでそれを雪室に1年間貯蔵すると糖度が10度ほどあがるのである。
糖度があがるのは、その雪室の環境にあった。雪室内は室温が1度、湿度が99%で1年中変わらないという。
一般的な冷蔵庫は実は温度が上下2度前後変化するが、それに比べて雪室はほとんど変化しない。食物は、温度が凍るか凍らないかのきわどい温度になると、身を守るため、糖分を蓄える。これが強い甘みとなるのである。さらに雪室で熟成した肉はまろやかな味わいになるという。
新潟市内のコーヒーショップでは、雪室で貯蔵したコーヒーも楽しめる。苦味成分がとれすっきりとした味わいになるという。
新潟県の除雪費用は年間99億円にものぼり、悩みのタネだった雪を武器に変えたのが先人の知恵である。
2016年11月に実施された東京ビッグサイトでの食の展示会。全国各地より定番商品が並んでいた。そんな中、変わった名前のブースがあった。それが越後 雪室屋である。
雪室を冠にした商品を取り揃えていた。このブースは新潟県内の食品企業など25社で形成されたブースである。
2012年に立ち上げた雪室ブランドは今では、その商品数は60種類にもなる。
営業担当の関本大輔さん(44歳)。雪室を使った食材を新たに探す担当を担っている。関本さんがすすめているのが、雪室留学という仕組み。全国の食材を新潟の雪室に預け貯蔵。そして、おいしくなったところで、全国各地に戻す、食材の留学制度のようなものである。
そんな中で興味を持ってくれたのが、レンコンを栽培する佐賀県の農家。佐賀県のレンコン生産量は全国3位。その9割が佐賀県白石町で作られている。
ある理由から雪室に興味を持ったという。レンコンは乾燥に弱く、アシが早い野菜。その為、白石町では畑の泥を塗り直して乾燥を防いでいる。それでも10日ほどが限界。雪室で長期保存が可能となれば、もっと売れると考えているのである。
一般にレンコンの糖度があがるのが、秋口から春先までの時期に限定されており、雪室での保存が可能となれば、1年を通して販売可能となる。さらに、糖度があがれば、付加価値があがり、高値で販売できるようになる。
雪室を作るのは、雪の専門家公益財団法人雪だるま財団のスノーマンという役職の伊藤さん。北海道の大学で雪氷熱工学を研究していた。
スノーマン伊藤さんが作る雪室は、その土地の気温や日射量、降雪量から次の冬までに溶ける雪を計算し、1年中同じ温度が保てるように雪やもみ殻の量を決めているのである。
佐賀県のレンコンを雪室に入れてから1ヶ月半。そのレンコンの試食会が行われていた。雪室に入れたレンコンは、野菜本来の味が失われえぐみが強くなってしまった。原因はいったい何なんか。
泥についた菌が雪室の中で繁殖し味に影響を与えたのではないかという仮説を立て、泥をとったレンコンを再び雪室に貯蔵することとした。
結果は…エグみがなくなっており糖度もあがっていた。雪室に入れる前の糖度が7.8度あったのに対し、糖度は9.2度まであがっていた。あとはこれをどう売り込むか…。
関本さんは、知り合いを通じて、銀座シックスにザ・グラン銀座というレストランのシェフとの商談を取り付けていた。
シェフからの評価は上々。さらに今後も実験を重ね、レンコンを売り出していく予定だという。
鹿児島県桜島で火山灰を使った灰干しで地元の魚を世界へ
鹿児島県桜島。この島で農業を営む村山さん。毎日欠かさない日課が、風向き予報。火山灰の量で野菜の出来上がりに大きな影響を及ぼすのだという。
鹿児島市では、道路などに積もった火山灰の処理費用に年間約5億円を投じている。
この厄介者の火山灰で食の革命に挑む男がいた。彼が作って、鹿児島県内で人気を博しているのが、桜島灰干し弁当である。鹿児島中央駅での駅弁売り上げランキングで55ヶ月間1位である。
その灰干し弁当を手がけているのが、株式会社樹楽という食品加工会社である。創業は2008年で従業員は5名。5年前に灰干し弁当を開発した。
桜島の火山灰を水で洗い、オーブンで殺菌。火山灰で食材を挟むことによって、食材の水分とアンモニアを吸収し、臭みが抜けるという。さらに、灰干中の食材は空気に触れることがないため、酸化が少なくなり、旨味が損なわれにくくなる。これまで、20種類以上の商品を開発してきたという。
6月に漁港にあがるブリ。旬の食材ではないため、漁師たちは普通食べない。しかし、火山灰で灰干しを行うと臭みも取れ、旬ではないブリもおいしく食べることができる。
株式会社樹楽の社長:梛木さんは、セリにおもむき、コロダイやコショウダイといった、買い手がつかないような魚を灰干しにする。鹿児島県では、漁師の高齢化も相まって、この30年で漁師の数が半減している。こうした状況を火山灰の力で変えたいと考えているのである。
さらに、鹿児島県内の食品商社である本坊商店から、香港のそごうで出店しているさつま揚げ専門店に灰干し食材を出さないかと持ちかけられたのです。和食ブームも相まって話題を呼んでいるという。まずは香港を皮切りに灰干し商品を販売していくことになった。
雪も火山灰も地元の人にとっては確かに厄介な存在である。しかし先人たちはそれを排除するだけでなく、いかに活用するかに知恵を絞ってきた。そしてその姿は土地土地によって異なります。先人たちの知恵、そこには地域の特色を打ち出すためのヒントが眠っているのかもしれない。