こんにちは。ひとりで.comです。
2017年11月28日放送のガイアの夜明けは「 “陸の王者”を目指せ!」と題して日本の老舗足袋メーカーがランニングシューズを開発するその過程、大手外資系スポーツメーカーナイキが型破りのランニングシューズを開発。厚底vs薄底の戦いが行われていた。
およそ250年前の江戸時代から「足袋の街」として知られる埼玉・行田。典型的な”斜陽産業”だが、そこで足袋作りを営む創業数十年の企業は、苦悩を深めていた。
市場自体が縮小を続けるなか、どうやって生き残るのか…。何とかして老舗の伝統を守ろうと、開発したのは「マラソンシューズ」。マラソンが一般的なスポーツとして広く浸透しつつある今、足袋の技術を駆使してこれまでにない商品を生み出し、新たな市場を狙おう、というのだ。
一方、そのマラソンシューズの市場に、海外の巨大メーカーがまったく新しい発想の新商品を投入した。”足袋シューズ”に現れた、強力なライバル。果たして日本の足袋の伝統は、守ることができるのか?需要の減少や海外勢の攻勢で姿を消しつつある、日本の伝統的なものづくりとその技術。それらは消えゆく定めなのか、あるいはかつてない着想で、次の時代に受け入れられる新たな魅力を放つのか−−。
地方の老舗メーカーの挑戦を通じて、そのあり方を考える。
“陸の王者”を目指せ!
【目次】
老舗の足袋メーカーがランニングシューズを開発:きねや無敵
埼玉県行田市で行われるマラソン大会。こどもからお年寄りまで3,000人が参加した。この会場では、マラソンに絡むグッズを販売している企業も多々あった。
その中にひときわ目立つシューズを販売している企業があった。それがきねや足袋である。このきねや足袋が出展していたのが、きねや無敵というランニングシューズである。つま先が足袋のように2つにわかれており、靴を履いていないかのような感覚を持てるのが最大の特徴である。
きねや足袋は従業員40名ほどの中小企業で、今でも昔ながらの手作業で足袋を製造している。もともと埼玉県行田市は足袋の街で、かつては全国の足袋の8割をこの行田市で生産していたほどである。
しかし、かつては200社あった足袋メーカーも現在は7社にまで減少している。きねや足袋の社長は3代目の社長の中澤貴之さん。このきねや足袋の足袋は足の形にぴったりフィットするのが特徴で、狂言師の野村萬斎さんも使用しているのだという。
この足袋づくりを支えるのが、伝統的なミシンである。100年以上前のドイツで作られたミシンである。このミシンは、通常のミシンと異なり、縫い目を溝を作ることができる。この溝があることによって、ピッタリとフィットした足袋を作ることができるのである。
しかし、足袋の需要減により、売上高は右肩下がり。しかし、健康志向でランニング人工が増加しているという点に目をつけランニングシューズの開発に社運をかけたのである。
きねや足袋を使ってミッドフット走法をマスター?
2017年4月、スポーツ強豪校の熊本国府高校では、きねや無敵を使ったトレーニングを行っていた。しかし、はじめてきねや無敵を履いて行った練習で、生徒たちは違和感を訴えていた。ソールが薄いため、地面からの衝撃がダイレクトに足の裏から腰まできてしまい、疲労や不調を訴えたのである。
しかし、陸上部のコーチ高岡尚司さんはこの違和感を事前に見越していたのだという。トレーニングを行っていた生徒たちのランニングを見ると、足のかかとから着地してつま先をつく、という走法になっていたため、一部に負担がかかり、衝撃が大きくなっていたのである。
高岡尚司さんは普段からミッドフット走法という着地の段階で足の裏全体を地面につける走法を行っており、この走り方であれば、衝撃を足の裏全体に逃がすことができるため負担が少なくなるのだという。
このミッドフット走法をマスターさせるために、きねや無敵を敢えて履かせたのである。きねや無敵を履いてトレーニングすることによって、足への負担を軽減させようと、自然とミッドフット走法を身につけられると考えていたのである。
新商品Toe-Biの開発
きねや足袋ではToe-Biという新たな商品の開発がすすめられていた。
このToe-Biの最大の特徴は、靴底と一体となった、ベルト部分である。靴底と一体となっているため、締め上げると、より裸足に近い感覚を得られるのだという。
実は高岡尚司さんは、きねや足袋と共同できねや無敵を開発した。Toe-Biでは素材の見直しも行い、より裸足に近い感覚を提供できるようになったという。
なぜ、足袋屋さんであるきねや足袋がランニングシューズを開発することができたのだろうか。実は、きねや足袋の社長の中澤貴之さん、これまで、3,000人以上の足を採寸し、足袋を販売してきた実績をもっている。人の足の形を知り尽くしているエキスパートなのである。
しかし、テスト販売が終わった後、お客様から不良品の連絡が入った。Toe-Biを見てみると、かかとの部分にほつれが発生していたのである。その要因は、伸縮性の高い素材と伸縮性の低い素材、その2つを組み合わせて縫った箇所が、靴の脱着の繰り返しによって糸がほつれてしまっていたのである。
伸縮性の低い素材同士を縫い合わせる形式に変更し、改良を加え、ほつれがないようになった。
ナイキが型破りの厚底シューズを開発:ヴェイパーフライ
モハメド・ファラーというイギリス代表のマラソン選手。これまでにオリンピックで4つの金メダルを獲得している。このモハメド・ファラー選手がマラソンに使っているシューズが超厚底のナイキのシューズ、ヴェイパーフライ4%というシューズである。
このヴェイパーフライは世界のトップアスリートの意見を取り入れて開発されたシューズである。さまざまな試験を経て、およそ3年の月日で完成した。
ナイキは、このヴェイパーフライを履いて世界記録超えを目指すマラソンイベントを開催した。特別な環境でのマラソンだったため、正式記録としては認められなかったが、世界記録寄りにも2分以上早い記録を打ち出すことに成功した。
アメリカオレゴン州にナイキの本社がある。ヴェイパーフライもここで開発されたものである。
ナイキが誕生したのはおよそ50年前。共同創業者は、フィル・ナイト氏である。大学で陸上競技を行っていた選手とそのコーチによって誕生した。その後、焼き菓子のワッフルを作る機械をヒントにオリジナルの靴底を開発。このワッフルソールと呼ばれる靴底が爆発的にヒットし、今では世界トッププランドに君臨している。
ナイキのヴェイパーフライの開発責任者によれば、
どの走り方が正しい走り方である、というものはない。つま先から足を着地するフォアフット、足の裏全体で着地するミッドフット、かかとから着地する方法とさまざまあるが、いろんなランナーに試してもらい、どのランナーでも速く走ることができる
のだという。
その秘密はシューズの中にあった。靴底の中にカーボンの板が入っているのである。このカーボンがあることによって、着地してから前に蹴り出す際に前に押し出してくれるのである。
厚底とカーボンで疲れにくいというだけでなく、速く走れるというナイキの技術。実はマラソンシューズはいま薄底が業界の常識で、厚底というのは型破りなのである。
需要の減少や、外国産の安いコストを受け、日本の伝統的なものづくりとその技術は姿を消しつつある。しかし過去の実績や歴史にとらわれること無く新たな分野を切り開いていけば生き残りの可能性が見えてくることがわかった。
日本のものづくりに必要なのは果敢なチャレンジ精神なのではないでしょうか?