[未来世紀ジパング]池上彰の世界激変3時間スペシャル 世界を分断する”新たな壁” – 2017年10月16日

未来世紀ジパング
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こんにちは。ひとりで.comです。

2017年10月16日放送の未来世紀ジパングは「池上彰の世界激変3時間スペシャル 世界を分断する”新たな壁”」と題して池上彰氏が徹底解説!

 

緊迫する北朝鮮情勢。核・ミサイル問題をめぐり、国連が北朝鮮に対して”包囲網”という”新たな壁”を張り巡らせる一方で、脱北者が急増している。

一方、アメリカを分断し始めた”人種の壁”。混沌とする「世界情勢」の中、”世界にはびこる壁”は、私たちニッポンにどのような影響を与えるのか?

ジャーナリストの池上彰をナビゲーターに招き、”世界にはびこる壁”からニッポンの未来を探っていく!

 

 

 

世界を分断する”新たな壁”

 

北朝鮮包囲網と内情について

 

北朝鮮包囲網。それは、日本・アメリカ・韓国・中国・ロシアが様々な圧力をかけている。そして北朝鮮は国連による経済制裁が行われており、

  • 北朝鮮への石油供給を制限
  • 北朝鮮製品の9割が輸入禁止

という状況になっている。

北朝鮮は、核開発やミサイルを交渉カードとして、これまで三代続いている金日成・金正日・金正恩をなんとか維持し、それをアメリカに約束させたいのである。

 

過去にイラクやリビアは核兵器の開発を辞めた結果、攻撃をされたという事実から核兵器を持っていれば攻撃されなかったに違いないという解釈をしていると考えられる。

 

この金正恩体制を維持するために北朝鮮国内では”恐怖政治”が行われている。

  • 幹部の粛清
    →金正恩体制になってから少なくとも100人以上が処刑されている。
  • 密告(5人組制度)
    →5世帯ごとにグループ化されて、政権を悪く言う人を密告しなければならないというものである。密告しなければ自分が危うくなるという仕組みで、市民の中で氾濫がおきないようにしている。現在はこれが3人組制度になっているとも言われている。
  • 公開裁判
    見せしめとして公開裁判を実施し、監視を行っている。

 

こうした政策を行っているため、韓国への脱北者も増えている。今回、北朝鮮から韓国に脱北した人の取材に未来世紀ジパングは成功した。

 

 

 

増加する北朝鮮からの脱北者と脱北までの険しい道程

 

パク・ジウさん(23歳)。3週間前に北朝鮮から韓国に脱北してきたのだという。北朝鮮での暮らしは苦しく、生き残るために脱北してきたのだという。

 

パクさんの父親は炭鉱労働者、母親は大飢饉で亡くしていたため、ひとり暮らしだったというパクさん。生き残るためには中国へ行くしかなかったのだという。

 

北朝鮮と中国の国境にある川を渡ったパクさん。その後、長白という場所で、脱北者を狙った人身売買のブローカーに捕まり、中国の錦州に売られてしまった。そこで奴隷花嫁となってしまったのである。そこでは、もし逃げようとすれば北朝鮮当局に通報すると脅されていたのだという。

この情報を聞きつけた韓国の支援団体は、パクさんをなんとか救出することに成功、中国国内で新幹線を乗り継いで瀋陽に到着した。中国国内でもし見つかって捕まれば北朝鮮に強制送還され、場合によっては死刑になってしまう。

以前は、中国の大都市に行き、総領事館や大使館に逃げ込むことで脱北できていたが、2002年瀋陽での日本大使館への逃げ込み事件以降、大使館や総領事館周辺における警備が厳しくなり、この場所で脱北するのが難しくなってしまったのである。

 

北朝鮮から韓国に脱北するには、モンゴル経由で行くことも可能であるが、近年警備が厳しくなっており、かつ砂漠が存在するため現実的ではない。そこで最近では、タイ経由で脱北するケースが増えている。

 

脱北者 ルート
脱北者 ルート

 

ただし、タイに行く間もラオスを経由しなくてはならず、ラオスは北朝鮮の友好国であるため、ラオスで見つかると北朝鮮に強制送還となってしまう。無事ラオスを抜けるとやっとタイに入国できる。

タイの国境付近はゴールデントライアングルと言われており、以前から麻薬の栽培地帯であった。ここまでくれば、人権問題に厳しいタイが強制送還という建前で韓国に送ってくれるのである。

パクさんは北朝鮮から脱北して実に7ヶ月、やっとの思いで韓国に送還されたのである。

 

このように北朝鮮から脱北した人はのべ3万人にのぼるという。しかし、一方で北朝鮮から脱北し韓国での生活になじめずに北朝鮮へ自ら戻ることを決意した人もこの5年間で20人以上いるのだという。

そして、韓国に脱北後、韓国国内でタレント活動を行った女性が、北朝鮮に戻り

「韓国はひどい国で毎日が地獄だった」

と語った動画が流れるというニュースがあった。

これは、北朝鮮の工作員が彼女を捕まえて強制送還し、上記のような事を言わせたという説と、最初からスパイとして韓国に来たという説が語られている。

 

今後、北朝鮮への経済制裁が増せば、より北朝鮮での暮らしは厳しくなることは間違いないため、より脱北者が増えるのではないか、さらにアメリカとの戦争になれば脱北者ではなく難民となってさまざまな国や地域に流れる可能性すら考えられる。

 

 

 

 

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北朝鮮のミサイルの脅威と最新鋭の戦闘機

 

2017年8月、北朝鮮から日本の上空を火星12という中距離弾道ミサイルが発射された。現状、日本における迎撃態勢は2段階になっている。

1つ目は日本海に配備されているイージス艦である。もしイージス艦が撃ち漏らした場合は、日本国内に34機配備されているPAC3が迎撃することになっている。

これまでは、こうしたミサイルを発射するためには、日本の防衛大臣が「破壊措置命令」を出さないと打つことが出来ないとされていた。従って、実は現在でも「破壊措置命令」が出された状態になっており、万が一ミサイルが飛んできても防衛大臣の指示を待たずにただちにミサイルを撃ち落とすことができる、それほど緊迫した状態になっているのである。

 

さらに距離的に密接な関係がある韓国の防衛状況はどうだろうか。

韓国には、THAAD(高高度防衛ミサイル)が配備されており、日本のPAC3よりもより高高度の状態のミサイルを撃ち落とすことができるようになっている。

さらにアメリカが日本海近辺に空母打撃群を配備している。さらに空の爆撃機も準備されており、特にその中でも北朝鮮が恐れているのが”死の白鳥”と呼ばれるB-1B爆撃機である。このB-1B爆撃機はステルス戦闘機であるため、レーダーに映らない。そしてなおかつ大量の爆弾を積み込むことができるため、北朝鮮が恐れているのである。さらにF-35戦闘機というステルス戦闘機も韓国周辺に配備されているのである。

B-1B戦闘機
B-1B戦闘機

このF-35戦闘機を製造しているのがアメリカテキサス州のフォートワースにある軍事企業「ロッキード・マーチン社」である。アメリカ最高機密の軍事工場である。このロッキード・マーチン社が20年という開発期間をかけて作ったのが最新鋭の戦闘機F-35戦闘機である。

日本はこのF-35戦闘機を導入予定だという。このF-35戦闘機の一番の特徴はそのステルス性能。これまでの戦闘機よりもそのステルス性能が高いため、より敵に近づくことができるのである。その秘密は機体の塗料である。レーダーが反社しにくい特殊塗料を使っているため、ステルス性能が高いのである。

このF-35A戦闘機は1機あたり150億円。このF-35A戦闘機を42機導入予定なのだという。

F-35戦闘機
F-35戦闘機

 

アメリカのトランプ大統領が北朝鮮を挑発すればするほど、防衛に対する各国の意識が高まり、アメリカ製の軍事産業が潤うという構図も見えている。

実際、ここ半年、アメリカの軍事関連株が上昇しており、以下のようになっている。

【株価上昇率(2017/4/1 – 2017/10/1】

ボーイング社 44%
レイセオン社 22%
ノースロップ・グラマン社 21%
ロッキード・マーチン社 16%

 

北朝鮮は空だけでなく、海中にも攻撃手段を持っている。それがSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)である。潜水艦から発射するミサイルは北極星1号と呼ばれる。

実は北朝鮮は潜水艦の保有数が世界1位で、約80隻の潜水艦を保有している。

 

 

 

日本の最新鋭潜水艦「せきりゅう」に潜入取材

 

せきりゅう 潜水艦
せきりゅう 潜水艦

 

東洋一の軍港と呼ばれた広島県呉市。呉は日本最大の潜水艦基地。ここが日本海に対する防衛の要となっている。日本が保有する潜水艦は全部で18隻。そのうち呉基地に12隻が所属している。

 

今回、取材を許された潜水艦が赤龍(せきりゅう)という潜水艦である。純国産の潜水艦で2017年3月に配備されたばかり。全長84メートル、1隻約700億円。せきりゅうの乗組員は65名である。

潜水艦というと、外側は堅い鉄板というイメージだが、せきりゅうは音を吸収するため特殊なゴム素材で覆われている。

 

大きな潜水艦、潜ったり浮上したりするためには、潜水艦についているプロペラだけでは不可能。従って、潜水艦の外壁にはバラストタンクと呼ばれる部分があり、そこに海水を入れその重みで沈む。地上に浮上する際は、バラストタンクに空気を入れて浮上するのである。

中でも潜水艦にとってもっとも重要な情報なのが、EMS(電波探知装置)である。潜水艦の最大の敵が対潜哨戒機という戦闘機である。その敵をいち早く発見するため、潜水艦には上部にレーダーがついているのである。

さらに周囲が見えない潜水艦にとって重要なのが音である。ソナーと呼ばれる艦船のスクリュー音などを感知する装置であるが、これによって敵が近づいているかを判断することができる。

 

潜水艦は沈座と呼ばれるエンジンを止めて長い間海底にとどまるという行為を行う。音を出さずに同じところにとどまることによって、秘密裏に周囲の状況の監視を行うのである。

 

 

潜水艦の内部で最も音をだすのが、機関室である。この機関室の音をどれだけ小さくできるか…この技術に世界の企業は凌ぎを削っている。このせきりゅうには、スターリングエンジンというエンジンが採用されておりかなり音が抑えられている。

そして、このせきりゅうには89式長魚雷という世界最長の射程距離を持つ魚雷が備わっている。魚雷は空気圧で発射され、自らスクリューで進み敵を仕留める。

 

魚雷は直接船体に命中させるのではなく、船体の下で爆発させ、その圧で船体を破壊。爆発時に発生させたバブルパルスによって、折れた船体が海の中に引き込まれ、船が沈んで撃沈させるのである。

 

潜水艦が抑止力となった例と言えば、1982年のフォークランド紛争が有名である。フォークランド紛争はフォークランドという土地をめぐってイギリスとアルゼンチンが起こした紛争である。この時、海にイギリス軍の潜水艦がいる…という情報だけで船を近づけることができなくなってしまったのである。

 

 

 

中国が分断しようとする新たな壁

 

中国では、2017年10月18日より5年に1度の共産党大会がはじまる。2期目を迎える習近平国家主席が絶対的な権威を目指して、中国建国の父”毛沢東”を目指そうとしている。

その習近平が進めている高い壁がGreat Fire Wallである。万里の長城はGreat Wall、一方でインターネット上のファイアウォールの事をGreat Fire Wallと呼んでいるのである。

中国では、Google / Facebook / Twitter / Youtubeは見れない。その代わり中国独自のサービスとして、バイドゥ / レンレン / ウェイボー / ヨウクなどがある。

さらに、中国では検索禁止ワードが定められており、

  • 64 = 天安門事件
    →1989年6月4日に起きた天安門事件は天安門で起きた民主化デモを中国政府が武力鎮圧したものである。
  • 水爆 = 北朝鮮の水爆実験
    →中国主催でBRICS首脳会議を開いた日に北朝鮮が水爆実験を行いメンツを潰されたからとされている。
  • くまのプーさん = 習近平
    →習近平主席に似てるからではないか…と言われている。

 

そんな検索の中でも恐れられている人物が”劉暁波”さんである。劉暁波さんは中国の民主化と自由・人権の尊重を訴えたことでノーベル平和賞を2010年に受賞したのである。しかし、その後逮捕され、ノーベル平和賞の授賞式にも出席できなかった。その時の罪状が「国家政権転覆扇動罪」という容疑であった。

 

 

中国特別行政区「香港」。2017年1月、高級ホテルであるフォーシーズンズホテルからとある人物が失踪した。資産家失踪事件と報道され、中国の公安が拉致したのでは…と報道された。その男性は習近平の親族の資産を運用していたとされ、いまなお消息が不明である。

 

そんな中、2年前に突如消息を絶ち、中国政府に8ヶ月間拘束されたというある書店の人物に話を聞くことができた。この人物は繁華街の裏通りにあるトンローワン書店というお店の店長だった。その書店で扱っていたのは天安門事件の本や、共産党を批判する本を出版していた。

香港は一国二制度を敷いており、中国でありながら言論の自由が認められていた。しかし、この書店の店長は拉致されてしまったのである。実は、この店長は習近平の女性問題に関する書籍を出版しようとしていたのである。

 

店長は拉致され、中国本土に連れて行かれ、暴力はなかったものの、長い尋問にかけられたのだという。2016年1月、店長の釈放を求めるデモが香港で行われた。参加者は6,000人にものぼったという。結局、店長は顧客の名簿を提出することを条件に一時的に釈放された。

しかし、店長はその要求には応じず、香港でその一部始終を告白したのだという。

 

 

 

アメリカに生まれる新たな”南北の壁”

 

アメリカで壁と言えば、メキシコ国境との壁のことを思い受かべる方も多いと思うが、いまそれ以外にも南北の壁・人種の壁というものが生まれてきている。

 

アメリカ南部のヴァージニア州シャーロッツビルは大学生が多く暮らす学生街である。この夏、白人至上主義を掲げる団体とその反対派が衝突し、女性一人が死亡するという事件が起こった。

なぜ、静かな街でこんなことが起こってしまったのか、それは街の公園に立つロバート・E・リー将軍の銅像が関係している。リー将軍はアメリカ南北戦争の南軍の総司令官であり、それが奴隷制の象徴だとして市が撤去をしようとしたことが起因しているのだという。

 

実はいま、白人至上主義団体の活動がアメリカ全土で活発化しているのだという。白人至上主義団体は2014年には約70だったのに対して、2016年は約130と倍増している。

 

そのひとつの団体が、秘密結社KKK(クー・クラックス・クラン)である。19世紀にアメリカ南部で誕生したこのクー・クラックス・クランは黒人へのリンチや殺害などの事件を繰り返してきた。反ユダヤ思想を持っている。

 

KKK クー・クラックス・クラン
KKK クー・クラックス・クラン

 

今回取材に応じてくれたクー・クラックス・クランのメンバーは、

昔はたしかに手紙でやりとりをし素性を隠していたが、いまは顔などは隠さずに活動している。何も白人が優れていると言っているわけではなく、古き良き南部の伝統や白人の権利が侵害されていると言っている

のだという。

自分たちは白人至上主義なのではなく、白人分離主義なのだという。

 

リチャード・スペンサー氏はオルト・ライト=新右翼の代表としていま若者から注目を集めている。新たな白人至上主義を掲げるオピニオンリーダーである。

 

自分が狙っているターゲットはエリート層、彼らは社会的にも影響力が大きい。

 

スペンサー氏の愛読書はヘーゲルの哲学書、ニーチェの散文集。彼の講演はスウェーデンなど海外などでも予定されている。

 

このリチャード・スペンサー氏はオルト・ライト=新右翼の活動を行う狙いを、白人は世界を主導する上で必要な存在であることを自覚して欲しいのだという。

 

 

 

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人種差別と戦った日本人

 

フレッド・トヨサブロー・コレマツ Google
フレッド・トヨサブロー・コレマツ Google

カリフォルニア州のマンザナー強制収容所跡地、74年前に日系人が強制的に収容されていた場所である。見ず知らずの人達が共同生活を強いられていたという。

こうした日系人に対する対応に立ち上がった一人の日本人がいた。それがフレッド・トヨサブロー・コレマツ氏である。

太平洋戦争が始まるとアメリカで排日感情が高まり日系人に対する排斥運動がはじまった。アメリカ西海岸にはおよそ10万人の日系人がいたが、彼らは財産を没収され強制収容所に送られることになった。

当時のルーズベルト大統領が、大統領令として日系人の隔離を命じたのである。

そんな中、ひとりだけ抗ったのがフレッド・トヨサブロー・コレマツ氏である。1919年サンフランシスコに日系2世として生まれたが1942年強制収容所に送られることとなった。

しかしこの扱いは人権弾圧だと訴えアメリカ政府を相手として裁判を起こしたのである。しかし、裁判には勝つこと無く終戦を迎えることとなってしまった。1982年、心にわだかまりを残したまま暮らしてきたコレマツ氏に転機が訪れる。

日系人収容に関するある大事な資料が見つかったのである。その資料によれば…

  • 彼ら(日系人)は何の問題もない
  • ほとんどがアメリカ合衆国に忠誠を誓っている
  • 彼らは良き隣人、素朴で気品あふれる人々だ

と書いてあったのである。

 

ところが軍はこの報告書を黙殺し、大統領令にもとづき、強制収容をすすめたのである。コレマツ氏は再びアメリカ政府を相手に裁判を起こした。ついにアメリカ政府は罪を認め、1990年ブッシュ大統領の署名入り謝罪文を手にしたのである。

その後クリントン大統領はコレマツ氏に対して、大統領自由勲章を授与した。

こうした功績が讃えられ、Google検索のトップ画面にも表示されたのである。