こんにちは。ひとりで.comです。
2018年1月28日放送の知られざるガリバー〜消費者の知らないエクセレントカンパニー〜は「ユニオンツール株式会社」の特集。
あらゆる電子機器の心臓部である電子回路基板を製造する時に必要な微細な穴を開けるための「PCBドリル」。そのPCBドリルをつくるトップメーカー、ユニオンツール株式会社。 完璧な精度が求められるドリルを可能にした技術こそ、ユニオンツールの真骨頂。独自の製品開発と新たな市場開拓の現場に迫る!
PCBドリルのユニオンツール株式会社
【目次】
髪の毛よりにも細いPCBドリル
スマートフォンやパソコンなど、いまや私達の生活に欠かせないデジタルツール。そんなデジタルツールの製造で必ず使用するのがPCBドリルである。
PCBとはPrinted Circuit Boardの略で電子機器の心臓部である電子回路基板を表す。これらの基盤には部品同士をつなぐため、数千個以上の穴が空けられている。この微細な穴を開けるために用いられるのが、ユニオンツールが製造するPCBドリルである。
そのPCBドリルの直径はなんと0.05mm。その細さは髪の毛1本分よりも細い。そんなPCBドリルでユニオンツールは年商207億を誇る。世界シェアは30%、国内シェアは90%以上と圧倒的なシェアを誇る。
ユニオンツールの自社開発力
ユニオンツールは従業員約1,400名、国内8ヶ所、海外8ヶ所に拠点を持つ。ユニオンツールは1998年に東証一部に上場、現在は2代目会長の片山貴雄さんが率いている。
電子基板には、様々な部品を配置する必要あり、パソコンのマザーボードには、1枚あたり数千から1万以上の穴が空いている。その穴を開けるためのドリルがユニオンツールが開発したPCBドリルである。
市場を席巻している理由は高い製品開発力にあるという。
この細いドリルを可能にしているのが超硬合金(=タングステンカーバイド)である。このタングステンカーバイドは低コストでダイヤモンドに次ぐ硬さを持つと言われている。
通常、この細さのドリルで穴を開けようとすると、切り屑が穴に詰まってしまい、先端が欠けてしまう。しかしDLC(=Diamond Like Carbon)という厚さ0.001mm程度の特殊なカーボン膜で覆うことにより低摩擦性・低摩耗性を飛躍的に高めている。
この加工によって、ドリルの耐久性も5倍アップするのだという。
この高度なコーティング技術はほぼ全てユニオンツールの自社開発で行っている。
自社開発を行い続けてきたことが競合他社と比較しての強み
創業者である片山一郎さんは、元海軍エンジニアで戦後歯科用のドリルを開発しており、ドリルメーカーとして事業を拡大していた。転機は大手PCメーカーから依頼が来たことにあったという。
当時、国内にも海外にもそのような局所用ドリルの生産設備はなかった。そこで自分たちで生産設備を作り出した。これがユニオンツールの大きな強みになっているという。
さらに、その後PCなどの機械の拡大や、半導体を基盤の上にのせるパッケージ基板が誕生したことにより、小さな穴をあける機械の需要が高まった。これによって、ドリルの需要と小型化が爆発的に進んでいくこととなった。
こうして、PCBドリルの生産本数は、1990年代に月に100万本ほどだったが、現在では3,000万本にも拡大した。
創業当初からの取引先から難題
この日訪れたのは、高い掘削技術を持つ相模ピーシーアイ株式会社 。ユニオンツール創業当初から取引を行っているメーカーである。
顧客からの要望としては、生産効率をあげるために、基盤への穴あけを基盤を重ねた状態で行いたいというものだった。しかし、重ねにより厚みが増すほど穴位置がずれやすくなってしまうという課題を抱えていた。
この課題に対して、着目したのは加工する速度だった。実験を重ねた結果、加工速度を20%下げることによって穴位置のずれを改善できることを突き止めた。
これを相模ピーシーアイ株式会社の担当者に提案。結果的にはこの提案で受け入れてもらうことができたのである。
新たな市場開拓に超硬合金エンドミルを新開発
ユニオンツールが今後の主力製品になりうると考えているのが、エンドミルである。縦方向に穴を開けるだけでなく横方向にもものを削ることができるという特徴を持っている。
自動車部品の金型製造に使われるなど、近年著しく市場が拡大している分野である。
将来、このエンドミルを活用して超硬合金の金型を作ることを目指している。これができるようになると金型の寿命が数十倍に伸びると期待されており、大きな市場開拓につながると考えている。