[ガイアの夜明け] ( しゃぶしゃぶ温野菜 / アリさんマークの引越社 ) 密着!会社と闘う者たち 第2弾 – 2017年7月25日

ガイアの夜明け
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こんにちは。ひとりで.comです。

2017年7月25日放送のガイアの夜明けは「密着!会社と闘う者たち 第2弾」と題して会社と戦う労働者の特集。しゃぶしゃぶ温野菜のフランチャイズ加盟企業と戦う元アルバイト店員、アリさんマークの引越社でシュレッダー係に配転させられた従業員を追います。

 

電通の女性新入社員が過労自殺した問題から加速した「働き方改革」。ただ仮に会社側が理不尽な働き方を強いても、社員やパート職員、アルバイトが異を唱えるのは非常に難しい。

しかし、勇気を出して声をあげた人たちがいる。人気飲食チェーンで働いていたアルバイト学生と、大手引越会社の現役社員。

それぞれ、孤独ながらも本来受け取るべき賃金や働く場を得ようと会社側と闘い続けていた。去年2月に放送した「密着!会社と闘う者たち」の第2弾。

 

しゃぶしゃぶ温野菜の元アルバイト店員、アリさんマークの引越社のシュレッダー係

 

 

コンビニのサンクス、学習塾の明光義塾の未払い賃金の例

 

アルバイトをしている学生が、不当な扱いを受けたと大手チェーン店を訴える事例が出てきている。例えば、コンビニエンスチェーンのサンクスでバイトをしていた男子高校生のケースでは、業務開始の20分前に出勤するように命じられていた。そして6分の間で着替えるように言われいた。さらに業務開始14分前にタイムカードを打刻し業務につくように言われていた。

給与計算は15分単位となっていたため、14分が業務時間に含まれないようにするためだったという。すなわち、合計20分間はタダ働きさせられていたというのである。

サンクス業務時間
サンクス業務時間

 

これを不当と考えた男子高校生は労働組合に相談し、サンクスのフランチャイズ加盟企業に5店舗分アルバイト約70名の未払賃金として約500万円の合意をとったという。

 

 

さらに、学習塾の明光義塾明光義塾ではアルバイト学生が生徒に個別指導を行うスタイルで授業一コマは1時間半ほどであった。しかし、準備や報告などが多く、その時間に関しては手当として支払われていなかった。

そこで一人のアルバイト講師が労働組合とともに改善を要求。明光義塾の運営会社である明光ネットワークジャパンは、アルバイト講師たちに対して総額約4億5,000万円の支払いを行った。

 

このように、立場が弱い学生に対して有名ブランドのフランチャイズチェーンが不当な未払いを行うケースが増えている。

 

 

しゃぶしゃぶ温野菜のケース

 

2016年6月、霞が関の厚生労働省。多くのメディアが注目する記者会見が開かれました。大手飲食チェーンの元アルバイト店員が主役でした。

労働環境が劣悪だったと声をあげた。なんと4ヶ月連続1日も休みなく働かされていたという。さらに店長から包丁で刺されるなど暴行も受けていたというのです。お店を運営する会社を訴えることにしたのです。

この元アルバイト店員が働いていたのが、しゃぶしゃぶ温野菜のフランチャイズ店。鍋の食べ放題が人気でしゃぶしゃぶ温野菜は全国に約400店舗を構えている。しゃぶしゃぶ温野菜を運営するのはレインズインターナショナルしゃぶしゃぶ温野菜は約400店のうち、320店舗ほどはフランチャイズ店として運営している。

 

なぜこうした問題が起きたのだろうか。

 

2014年から始めたアルバイト。ホール担当として時給850円からスタートした。最初の面接では週4日程度、1日5時間から6時間の勤務と言われていた。しかし、人手不足から仕込みまで任されるようになり、1日12時間以上の勤務が常態化していったという。

ところが会社から振り込まれた給与は多い月でも15万7千円ほど。時給に換算するとおよそ450円ほどだった。

皿を割ったりミスをしたりと言いがかりをつけられ、給与を減給されていたという。さらに、店長からはパワハラを受けていた。

それでも、辞めたら懲戒解雇で就職にも響くと脅され、辞めるに辞めれなかったのだという。結局2015年8月にアルバイトを辞めたのだった。

 

アルバイトの間、大学にも行くことができず、その間の単位も落としてしまったという。このまま泣き寝入りしたくないと思うようになり、ブラックバイトユニオンに駆け込んだのである。ブラックバイトユニオンでは、高校生や大学生を中心にアルバイトの悩みを専門に受け付けている団体です。

なかでも飲食店に関する相談が一番多いといいます。

 

ブラックバイトユニオンが、実態の調査を行うために、しゃぶしゃぶ温野菜に事情を聞きに向かった。長時間労働は認めたものの、帰れと言っても帰らず、本人が自発的に勤務に来ていた、というのです。さらに、能力が低く、労働時間が長くなったと説明した。

その後本人に確認したところ、シフトは店長が勝手に決めていて、そこには休みが1日もない状態だったという。

 

ブラックバイトユニオンは、問題の店舗、しゃぶしゃぶ温野菜のフランチャイズ加盟企業であるDWE JAPANにも交渉を申し入れた。

その回答書には

事実に反し当を得ないご主張であると思料します

と書かれており、元アルバイト店員の主張を全面否定する内容だった。

 

 

2016年6月、元アルバイト店員は、しゃぶしゃぶ温野菜のフランチャイズ加盟企業であるDWE JAPANを訴えることにしたのです。

 

訴えの内容は以下の3点

  • 1日12時間以上の長時間労働
  • 4ヶ月の連続勤務
  • 店長からの暴力や脅迫行為

 

しゃぶしゃぶ温野菜を運営するのは焼肉の牛角や居酒屋の土間土間などを運営するレインズインターナショナルである。レインズインターナショナルはフランチャイズ契約として加盟企業360社と契約しており、加盟企業各社が牛角しゃぶしゃぶ温野菜などを展開している、という仕組みである。

レインズインターナショナル
レインズインターナショナル

 

 

レインズインターナショナル に取材を申込んだところ、書面で以下のような回答が送られてきた。

FC加盟店舗において今回のような問題が生じたことは大変遺憾に存じます。他方でフランチャイズ契約関係においては、あくまでFC加盟企業がその雇用する従業員の労働管理及び労働環境に対する責任を負うべき立場にあります。

すなわち、今回の問題は雇用するDWE JAPAN とアルバイト店員の問題であって、レインズインターナショナル には法的責任はないと言います。

 

労働の専門家も、今回のケースは雇用主であるDWE JAPAN にあり、フランチャイズ本部であるレインズインターナショナル の責任はほとんど問えないと考えられる、と指摘している。

 

この件に関して、DWE JAPAN にも取材を申し込み、川井直社長と面談することができた。社長の見解としては、

そういった(暴力や暴言を背景に長時間労働させていた)ことはなかったと思っている。ただし、当人・ブラックバイトユニオンからあがってきた音声を聞くと、そういうことがあったと考えざるを得ない。

長時間労働に関しては、本当なのか疑問に思う部分もあるが、そうでなかったという証明も難しいため、一定部分は認めざるをえないのではないかと思っている

としたうえで、

DWE JAPAN が持っている出勤記録によれば、1ヶ月で8日間休日をとっていた記録が残っていたのであった。

 

アルバイト店員の弁護士側は、未払い残業の支払いを求めて裁判を起こすことに決め、出退勤の記録後を証拠として提出するように求めたのである。更に、店長らを暴行などで刑事告訴することに決めた。

 

押収した書類の中に「防災防犯チェックシート」というものがあり、出勤時と退勤時に窓の開け閉めなどを確認するシートである。このシートに担当者サイン欄があり、休日だったはずの日にもアルバイトの名前が記載されていた。

さらに、警備会社のカードキーの記録も残されており、そこに実際に入退勤した記録が全て残っていた。

丹念に調べた結果、

  • 122日間の連続勤務
  • 月438時間の長時間労働

が浮かび上がったのである。

一方、元店長への暴行・脅迫の罪については、罰金20万円の略式命令が下されていた。

 

現在、労働時間などについては、千葉地方裁判所で審理が続いており、判決は来年の予定となっている。

 

 

 

 

 

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アリさんマークの引越社のケース

 

2016年2月にガイアの夜明けでも特集したアリさんマークの引越社における現役社員の訴え。

労働環境の改善や未払賃金の支払いを求めて会社側と交渉を続けたが、その対決のさなか、シュレッダー係に異動を命じられた小栗健さん(仮名:36歳)。1日中、シュレッダーに紙を入れては捨てるという仕事を続ける毎日を送っていた。

 

さらに、労働組合が会社の前で抗議活動をしていると、幹部が出てきて中止をもとめてきた。

会社と闘うことになった小栗さん、しかし会社側は真っ向から対立し平行線が続いた。

 

この放送は大きな反響を呼び、視聴者からも多くの声が寄せられたという。

 

前回の放送から1年経った2017年2月、アリさんマークの引越社を訪ねてみると、小栗さんはまだシュレッダー係を続けていた。

給料は営業だった頃の半分にまで減っていると言います。この間、会社を辞めることも出来たが、それだと今までと変わらない。同じ思いを持っている人たちの分も経営陣にわかってもらいたいという使命感から今でも変わらずにシュレッダー係を続けているのだという。

 

そもそも、小栗さんの会社への不信は2年前に遡る。結婚4年目、妻からのアドバイスがきっかけだったという。

 

小栗さんが勤めるアリさんマークの引越社は全国に70支店を展開しており、従業員は約4,000人の業界大手である。小栗さんは6年前にIT業界から転職し、引っ越しトラックのドライバーとして働き始めた。

しかし、待ち受けていたのは過酷な労働環境であった。もっとも働いた月は総労働時間は147時間、残業時間だけでも147時間にのぼった。これは国が基準とする過労死ライン100時間をはるかに超えている。

これだけ働いてもなぜか手取りは27万あまりだった。それでも働き続け、関東で営業1位になったこともあった。

しかし、業務中に事故を起こすと会社から借金をする形で弁償金を負わされた。弁償金は48万円。実際の修理費用や会社が入っているはずの保険については一切教えてもらえなかったのだと言う。

会社に疑問をもった小栗さんは、プレカリアートユニオンという運送業界で働く人達が数多く加入する労働組合に相談を持ちかけた。実はアリさんマークの引越社の元従業員40人以上が各地で同様の問題を訴え、組合に加入していた。そこに唯一の現役社員である小栗さんが加入し、ともに戦うことになったのです。

 

彼らの訴えを会社はどう思っているのか…取材に応じてくれたのは、アリさんマークの引越社の井ノ口晃平副社長。

プレカリアートユニオン が声を上げている未払い賃金や事故破損弁済についての法違反というのはないと考えている。人的ミス、事務処理ミスがあれば即座に支払う、それ以外は一切未払いはない。

と回答。

 

小栗さんは2015年6月、営業からシュレッダー係に異動を命じられ、さらにその2ヶ月後、懲戒解雇処分として以下の”罪状”が記された紙を社内に顔写真付きで貼られたというのである。

【罪状】

  1. 会社の業務上の機密事項及び不利益となる事項を他に漏らした。
  2. 会社の職制を中傷または誹謗し職制に反抗
  3. 短期間において遅刻が複数回あった
  4. 自己の権利を主張し、職責を果たしていない

その後、裁判所に訴えると、懲戒解雇は撤回された。しかしながら、その後もシュレッダー係を命じられたのである。

プレカリアートユニオン は小栗さんの活動を後押しし、会社の前で抗議活動を実施。抗議活動は法律で認められ、許可もとっていたが、アリさんマークの引越社の幹部が中止を訴えてきたのである。

 

前回の放送から1年、小栗さんと元従業員35人は未払賃金や弁償金の返還を求めてアリさんマークの引越社を提訴した。

 

この日は、シュレッダー係への異動の取り消しを訴える内容の山場を迎えていた。今回は、アリさんマークの引越社の井ノ口副社長も証人として出廷を命じられていた。その日の裁判を裁判記録を元に再現すると以下のようなやりとりが行われていた。

 

裁判官「それでは私から伺います。今回のシュレッダー係への配転というのは、1ヶ月の間に遅刻が2回あったことを重く見たということですね?」

井ノ口副社長「はい」

裁判官「例えば、あなたが明日からシュレッダー係へ行きなさいと言われたらどうですか?それって制裁に私から見ると見えるんだけど」

井ノ口副社長「いや、そういうつもいではやっておりません」

裁判官「今までもう1年半たっていますよね?」

井ノ口副社長「はい」

裁判官「いつまでこれを続けるんですか?弁解する余地はあまりないように思いますけど」

 

裁判所はアリさんマークの引越社を痛烈に批判したのです。

 

 

すると2週間後、会社からプレカリアートユニオン にある文書が送られてきた。そこにはなんと和解案の文字が。

その内容は…

平成29年3月1日より、世田谷支店の営業専任職として勤務

すなわち営業に復職できるというものであった。

しかし、他の事項についても確認してみると…

勤務時間中の移動は、公共交通機関及び自転車を使用する

と記載されていた。

 

引越し会社の営業マンは、お客さんのもとに車で行き、ダンボールを届けたりその車で引越の荷物を運んだりする。それを小栗さんには電車や自転車を使えと言うのです。

 

小栗さんは会社の和解案を拒否、全面的に会社と戦うことに決めたのである。

 

 

しかし、ここから急展開が巻き起こった。2017年5月、裁判所からのすすめもあり、一部和解が成立したのである。今回の和解案では、

  • シュレッダー係に配置転換したことについては、社会的相当性を欠くものであったことを認め、謝罪する。
  • 営業専任職として復職させ、営業車両の使用を認める

とあった。

 

長い戦いの末、ようやく元の職場に戻ることができるようになった。しかし、残業代や未払賃金、弁償金の問題は残されたままである。裁判も引き続き行われる予定である。

 

 

 

自分を雇っている会社に対し、声を上げて労働環境を守る。その交渉は本人にも会社側にも長い時間と相当の負担がかかります。

ただし今回取り上げきたケースは裁判や交渉の結果によっては、働く人を守っていくことになるかもしれない。

働く人も企業もどうすれば良い環境を作っていけるのかガイアの夜明けではこうした問題を引き続き追っていきたい。