こんにちは。ひとりで.comです。
2018年2月27日放送のガイアの夜明けは「下町ボブスレーの”真実”」と題して話題となった平昌オリンピックのジャマイカ代表が突如として採用を見送った下町ボブスレーの真実を特集します。
“氷上のF1″ともいわれるボブスレー。そのソリの開発には、フェラーリ、BMWなど、世界の名だたるメーカーも参戦。巨額の資金を投じ、しのぎを削っている。
そこに、ニッポンの町工場が技術を結集して挑む「下町ボブスレー」。
2014年のソチでは日本代表に採用されなかったものの、その後、ジャマイカ代表とともに2018年平昌オリンピックを目指すことに。
しかし、開幕を目前に控え、事態は急変する。ジャマイカ代表が、「下町のソリを平昌オリンピックで使用しない」と通告してきたのだ。4年越しの夢は、実現目前でまさかの結末に…そこに至るまでに、一体何があったのか?
10カ月にわたる独占密着から見えてきた、”知られざる真実”とは?
下町ボブスレーの”真実”
【目次】
大田区の町工場の技術を世界に…結成された下町ボブスレーチーム
2月21日の平昌オリンピックでのボブスレージャマイカ女子チーム。そこで話題になっていたのが”下町ボブスレー”である。
下町ボブスレー細貝さん「わだかまりはもうない。水に流した」 迷惑かけた側が寛大ぶってるんだが、日本の恥の文化は死んだな [389326466] https://t.co/vdg6aSP6E3
— 日本まとめ速報 (@nippon_matome) 2018年2月21日
下町ボブスレーのプロジェクトは2011年にスタートした。そして、2012年には試作機第一号が完成。しかし、2013年のソチ・オリンピックでは採用されなかった。リベンジに挑んだが、2015年の平昌オリンピックでも不採用となってしまった。
しかし、2016年にジャマイカ代表が下町ボブスレーの採用を決定し、共に平昌オリンピックを目指すことになった。だが、オリンピックの開幕直前にジャマイカ代表から下町ボブスレーを使わないと通告があったのだという。いったいそこでは何が起こっていたのか。
ものづくりの町大田区の下請け企業としてのアピール
東京大田区はものづくりの町として、多くの町工場が点在している。その1社であるマテリアル社という企業は航空機や衛星通信機器に使われるアルミ部品の加工を得意としている。100分の1ミリの細さのアルミを開発することができ、その技術力は世界トップレベルだという。
しかし、こうした町工場は、顧客との守秘義務があるため、何の部品を作っているのかを外部に公表することができない。
なんとか町工場の力をアピールしたいと考えたのが、下町ボブスレー構想である。
そして2011年、仲間に呼びかけて結成されたのが下町ボブスレーネットワークプロジェクト推進委員会である。町工場からの部品提供は無償で行う必要がある。しかし、100社以上が集まったのだという。
ボブスレーのブレーキハンドルを承ったのが筑波鉄工という企業である。
大田区の町工場は1983年には9,177軒あったが、年々減り続けており、2014年には3,481軒となっている。こうした中、ボブスレー作りは町工場の人たちにとっての希望だったのである。
各工場から集められた部品は全部で200点にも及んだ。大田区の職人たちの結晶である。
2017年10月27日、平昌ではオリンピック選手が本番と同じコースで練習を行うとあって、多くのオリンピック選手が集結していた。この時点でのテスト走行ではジャマイカの選手は下町ボブスレーに手応えを感じていた様子だった。
ワールドカップで好成績を残すも不審なソリ変更
2017年11月の北米大会では2位の記録も叩き出す好成績を収めた。しかし、次のドイツ大会、ジャマイカ選手は下町ボブスレーではなく、他のメーカーのボブスレーにのって大会に出場していた。なんと、運送会社のトラブルで大会会場に届かなかったのである。そこでジャマイカ選手はラトビアのBTC社のソリをレンタルして出場した。結果は23チーム中7位だった。
その後、ジャマイカのボブスレー連盟の会長が、
下町ボブスレーは遅いとジャスミンが不満を漏らしているため、引き続き、BTC社のボブスレーを使いたい
と言ってきたのである。
しかし、急遽レンタルで使ったBTC社のソリには、急遽にも関わらずジャマイカのステッカーがしっかり貼られていた。
もしかしたら、もっと前からBTC社のソリを使うことが決まっていたのではないかと疑問が持たれる。
ボブスレーではコーチが使用するソリを決める?
2017年12月に行われたワールドカップの第5戦、下町ボブスレーのチームメンバーは、現地でジャマイカの選手に直接”下町ボブスレーを使わない理由”についてヒアリングをしようとしていた。すると、
BTC社のボブスレーは振動が少ない。下町ボブスレーは最高速度は早いかもしれないが、そこから少しずつスピードが落ちてしまう。BTC社のボブスレーは操縦ミスをしても速度があまり変わらない
のだという。
そこで話に割って入ってきたのが、ボブスレー会のレジェンドである元ドイツ代表のサンドラ選手であった。サンドラ選手は、
あなたはソリに乗ったこともない。そんな人がソリの事がわかるはずがない。ソリの事は選手ではなくメカニックに聞いてくれ
と言い放ったのである。
実はサンドラ選手、12月からジャマイカ代表のコーチに就任していた。
振り返ると、ソリをBTC社のものに乗り換えたのが12月でサンドラ選手がジャマイカのコーチに就任した以降だったのである。
そして、サンドラコーチはBTC社のソリの開発に関わっていたという事実もわかったのである。ボブスレーの世界ではコーチがソリを決めるというのはよくあることなのだという。
元オーストリア代表のハネス・コンティさんに下町ボブスレーに乗ってもらい、その感想を聞いてみると
下町ボブスレーは小回りがきくのでカーブではインコースを滑ることができる。ただ、ハンドルが敏感なので操縦をあやまると危ないかもしれない。それだけハイテクなソリだということだ。振動?そんなに気にならないね。
そのアドバイスを受け、部品の改良を重ねた。
極秘の走行テストの結果
下町ボブスレー、町工場側がネットでは散々に叩かれていたが、
ジャマイカ側が採用しなかった真相の詳細は一切分からなかったからな。結局、サンドラ・キリアシスが黒幕って事だったか…#ガイアの夜明け #下町ボブスレー#Jamaica #BTC pic.twitter.com/pKfngP6OZ6
— バスロマン2世 (@Kaworu_AIC) 2018年2月27日
2018年1月、ドイツの会場で下町ボブスレーとBTC社のソリの走行テストが行われた。走行テストの1日目、製氷がなされていないコースでテストされた下町ボブスレーと2日目の製氷された状態でテストされたBTC社のソリ。
結果は2秒以上、BTC社のソリが早い結果となった。条件が異なる状況で行われたテストの比較をもって、これ以降、下町ボブスレーが採用されることはなかったのだという。
しかし、取材をすすめていくうちに、ある極秘テストのデータを入手。そのデータによると、ジャマイカ代表コーチのサンドラがBTC社とシェアトップを争うオーストリアのワルナー社と下町ボブスレーのタイム比較を行っていたのである。
助走なしで比較したものだが、その結果は
ワルナー社 | 55.65秒 |
下町ボブスレー | 55.21秒 |
だった。しかし、ジャマイカ側はその結果を公表しなかった。
2017年2月5日、ジャマイカ連盟から「オリンピックで下町ボブスレーのソリを使用しない」と連絡があった。ジャマイカ連盟の主張は
- 下町ボブスレーのソリがBTC社よりも2秒遅い
- 機体検査に合格しない可能性がある
という2点だった。
ジャマイカ代表:サンドラコーチの突然の辞任?
2018年2月7日、平昌オリンピックが開幕した。しかし、その数日後、ボブスレー競技の開幕直前に大きなニュースが飛び込んできた。
それが、ジャマイカ代表のサンドラコーチの辞任である。その理由は明らかになっていないという。
オリンピック出場の夢を直前で絶たれた下町ボブスレー。今回の一件をめぐってはさまざまな意見が飛び交いましたがガイアの夜明けが重ねてきた取材の中でわかったのは、下町ボブスレーのソリに対して公正な評価がなされていなかったのではないか、ということである。
町工場の技術はほんとうに世界に通用しなかったのだろうか。ものづくり日本の技術のためにも改めて検証が必要なのかもしれません。