こんにちは。ひとりで.comです。
2017年10月31日放送のガイアの夜明けは「立ち向かう!物流”危機”」と題して長時間労働が常態化している物流会社で行われているさまざまな工夫について特集します。
「獲れたてサンマ」「朝採れとうもろこし」−−。スーパーで客の目を惹きつける、”鮮度”をアピールする売り文句。少しでも新鮮な商品を求める消費者のニーズに応えるため、各社は商品調達で激しく競い合っている。
それを裏で支えているのは、商品を産地からスーパーまで運ぶ、トラック運転手の存在だ。しかしその現場には、真夜中に長い距離を走ったり、労働が長時間に及ぶ、という問題が…。過酷な労働環境から、トラック運転手になる若手の数は減りつつあるという。
運転手の高齢化も進み、物流業界は「危機」に直面しているのだ。 実はいま、そうした労働環境を改善し、日本の物流を維持しようと各地で運送会社の挑戦が始まっていた…。
消費者の”便利”と、それを支える現場の”働き方改革”は両立するのか。「鮮度」や「日本経済」を支える舞台裏を取材し、そのあり方について考える。
立ち向かう!物流危機
深刻化する運送業界におけるドライバー問題
神奈川県横浜市にあるスーパー、ビッグヨーサン横浜都筑店。全国各地から届いた鮮魚が並べられており、このお店の目玉となっている。
スーパーのサンマが水揚げされたのが北海道の花咲港。ここからトラックいっぱいにサンマを積み込み、築地まで車で1,400kmを走って輸送する。到着が遅れるとセリに間に合わず、次の日のセリに回されてしまう。そうするとセリの値段が下がり、その値下がり分を延着料を取られてしまう。
出発から32時間の長旅である。全国から欲しいものが届く背景にはこうした長時間に渡りモノを運ぶ物流に支えられているのです。
政府がすすめる働き方改革実現会議でもこうした長時間労働への是正が目玉のひとつとなっている。政府は、そのひとつの方針として残業時間の上限規制を打ち出していた。
しかし、人手不足に悩む運輸業界は、それを猶予されることとなった。負担を強いられるのは現場のドライバーたちである。そこに破綻の危機が迫っていたのである。
生活が便利になる昨今、荷物を運ぶ物量が大幅に増えている。一方で、運ぶトラックドライバーの数は、1995年をピークに減少しており、今は30年前と同水準となっている。すなわち、ドライバーひとりあたりが運ぶ量が増えたということを表します。
トラックドライバーの一月の労働時間は約239時間から273時間と言われている。一般的な労働時間が174時間と言われており、1.5倍以上の水準となっているのである。
ドライバーの長時間労働への挑戦!フジネット
北海道石狩市のフジネットという運輸会社。従業員91人の中小企業である。野菜の出荷がピークを迎える夏は1年でもっとも多忙な時期となる。レタスやトマトなど北海道の新鮮な野菜を運ぶ。この企業のドライバー管理を行う川尻さんはいま大きな悩みを抱えている。
それがドライバー不足である。10年前は58人いたが、いまは40人にまで減少しているのである。国が定めるドライバーの拘束時間は原則13時間。しかし、フジネットの勤務表を見ると、15時間を超えているケースが多く存在する。こうした状況がドライバー不足に更に拍車をかけているのである。
川尻さんが特に気にかけている社員が、高山元気さん(33歳)。長時間労働が目立つ社員のひとりである。高山さんが家族と食事できるのは、週に1度のみ。高山さん自身ももっと労働時間を減らしたいと考えている。
今回、国土交通省のプロジェクトなどにも関わる物流の専門家、大島弘明さんは長時間労働の改善策を実験しようとフジネットにやってきたのである。川尻さんは国の力を借りて長時間労働を是正したいと考えたのである。
まず大島弘明さんが目をつけたのが、パレットである。パレットとは、荷物を運ぶ際に使う荷台のことである。まず荷主の倉庫にてパレットごとトラックに積み込む。しかし、パレット自体は荷主のものであるため、パレットからダンボールをおろし、トラックに積み重ねていく。
一方、届け先では再びパレットに荷物を積み込まなければならない。これが長時間労働の一員になっていたのである。およそ11トンの荷物の積み替え作業にかかっていたのは2時間13分。この積み替えがなければ、仕事はもっと早く終わるはずなのである。
この1ヶ月後、パレットを積み込んだまま配送を行う実験がなされた。今回、4トンの荷物の積み込みにかかった時間は14分。手作業での作業時間と比較して1/4になった計算となる。
この実験をもって、パレットを自分たちで保持し、それを活用して配送を行おうと考えていた。パレットのレンタルは1枚あたり1日15円。1ヶ月でも450円ほどである。
高齢化がすすむドライバーに挑むトーエイ物流
埼玉県加須市の物流倉庫。ドライバー歴18年の樋口紘平さん(38歳)。樋口紘平さんが勤めるのは埼玉県久喜市に本社を置くトーエイ物流という運送会社。
悩みのタネはドライバーの高齢化である。全国のドライバーの40歳以上の割合は2003年54%だったのに対して、2016年は72%にまであがっていた。
トーエイ物流では、ドライバーの若返りを目指し、ある取り組みをスタートしていた。それが、高校卒業後の若手の採用である。運送業の場合、運転技術が必要な業務となるため、運転免許証を取り立ての若手の積極的な採用は行わないのが通例である。しかし、トーエイ物流では、若手の積極的な採用と、それに併せた研修メニューを用意することでドライバーの若返りを目指していた。
研修メニューはベテランドライバーが作ったもので、車体の大きさの理解や雨の日の運転で気をつけるべき点、さらには、挨拶や礼儀といったコミュニケーションに至るまで指導メニューに組み込んでいる。
入社初年度は165,000円と高卒と同基準だが、研修が終わる次年度からは20万円台になる予定であるという。2年目から大卒基準より多くなる計算である。
その時点では赤字だが、将来の投資として考えているのだという。
さらに、新入社員のために新車のトラックを用意。今年から道交法が改正され、準中型という区分が新設された。これまで18歳は普通免許しか取ることができなかったが、この準中型免許を取得することによって、18歳でも7.5トンの車まで運転できるようになる。
トーエイ物流が若手を積極採用する理由がここにあった。
欲しい時に欲しいものが手に入る。その暮らしは、物流会社で働くドライバーによって支えられている。しかしいま、その労働環境が改善されなければいずれ我々の生活にも影響が出てくるでしょう。荷物の運賃を値上げする動きがあるなか、どうすれば働くドライバーの環境を改善できるのか、物流業界のさらなる工夫に期待したいと思います。