こんにちは。ひとりで.comです。
2017年10月24日放送のガイアの夜明けは「”鮮度”が命!驚きの技術」と題してエバートロンのドクターフライ、ハジー技研の真空ハジーパックを紹介する。
食文化は技術革新と共に発展してきた。
冷蔵・冷凍技術の進歩で食品の長期保存や長距離輸送が可能となり、電子レンジの登場で冷凍・レトルト食品が手軽に楽しめるようになった。現在もIH・スチーム・圧力調理など様々な技術が研究され、家電や業務用調理器に活用されている。
そんな中、これまでとは違うアプローチや独自の技術で食の発展に挑もうとする企業があった。
“鮮度”が命!驚きの技術
電波を流すと鮮度が長持ちするドクターフライ
東京都恵比寿駅から徒歩3分ほどの場所にある喜久や。店内は立ち飲みてんぷらというスタイルの人気のお店。人気なのは、スタイルに加えて変わったメニュー。例えば出汁をしっかり染み込ませた大根に薄い衣をつけた天ぷらやトマトとモッツァレラチーズのカプレーゼのてんぷら、うにの天ぷらなどである。
本来、こうした水分が多い食材は、揚げる際に水分が抜けてしまうため、天ぷらにはむいていない。この店がこうした素材を天ぷらにできるのがこの店が取り入れている天ぷら用の機材「ドクターフライ」のおかげである。
※ドクターフライに関しては2017年5月にがっちりマンデーにて紹介されています。
このドクターフライという揚げ物機材はエバートロンという企業が開発した。社長の田中久雄さんは、長年、電波を使って水や油の成分を変化させるという研究をしてきた。
通常熱した油に食材を入れると中の水分が瞬間的に膨張して破裂し、油が食材の中に浸透してしまう。そのため、油っぽい揚げ物になってしまう。
一方、ドクターフライを使って電波の振動を加えると水の分子が振動によって細かくなり大きな破裂を起こさなくなる。そのため、水分を保ったままカリッと揚げることができる。
また、他の食材と一緒に揚げても臭いや味がうつりにくくなるのである。
ドクターフライを販売してから2年、飲食チェーンやレストランなどから注文が入り、今では全国1,200店舗で利用されている。実は田中久雄社長はこの技術を使って次なる製品の開発をすすめていた。
それが、The Keeper(ザ・キーパー)という業務用冷蔵庫である。ドクターフライと同様に、冷蔵庫内で電波を発生させる機械を設置することで、食材から水分が逃げないようにし、鮮度を保つことができるようになるのである。
築地の新鮮な魚を鮮度を保ってアメリカに届ける
築地の大手仲卸の堺周商店では、アメリカ・サンフランシスコなどに魚を輸出し始めたが、到着するまでに見過ごせない劣化が生じているという。これをThe Keeperの仕組みで解決できないかと相談を受けていたのである。
実際に劣化が早い魚で試してみたところ、その違いは歴然。しかし、The Keeperは特別な電源が必要な上、業務用冷蔵庫も大きいため、飛行機での輸送には向かない。ここをどう解決していくのか。
その1ヶ月後、エバートロンでは、ドクターフライの機材の小型化に挑戦していた。結果的に大きさはこれまでの1/5にまで小型化でき、魚を運ぶ発泡スチロールの内側にアルミホイルを貼ることで電気が流れやすいように改良した。
輸送後、ドクターフライの機材の部分を回収して再利用したいと考えているものの、堺周商店は現地での輸送は現地の業者にお願いしているため、紛失してしまう可能性が高いという。
この回収問題を解決しようと、エバートロン の田中社長は鮮度の専門家である三重大学の亀岡孝治教授のもとを訪れた。
亀岡教授は状況を聞き、目からウロコの提案をしてきたのである。
ドクターフライは電源を入れて30分後は、その後電源を切ってもその効果が持続することがわかっていた。もし、この効果が持続するのであれば、築地市場で一定時間ドクターフライを当てたのちにこれまでと同じ方法で空輸するだけで新鮮な魚を届けることができるかもしれない
というのである。
10月中旬、実際に上記の実験を行ってみることとなった。The Keeperに1時間ほど魚を保存し、それ以降はこれまでと同様の保存方法でアメリカへ輸送した。
結果は…三重大学の亀岡教授の予想通り、鮮度を保ったままアメリカに魚を届けることに成功した。
簡単に真空状態を作り、鮮度を保つ真空ハジーパック
ギンザシックスの地下に、ワインなどを販売するサンクゼールというお店がある。そこで販売していたのは飲み残したワインを保存する真空ハジーパックである。価格は500ml用が900円、1リットル用が1,200円。飛ぶように売れていた。
この真空ハジーパックを開発したのは、千葉県茂原市に本社を置くハジー技研 という企業である。創業は2001年で従業員は13名の小さな会社である。
その全てを設計しているのが社長の萩原忠さん(86歳)。萩原さんは大学卒業後、水道やガスメーターを製造する会社に就職した。そこで水や空気をコントロールする技術を学んだ。
そして、31歳の1962年、アメリカのダイナミック・エコロジー社から声がかかった。このダイナミック・エコロジー社はNASAに関連した技術を担っている会社であった。
そこで油圧の油の劣化を防止する装置を作った。この油の劣化を防止する装置はアポロ計画のロケットにも採用されたという。
転機が訪れたのは70歳のとき。この時、がんを患い、闘病中に世界の飢餓の状況を知り、自分の真空技術を世界の食糧危機に活かせないかと考えたのである。
いま、新たな開発しているのは人の背丈ほどある真空ハジーパックである。これを発注したのは、カンボジアのコショウ農園だという。
電気もろくに通っていない環境ということもあり、簡易的な麻袋に入れて売買を行っている。その為、カビが生えてしまうことがあり、その際は、安値で買い叩かれてしまうのだという。
コショウの相場は値動きが激しく、数年で7倍もの差がついてしまうこともある。もし長期保存することができれば、収入の安定にもつながるので、真空ハジーパックに期待が寄せられているのである。
サンプルで送った真空ハジーパックだったが、倉庫で保存していたところ、ネズミにかじられてしまい、破れてしまっていた。
そこでハギー技研の萩原さんは、ネズミにかじられても破れない袋を作るために佐賀県伊万里にあるIMARIという企業を訪れていた。このIMARIでは、機械などを運ぶ時に使う緩衝材を製造している。
IMARIでは、ダンボールを三重構造にし、ネズミに噛まれても平気な箱、そしてポリウレア樹脂という雨などに強い特殊な箱を用意し、外敵や天候にも負けない保存容器を開発した。
日本の中小企業が開発した独自の技術。食品の鮮度を守るだけでなく、食品の安心・安全を守ることにもつながっていた。そして世界の食糧問題や水問題にも貢献している。これから更なる大きな挑戦が待っている。