[未来世紀ジパング]池上彰の世界激変 第4弾 世界を分断する”新たな壁” – 2017年10月23日

未来世紀ジパング
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こんにちは。ひとりで.comです。

2017年10月23日放送の未来世紀ジパングは池上彰の「世界激変シリーズ」の第4弾。

今回も、世界を分断する”新たな壁”を解説する。

 

前回の記事はこちら

 

アメリカ・トランプ大統領の行動が、中東に”新たな壁”を生み出した。中東の小国・カタールが、周辺国から「国交断絶」を突きつけられた。これにより、”中東のCNN”とも言われるニュース専門局・アルジャジーラが閉鎖の危機に!

一方、ヨーロッパでも”壁”が問題となっている。「ベルリンの壁」崩壊から28年、ドイツ国内に”新たな壁”が。さらに、EU離脱をめぐって揺れるイギリスでも、国内に残る”やっかいな壁”が、新たな火種となっていた・・・。混沌とする「世界情勢」の中、池上彰が”世界にはびこる壁”からニッポンの未来を探っていく!

 

 

世界を分断する”新たな壁”

 

イスラエルとパレスチナの壁

 

世界で最も緊迫する壁、それはイスラエルにある。それは、分離壁と呼ばれる全長700km、高さ8mにも及ぶ、イスラエルとパレスチナを隔てる壁である。

イスラエルは人口の大半がユダヤ人でその中にアラブ人が住む2つのパレスチナ自治区が存在する。それを取り囲むようにイスラエルが立てたのが分離壁である。

 

イスラエル / パレスチナ自治区
イスラエル / パレスチナ自治区

 

 

壁ができてから、壁内のパレスチナ自治区の経済活動が停滞した。この分離壁には緊張状態が続く場所もある。さらにイスラエルはこの壁にさらなる秘密兵器として、AIを搭載した監視カメラを導入しようとしている。

 

 

 

 

 

中東の国交断絶:カタールとサウジアラビアの壁

 

トランプ大統領になってから、中東に出来た壁…と言えば、カタールの壁である。2017年6月カタールはサウジアラビアなどの各周辺国から国交断絶を突きつけられたのである。

ある事情によりカタールが裏切りものと見られてしまったのである。

 

カタールは秋田県よりも少し狭い広さに260万人が住む都市で首都はドーハ。国家元首はタミム首長である。街のそこらじゅうにポスターが貼られている。

カタールは天然ガスが豊富に取れ、世界一豊かな国と言われたこともある。国民の95%がイスラム教徒である。

実はカタールには日本企業も多く進出している。例えば、カタールのハマド国際空港を手掛けたのは日本の大成建設である。世界最大級のLNG(液化天然ガス)プラントの建設には千代田化工建設、都市交通のドーハメトロは三菱重工・日立製作所などが関わっている。

 

そんななか、カセットコンロで有名な岩谷産業では、国交断絶の対応に追われていた。岩谷産業は半導体の製造に欠かせないヘリウムガスなどを輸出している。

これまでは陸路でサウジアラビアを通りドバイで貨物船に載せ替えて輸出していたが、サウジアラビアとの国交断絶により海路を使った遠回りな道を使わざるを得なくなっているのである。

ルートは確保できたものの、輸送コストがあがり、さらにこれまで輸送に25日間かかっていたものが45日間になるなど、値上げせざるを得ない状況に陥っている。

カタール政府は住民の生活に支障が出ないように、巨額の資金を投入し、国交断絶が起きなかったイランなどからの輸入で食料の調達などを行っていた。

 

その後サウジアラビアは、国交回復の条件としていくつもの条件を突きつけた。そのうちの一つにカタールの放送局”アルジャジーラ”の廃止を訴えた。アルジャジーラは1996年放送開始のいわば中東のCNNである。

アルジャジーラの名前が広まったのは、2001年のアメリカ同時多発テロ事件。テロの直後、首謀者とされたビンラディン氏の独占放送を行ったのである。さらに、中東の民主化運動「アラブの春」では、反政府デモ運動を精力的に放送した。

アラブの国に対して有害な報道をしているとされるアルジャジーラの放送を辞めさせたいという意図がサウジアラビアにあるのです。

 

 

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ドイツに生まれた新たな壁

 

ドイツの首都ベルリン、街中にある世界一有名な壁”ベルリンの壁”。歴史を伝えるために今も残っている。ベルリンの壁は1989年、東西ドイツの統一によって崩壊した歴史的な壁である。その壁は人気観光スポットとなっており、年間100万人が訪れている。

 

しかし現在、ドイツでは新たな壁が誕生していた。その壁はドイツ第三の都市、ミュンヘンにあった。その壁には

WALLS CREATE STRANGERS(壁はよそ者をつくりだす)

と書かれている。

 

この壁の向こう側には難民収容施設があり、2017年10月からオープン予定となっている。ドイツは、2015年以降、110万人の難民を受け入れており世界から賞賛されている。

しかし、2016年12月のベルリン テロ事件に代表されるように、難民を受け入れたことによる事件が相次いだことから、批判の声があがるようになった。

 

こうしたこともあって、壁はミュンヘンの壁とメディアにも大きく取り上げられ、難民と住民を分離させるものだと批判された。

しかし、壁の建設に関わった周辺住民によれば、その壁は防音壁なのだという。

 

ナチス時代の学びもあり、人権問題に寛容なドイツであるが、ドイツ内でも難民に対する批判や排斥運動も生まれている。

今年行われた選挙でもアリス・ワイデル氏が率いる「ドイツのための選択肢」という極右政党が誕生し、移民・難民を排斥せよと訴え、第三党の座についたのである。こうした動きを受け、さすがのメルケル首長も難民の受け入れを年間20万人以下に抑制するなど、難民の受け入れ体制に手を打ったのである。

 

 

 

BREXITでより緊迫する?イギリス北アイルランドの壁

 

イギリス領北アイルランド。人口は180万人。その首都ベルファストには1,800年代の歴史的建物が残る。そこには1969年にイギリス政府が建設をはじめた”平和の壁”という壁が存在する。ベルファストにはこうした平和の壁が街中に点在している。

 

ベルファスト 平和の壁
ベルファスト 平和の壁

 

この壁を境にして、反イギリス住民が住んでいるのだという。反イギリス住民は、北アイルランドはアイルランドと一緒になるべきだという主張を行っている。すなわち、この平和の壁は、反イギリス住民と親イギリス住民を隔てる壁となっているのである。

 

1960年代に激化した北アイルランド紛争。イギリス領、北アイルランドの帰属を巡って住民が対立した紛争である。反イギリス武装組織「IRA」と警察が衝突し、死者は3,500人にものぼった。そして1998年、和平合意が結ばれ、IRAが闘争集結を宣言した。

しかし、今でもIRAを支持する人々が多く住んでいる。

 

イギリス政府は2023年末までに全ての壁を撤去することを目標としているが、撤去はほとんど進んでいないのだという。イギリスがEUに入っている間は、北アイルランドとアイルランドを自由に行き来できていたが、BREXITが起きてしまうと、北アイルランドとアイルランドに国境という壁ができてしまうため、BREXITが更なるきっかけとなって、この内紛が激化するのではないかという懸念も持たれている。

 

 

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