こんにちは。ひとりで.comです。
2017年9月28日放送のカンブリア宮殿は「ジャパンミラクルで大躍進!外資系食品企業のイノベーション戦略」と題してネスレ日本 代表取締役社長兼CEO 高岡浩三さんが登場。
コーヒーの「ネスカフェ」、チョコレート菓子の「キットカット 」など、強力なブランド商品を展開するネスレは、スイスに本社を置くグローバル企業。
ネスレは他にも調味料や飲料水、ペットフード、さらに栄養食品なども手掛ける「食の王国」だ。食の巨大企業、ネスレの中で、一際業績を伸ばしているのが、日本の現地法人「ネスレ日本」。そのトップは、日本人初の生え抜き社長となった高岡浩三。
ネスレ日本は、高岡が社長に就任後、マイナス成長がプラスに転じ、スイス本社からは「ジャパンミラクル」と称賛される。高岡が掲げるイノベーション戦略で快進撃を続ける外資系食品企業の全貌に迫る!
ジャパンミラクルで大躍進!外資系食品企業のイノベーション戦略
【目次】
日本で独自の進化を遂げているキットカット。
ネスレと言えば、キットカットである。16種類もあるのは日本だけ。その為、海外でキットカットを知っている外国人は、母国へのお土産としてキットカットの他の味を選ぶ人も多いのだという。これだけの種類があるのは、日本独自の戦略に基づくものなのだという。
さらに銀座には、キットカット ショコラトリー銀座本店がある。このキットカット ショコラトリー では、キットカットの高級版を取り扱っている。1本300円のものから、500円のものまで有名パティシエとコラボレーションした商品などが数多く取り揃えられている。
さらにお店の2階にはカフェスペースが設けられており、女性客に大人気となっている。
次々と新商品を生み出すネスレ
さまざまなキットカットを作っているのが、茨城県稲敷市にある工場である。
開発現場では、グラム単位で素材の調整を行い、どの味が最適な味になるのかを研究している。
レシピの完成までは3ヶ月。毎日のように試作品を作っては食べてを繰り返すことで、満足のいく新商品が出来上がる。
そして、今回新商品として完成したのが、キットカット毎日の贅沢 抹茶ダブルベリー&アーモンドである。
現在、日本で販売されているキットカットは30種類だが、これまでに売り出されたのは300種類以上にも及ぶ。いまやキットカットは売上日本一のチョコレート菓子である。
世界の食の巨大王国ネスレ
ネスレはスイスに本社を置くグローバル企業で、創業は1866年である。創業者のアンリ・ネスレが栄養失調に苦しむ乳幼児を救うため乳幼児製品を開発したのがきっかけである。その後、珈琲やお菓子をはじめ、ラインナップを拡大。いまでは191の国と地域でビジネスを行っており、100カ国以上に現地法人を持っている。
グループの時価総額は世界の食品メーカーとしては世界1位を誇る。まさに食の巨大王国である。
【世界食品メーカー時価総額】※2017年
1位 | ネスレ | 26.4兆円 |
2位 | コカ・コーラ | 19.4兆円 |
3位 | ペプシコ | 16.4兆円 |
ネスレ日本の本社は兵庫県神戸市にある。ネスレ日本も1913年創業と、100年以上の歴史を持つ老舗企業である。従業員は約2,500人ほどである。
ネスレ日本はペット関連商品も取り扱っており、猫大好きフリスキーやモンプチもネスレの商品である。さらに、ミネラルウォーターのペリエやコントレックス、調味料のマギーブイヨンなど20以上のブランドを取り扱っている。
今年、日本での発売50周年を迎えたネスカフェ・ゴールドブレンドは日本で最も多く飲まれているコーヒーブランドである。
ネスカフェ・ゴールドブレンドは時代とともに進化を遂げており、初期の頃は”インスタントコーヒー”とパッケージに記載されているが、最近のものは”レギュラーソリュブルコーヒー”と書いてある。
実はネスレ日本 は、4年前からインスタントコーヒーを辞め、レギュラーソリュブルコーヒー1本で行くことにしたのである。
レギュラーソリュブルコーヒーとは、細かく挽いたコーヒー豆の粉末をコーヒーの抽出液に加えて、豆を包み込むようにする。そこにお湯を注ぐと包まれていた豆の粉末が顔を出す。その為、インスタントに比べて挽きたてのような味と香りがでるようになるのである。
このレギュラーソリュブルコーヒーを世界に先駆けて開発したのが日本なのである。その功績は、ネスレの創業150周年の式典の際に最もイノベーションを起こしているマーケットとして日本が選ばれるほどである。
ネスレ日本の高岡浩三さんは、社長就任後それまでマイナス成長だったネスレ日本 の売上前年比を一気にプラスに転じさせたのである。
その要因について、ネスレ日本 の高岡浩三さんは、
最も重要なのは大きなイノベーションを起こすことで、それを実現するためには顧客が気づいていない問題を発見しなければならない
と語った。
その象徴とも言えるのが、ネスカフェのコーヒーマシン、バリスタである。これはネスレ日本 がアイディアを出し、スイス本社と共同開発したもの。レギュラーソリュブルコーヒーを使って、1杯ごとに淹れたての味わいを楽しむことができる。
昔はコーヒーは家族で飲むものだったが、1人・2人世帯が増えてきたことによって、1杯分のコーヒーを作ることが面倒になってきていた。そこで1杯でも手軽に飲めるようにとバリスタを開発したのである。
さらに、このバリスタが今までネスレが苦手としていたオフィス需要も開拓することができるようになった。このオフィス需要をより強固なものにしているのが、アンバサダーという制度である。
ネスレ日本 では、企業に対してバリスタマシンを無償で貸し出し、その企業の人にアンバサダーになってもらう。アンバサダーとなった人は、社員からコーヒー代を回収し、それによってネスレ日本からコーヒー代を回収するという仕組みである。
5年前からスタートしたこのシステム、今では約35万人が登録している。
このアンバサダー制度は、ネスレ日本 対 企業、いわゆるBtoBビジネスでありながら、アンバサダーは個人として登録しており、個人が企業に対してバリスタを勧めるという変わったビジネスモデルである。おそらくこういったビジネス形態をとっているものは、他にほとんどないと思われる。
ネスレ日本社長 高岡浩三さんが作ったキットカットで「きっと勝つ」合格祈願
ネスレ日本 の高岡浩三さんは1960年に大阪堺市に生まれ、サラリーマンの家庭で育った。幸せな家族で育っていたが、11歳のときにその人生が一変する。自身の誕生日に父親ががんで亡くなったのである。
実は祖父も同じ42歳で亡くなっているということもあり、母親からも「あなたも気をつけなさい」と釘を刺されたという。それを聞き、自分に残された時間も少ないのでは?と考えるようになり、若くても実力次第で大きな仕事ができる外資系企業を目指すようになった。
神戸大学卒業後、ネスレ日本 に入社した。主にマーケティングや商品開発を担当し41歳のときにスイス本社からキットカットの責任者を命じられ、思わぬ難題を突きつけられた。それが、キットカットの利益金額を5年後に500%にしろというミッションだった。
当時、日本ではキットカットは伸び悩んでいた。どうやって立て直すか…苦悩の日々が続いた。
そんなある日、九州の支店から電話が入った。
九州では、1月と2月にキットカットが売れる…どうも受験生が買っているらしい
最初は何のことかと思ったが、キットカットが、九州の言葉では「きっと勝っとぉ」に聞こえるため、それが子どもの受験に縁起が良さそうだということではないかと仮説を立てた。
そして、全国の予備校を周り、売店にキットカットを置いてもらうことにした。
しかし…1年近くたっても全く反応は得られなかった。
突破口は意外にも自らの体験にあった。
高岡浩三さんは大学受験の際、神戸市内のホテルに初めて一人で泊まった。ホテルで前の晩に孤独で不安な夜を過ごしたという想いがあり、予備校ではなく、受験生が泊まるようなホテルを1軒1軒まわり、受験生にキットカットを渡してもらうようにお願いした。
どのホテルもなかなか首を縦に振ってくれなかったが、2軒だけしぶしぶ了承してくれた。そのホテルで行ってもらったのが、朝ホテルのチェックアウト時にキットカットをフロント係が「がんばってくださいね」とひと言添えて渡すということだった。
これが口コミで広がり、キットカットが一大ブームとなった。
受験生の不安を解消したいという高岡浩三さんの思いが形となったのである。そして、5年で利益を5倍にするというミッションも4年でクリアすることができたのである。
ネスレ日本の”イノベーションアワード”
ネスレ日本 では、年に1度、アイディアを出し実行、成果を競うイノベーションアワードという社内コンペが行われている。
1年目は80件の応募だったが、6年目の今では年間4,700件ものアイディアが寄せられるようになった。社員の中に新しいものを発想するという機運が高まっている証拠と言えよう。
ちなみに、過去に大賞を受賞したものだと、最初に紹介があった、高級チョコレートを扱うキットカット ショコラトリーや、オーブントースターで焼く”焼きキットカット”などがある。
さらに去年の大賞を取ったのは…阪急電鉄の服部天神駅構内にある”ネスカフェスタンド”である。まず解決したのが顧客の利便性である。コーヒーやエスプレッソ、宇治抹茶などが1杯100円で飲め、電車の待ち時間をリラックスタイムにした。
さらに、定期券型の回数券を作り、980円で大人12杯、学生15杯飲めるという仕組みを考案(3ヶ月間有効)。現在ネスカフェスタンドがある箇所は、もともとコンビニがあったが、駅前のコンビニに押され売り行きが下がっていたのだという。
ネスカフェスタンドは顧客からも好評で、ネスカフェスタンドを導入している阪急電鉄は5駅から19駅への設置の拡大を行っている。
このイノベーションアワードにおいて社長の高岡浩三さんが気をつけていることは、チームワークではなく、個人でやらせているということである。イノベーションは個人の発想からしか生まれないと考えており、どれだけ、顧客の課題もしくは顧客が気づいていない課題を考える時間を費やせたかによる、と話している。
そして、思いついたアイディアはその発案者にやらせるというところまで仕組みとして用意しているところに大きな特徴がある。