こんにちは。ひとりで.comです。
2017年8月22日放送のガイアの夜明けは「〝常識破り〟で市場を拓く!」と題してタカラトミーアーツのがちゃ新商品の開発、和えるの伝統工芸品を使った子供向けの商品開発の最前線を特集する。
“モノが売れない時代”新たなマーケットの創造が必要だと、多くの企業が動き出している。子どもの頃、誰もが親しんだ”ガチャ商品”が大人向けに進化を始めていた。
300億円といわれるカプセルトイ市場。業界大手タカラトミーアーツの開発現場を取材し、カプセルトイの「オトナ化」に迫る。 一方、衰退の一途をたどるニッポンの伝統工芸。「その技術を次世代につなげたい」と奮闘する若き女性社長がいる。手がけるのは全国の伝統職人が作る0歳から6歳向けのブランド開発だ。
この「赤ちゃん・子供×伝統工芸」の取り組みは、伝統工芸の危機を救うのか?ターゲットを変え新たな価値を生み出す、その挑戦を追う。
常識破りの新商品開発
地図のゼンリンがアパレルブランドに進出?
東京渋谷区にあるマスターバニーエディションというゴルフショップ。ここに一風変わったゴルフウェアが置いてある。それが、肩の部分に地図がデザインされているポロシャツ。地図は架空のデザインではなく、神奈川県の江ノ島付近を忠実に再現されたものとなっている。
2017年4月の発売以来、特に女性客に人気を博しているという。
この地図柄のゴルフウェアを作ったのが、地図の国内最大手メーカーであるゼンリン。創業以来、全国の道路地図や住宅地図を手がけてきた。
しかし、電子化の影響により主力の出版部門の売上が減少してきており新たな分野への進出を図ろうとしていた。
先程のゴルフウェアをはじめ、さまざまな分野への進出を図ろうとしている。
地図以外で言うと例えばステーショナリーのmatimati(マチマチ)シリーズ。マスキングテープには大阪の御堂筋をモチーフにしていたり、名古屋の地図がプリントされたクリアファイルには、名物のモーニングが食べられる実際の地図があしらわれている。
せんなゼンリンが次に目をつけたのが石川県金沢市。金沢市の和菓子は一大産業となっており、クリアファイルの地図には和菓子屋をあしらうことを考えた。
これまで取引がまったくなかったLOFTなどの小売店などでも置いていただくための営業活動も積極的に行い、販路を拡大しようとしている。
タカラトミーアーツの新たなガチャガチャ商品の開発
タカラトミーアーツの加藤しずえさん。玩具メーカーのタカラトミーアーツでがちゃがちゃ商品の新商品企画を担当している。加藤さんは、美大を卒業後おもちゃメーカーでクレーンゲームの景品づくりに携わっていた。11年前にいまのタカラトミーアーツに転職後、大人向けのガチャガチャ商品の企画に携わっている。
東京都葛飾区にあるタカラトミーアーツの本社では、月に1度行われるガチャ商品の新商品開発会議が実施されていた。
ガチャ商品…すなわちカプセルトイ市場は約280億円。タカラトミーアーツはその中でトップシェアを争っている。子供向けの市場は縮小傾向にあり、さらなる成長を考えると大人向けのガチャ商品の開発が必須となっている。
ガチャ商品のヒットの基準は20万個、企画の段階で7割がボツになるという狭き門である。加藤さんはいま国内でも人気となっているダムに注目した。しかもダムそのものではなく、ダムカレーに注目したのである。
ダムカレーとは、ルーがダムの水、水をせき止めている門がご飯でできており、ダムの構造をモチーフにしているカレーである。最近、宮ヶ瀬ダムや黒部ダムなど、多くのダムでこのダムカレーが提供され始めている。
企画会議でも、なぜダムではなくてダムカレーなのか…という声はあがったものの、敢えてひとつはずした商品ということで、なんとか企画会議を突破。あとは商品化に向けてすすめていくのみである。
さっそく東京江戸川区にある松田モデルという企業にガチャのサンプルを作って頂くための打ち合わせを実施。実際にダムカレーで使われているお皿や写真などを渡しイメージを伝えていく。
まる2日かけ、松田モデルの職人がサンプル作りに没頭する。米粒ひとつひとつの質感をだすためにさまざまな工夫を凝らしていた。さらにここから2日かけ、着色を行っていく。
基本の色は10種類のため、どの色をどのように混ぜて作るかは経験がものがいうのだという。着色の仕方として、本物と同じではなく、より美味しく見せるためには少し明るめに着色するのがポイントなのだという。
一方、タカラトミーアーツの加藤さんは新たなダムカレーの商品作りに奔走していた。ダムの専門家からより有名なダムを紹介された。その中でひとつ気になったダムが岐阜県の丸山ダム。完成から60年経つ歴史あるダムだが、最近特に脚光を浴びつつある。
その理由は、わずか50メートル下に新たな”新丸山ダム”が建築されるのである。数年後には丸山ダムが湖になってしまうため、今のうちにと観光客が増えているのである。
がちゃとしてサンプルを作ったダムカレーは、神奈川県の宮ヶ瀬ダム、岐阜県の丸山ダム、栃木県の渡良瀬貯水池、愛知県の新豊根ダムなどである。ラインナップは全部で6種類となった。
2017年6月、神奈川県宮ヶ瀬ダムで先行販売を実施。その精巧な出来栄えに大人もガチャを行うほど。1回300円で全種類揃えようとする人がいるほどでした。
0歳から6歳までのこどもに日本の伝統工芸を
愛媛県砥部町。町を貫く道は陶街道と言われるその所以は焼物の産地であるということ。もともと砥石の産地として有名な場所だったが、その砥石のくず石を細かく砕いたものを原料にした砥部焼が誕生した。
砥部焼の窯元のひとつ、大西陶芸。2代目であり職人でもある大西先さんは、砥部焼の売上が減少する中、ある変わった形の商品が人気となっている。
それが”こぼしにくい器”である。
器の内側にソリがついており、これがあることによって、中の具材がこぼれにくくなっている。こどもと伝統工芸という異色の組み合わせ。仕掛けたのは和える(aeru)という企業。
和えるは0歳から6歳向けの伝統ブランド「aeru」を展開している。全国の伝統工芸の職人さんとコラボレーションして商品開発を行っている。
例えばはじめてハサミを使う時に的にしている木製のはさみや愛媛県の五十崎和紙の紙風船などを
社長の矢島里佳さんは
赤ちゃん、こどものときに日本の伝統工芸に触れ合う機会がないことに気づき、その市場をつくるところから広げていきたいと思い、和えるという企業を創業した
という。
栃木県益子町は日本屈指の焼き物の里。訪ねたのは益子最大の窯元である「つかもと」である。そこにあったのは、”こぼしにくい器”。和えるでは、砥部焼以外にも、山中漆器、津軽焼、大谷焼でも”こぼしにくい器“を作っており、さらなる全国展開に向けて益子焼をラインナップに加えたいと考えていたのである。
しかし、問題がひとつ。益子焼の土の材質は粗いため、こぼしにくい器の一番の特徴である”返し”の部分に商品ごとにばらつきが発生していたのである。
その原因のひとつに、”返し”を作るのに用いる木べらに問題があるのではないか、という疑惑が生じたのです。そこで和えるの矢島さんは、他の産地で使っている木べらの写真を集め、益子焼でもそれを使ってもらうことにした。
するとどうでしょう。これまでよりも”返し”の部分を均一化して作ることができるようになったのである。
別の産地の焼物職人たちが助け合う…これまでにはなかったことである。
和えるでは、使うと自然に食事の所作が身につく食器”はじめてシリーズ”を作っている。そのひとつに箸置きをラインナップにしたいと矢島さんは考えていた。
その箸置きに使おうとしているのが、香川県高松市の採石場で採れる庵治石。日本三大花崗岩のひとつである。固い性質を持っているため、今までは主に墓石に使われたきた。
しかし、歴史ある石も海外からの安い石に押され厳しい状況にある。この地域の石加工業者は1982年には175社あったが、2017年には86社と半分以下まで減っているのである。
採石場近くに工場を構える伏石石材は危機感を募らせていた。昔と比べても仕事の量は減っており、最盛期の8割ほど仕事が減っているのだという。
伏石石材では、この危機に瀕し、少し前から石を使ったアクセサリー作りなどを手がけるようになっており、その技術を見越して、箸置きづくりをお願いすることにしたのである。
もともとは子供向け商品を大人に、または大人が親しんでいた伝統工芸を子供向けに。これまでとターゲットを変えることで新たな市場を開拓しようとする挑戦を見てきた。
今回こうした取り組みには自分たちが手がける商品を違った角度から見ることが大切だと感じられた。これまでの常識を破る商品が今後も登場するのを楽しみにしている。