こんにちは。ひとりで.comです。
2017年11月08日放送のガイアの夜明けは「シリーズ「激変!ニッポンの消費」第1弾 百貨店はどう生きるか」。
日本の消費・流通の頂点に君臨してきた、百貨店。いま、生き残りをかけた大きな岐路に立たされている。
全国百貨店売上高(2016年度:5兆9780億円)は2年連続で前年実績を下回り、日本各地で、大型店の連続閉鎖が相次いでいる。訪日外国人による「爆買い」に頼り、売り上げを維持するものの百貨店の”花形”婦人服は不振が続く。
ファストファッションや、猛烈な勢いで拡大しているネット通販に顧客を奪われているのだ。番組では日本を代表する老舗百貨店の内部を徹底取材。時代に翻弄される百貨店は、どう生きるか?
シリーズ「激変!ニッポンの消費」第1弾 百貨店はどう生きるか
【目次】
巻き返しを図る三越伊勢丹ホールディングス
店舗売上日本一を誇る伊勢丹新宿本店。閉店後のフロアを見て回るのは八重澤清史さん。入社以来婦人服バイヤーひとすじのエースバイヤーのひとりである。婦人服の売上はここ10年でおよそ3割減少している。どうすれば売れるのか…八重澤さんは悩み続けている。
2017年5月、伊勢丹を運営する三越伊勢丹ホールディングスの決算説明会では、わずか1ヶ月前に就任した杉江社長が発表会に臨んでいた。2016年度の営業利益は他社と比較しても圧倒的にマイナス決算となってしまっていた。
三越伊勢丹 | -27.7% |
J.フロントリテイリング | -7.2% |
高島屋 | +3.1% |
旗艦店である伊勢丹新宿本店をファッションの伊勢丹として取り戻す方針を発表。いったいどのように巻き返しを図るのだろうか…
2017年7月20日、若者向けのバイヤー小野塚さんはこの日、あるVIPとの打ち合わせに臨んでいた。それが、歌手でモデルのChayさん。20代の女性に人気でそのファッションも常に注目されている存在である。
小野塚さんは、Chayさんと共同で新作の打ち合わせを行っていた。Chayさんから試作品に対するフィードバックをもらいコラボ商品を仕上げていく。アイテム数は合計20点。
新作発表会の前にInstagramを使って新商品のイベント告知もお願いしていた。直前には動画配信も行い、新作のこだわりのポイントを本人が自ら伝えていくことで、その商品の良さをアピール。
販売当日、売場はスゴイことに…。Chayさんの動画配信を見たファンが全国各地から伊勢丹新宿に来店していたのである。そしてChayさん自ら新作を来て新商品をアピール。ものすごい勢いで新商品は売れていった。
バイヤーへの権限委譲と古着のリメイク
伊勢丹のバイヤーは商品の買い付けだけではなく、販売戦略やオリジナル商品の開発も担う精鋭部隊である。いまそんなバイヤーに求められているのは、バイヤーの枠を超えた新たな役割である。
伊勢丹のバイヤーは歴史的にもパリコレのファッションショーでも最前列に招かれ有名ブランドから一目置かれていた。すなわち、バイヤーがどれだけ時代を先取りし、ファッションを提案するか…それが生命線だったのである。
三越伊勢丹ホールディングスの杉江社長も、
しっかりバイヤーに権限委譲を行い、バイヤー自身が物事を発信していく、そんな形に変化していく必要がある
と述べている。
婦人・子供服担当のバイヤーである関根千紘さんは、服の買い付けのために名古屋の古着屋に足を運んでいた。
伊勢丹に来るお客さんはどちらかというと古着とは遠い存在の人たちであるが、いま古着が注目を集めている状況だからこそ、古着(=ビンテージ)を取り入れることで、お客さんの期待に応えられるのではないか、そう考えていたのである。
上司の承諾も無事得ることができ、大阪に買い付けに向かった。向かったお店は、古着の中でも世界の珍しい少数民族の民族衣装を扱うお店。そこで、奇抜だが1点1点別のものである衣装を選び、300点の仕入れを決めた。
もう一つとっておきの秘策を考えていた。都内のとあるデザイナーの事務所で見ていたのは、アメリカやヨーロッパから仕入れた大量の古着…ここのデザイナーはこうした古着の服を組み合わせてオリジナルの古着を作るということを行っている。古着を買い付けていたが、古着のリメイクブランドとしてマリオン・ヴィンテージというブランドを立ち上げていた。
男性者のジャケットなどを2着組み合わせ、女性用のジャケットを1着作る、という方法で作っている。
2017年8月30日、古着の販売がスタートした。デザイナーにも店頭に立ってもらい、こだわりをデザイナーに伝えてもらう狙いがあった。売上目標の1.5倍を達成したことで、来年早々にもまた売り出すことが決まった。
狙い通り、若い女性の心をうまく掴めたようである。
銀座の新たな顔:銀座シックスのシジェーム ギンザ
2017年4月20日、ギンザシックスがオープン。オープン初日には約2,500人がオープンを待ち行列を作っていた。その中央ど真ん中に店舗を構えていたのが、シジェーム ギンザというセレクトショップである。シジェーム ギンザ は大丸松坂屋が運営するセレクトショップである。
売場には世界中から厳選して選んだ商品が並んでいる。ターゲットは銀座を愛する50代の女性。約9万人が訪れた初日、シジェーム ギンザの売上は731万円と売上目標を大幅に突破していた。何がシジェーム ギンザを成功に導いたのか。そこには、ある戦略が隠されていたのである。
シジェームとはフランス語で「第六の」という意味を持っており、視覚聴覚味覚触覚嗅覚に次ぐ第六感を刺激したいという想いから付けられた店名だという。
新たなラグジュアリーモール:銀座シックス
ギンザシックスの延床面積は東京ドームの6個分にもなる。立ち上げたのは、大丸百貨店と松坂屋百貨店が経営統合してできたJ.フロントリテイリングである。さらに、森ビルや住友商事、Lキャタルトン・リアルエステートが共同出資している。
6階までの商業エリアには、241ものブランドが出店しており、その他にも大型書店やレストラン、能楽堂まである。さらに上層階にはオフィスビルも完備している。
ギンザシックスはかつての松坂屋百貨店の跡地にできているのだが、これまでの百貨店の在り方を破ろうという考えから作られたのである。
その旗振り役がJ.フロントリテイリングの山本良一社長である。脱百貨店の戦略を掲げている。これから100年先を見越した場合、これまでの百貨店という形態では生き残っていけないと考え、世界に情報を発信できるラグジュアリーモールと作る、ここを目指して作ろうと考えていた。
この方向性も相まって、シジェーム ギンザの販売員もある特別な訓練を受けていたのである。
シジェーム ギンザ:新たなセレクトショップの形
シジェーム ギンザの販売員は16人。そのうち5人は外部からヘッドハンティングしてきた販売員である。外部の人材を取り入れることによって、これまでにない売場を作ろうとしていたのである。
シジェーム ギンザの売場を想定した販売のロールプレイングではアルマーニやプラダなどで、接客のマネジメントを任されてきた店舗運営コンサルタントの秋山恵倭子さんが指導に当たっていた。
例えば、
- お客さまからの第一声を必ず拾って共感を得ること
- 売りたいと強く思って接客を行うこと
などが指導されていた。
高級品を売るには贔屓の顧客を作ること、これが必要とされている。相手の印象に残る接客を徹底させる必要がある。
さらに接客だけでなく、シジェーム ギンザの売場づくりもこれまでの百貨店のやり方とは一線を画している。これまでの百貨店では、空間に商品を並べる、多く並べれば効率があがる…という思想が強かったが、高級ブティックなどでは、いかに余白を作るか、すなわち引き算のディスプレイを重視している。シジェーム ギンザでもこうしたやり方を取り入れていく方針をとっている。
ギンザシックスのシジェーム ギンザが好調を続ける中、早くも次の一手を進めていた。それが、大丸・松坂屋の旗艦店である名古屋店・心斎橋店・神戸店にもシジェーム ギンザを出店させようというのである。
しかし、大丸心斎橋店にシジェーム の出店を提案したものの、あれはギンザシックスだから成功したものなので、同じ形で成功するとは今の段階では考えられない…と否定されてしまった。
一方、表参道ヒルズの路面店でのシジェームの展開も考えており、人通りが多い路面店でシジェームのブランディングをあげ、全国展開の足がかりにできないかとも考えている。
低迷を続けてきた百貨店業界。光を見出すための挑戦が始まりました。それは私達消費者にとって魅力的な選択肢になるのか、それとも支持を得られず沈んでいくのか、百貨店の存在をかけた厳しい展開が今後も追いかけていきたい。
※百貨店に関しては、カンブリア宮殿でも特集されています。