[ガイアの夜明け] どうする?ローカル鉄道 – 2018年5月1日 –

ガイアの夜明け
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こんにちは。ひとりで.comです。

2018年5月1日放送のガイアの夜明けは「どうする?ローカル鉄道」と題して人口減少によって増える赤字路線。廃線されていく住民の足をどのように解決するのか、各地域のローカル線の奮闘を特集します。

 

国鉄が分割民営化し、JR7社が発足して昨年で30年。各社が頭を痛めるのが地方の赤字路線の存在だ。100円の利益をあげるのに1000円を超える費用がかかる”超赤字路線”も少なくないという。

地域の”足”を何とか守ろうと運行を続けてきたJR各社だが、「廃線」という苦渋の決断を下すケースも増えている。JR西日本では、広島と島根を結ぶ「三江線(さんこうせん)」が、今年3月31日、88年の歴史に幕を閉じた。100キロを超す長距離線区の廃止は本州では初めてのこと。

果たして、廃線後の地域交通はどうなるのか? 一方、資金力のない民間や第三セクターの鉄道会社はさらに深刻だ。利用者の減少で収益が減り続ける中、経営改善の方策を見出せないままでいる。

そんな中、昨年秋、福岡の三セク鉄道「平成筑豊鉄道」が起死回生の一手に出た。社長を公募し、民間から起用しようというのだ。選ばれたのは、大分県庁出身で九州のバス会社の経営に携わった経験もある男性。崖っぷちの鉄道会社を救うことはできるのか?

 

どうする?ローカル鉄道

 

 

廃線が決まったJR三江線

JR三江線
JR三江線

1960年代以降、自動車の普及とともに道路の整備が進み、ローカル地域における鉄道の利用者が激減し、廃線となる鉄道が増えている。この50年で廃線になった鉄道路線の総距離は約4,500km。これは、東京博多間を2往復する長さである。一方で、廃線がすすむと過疎化がさらにすすむという新たな問題も起こっている。

 

島根県邑南町。人口100人あまりの集落に1万人もの人が訪れていた。JR西日本が運行するJR三江線。2018年4月1日に廃線が決定していた。

広島県三次市と島根県江津市を結ぶJR三江線。その間には豊かな自然が溢れていた。そうした魅力もあって、廃線が決まると観光客が溢れかえっていた。

 

JR三江線が誕生したのは今から88年前の1930年。当初は10kmあまりの路線だったが1975年にようやく全線が開通し100kmを越す路線となった。しかし、全線開通後は利用客が激減していき、1日の平均乗客人数はほとんどの駅で10人以下となってしまった。しかも8つの駅でゼロという駅もあった。

しかし、廃線となると生活の足としていた周辺住民への影響は大きい。

 

島根県美郷町の職員である石田圭司さんは廃線後の移動手段について検討を重ねていた。JR三江線沿線では実はバスも運行していた。しかし、それぞれの自治体が個別に運行していたため、乗り継ぎの悪さが問題となっていた。

石田圭司さんが計画していたのが、「フリー乗降区間」の導入である。区間内であればどこでも乗り降りが可能となり、バス停の必要がなくなるのである。交通の妨げになるため、どこでもこのフリー乗降区間が可能というわけではないが、警察と交渉を重ね一定区間での導入が可能となった。

 

美郷町の住民に、JR三江線の廃線に伴うバスの運行について説明を行ったが、どうしても課題となっているのが、その運賃である。区間によっては、700円以上鉄道よりも運賃があがってしまう区間も出てしまっていたのである。

 

結局、住民には特別割引を適用したり、JR西日本からの支援金によってバスを新調したりすることによって、廃線によるバスの本数増大とフリー乗降区間の実現を果たした。

 

 

 

年間500億以上の営業赤字。廃線を迫られるJR北海道

JR北海道
JR北海道

こうした廃線に特に揺れているのが北海道である。新ひだか町の町長も大きな不安を抱えていた。3年前に発生した高波の影響によりJR日高線は一部区間で運休が続いていた。そのJR日高線をそのまま廃線にさせてほしいとJR北海道から最後通告が来たのである。

実は、JR北海道は経営難を理由に運行する約2,500キロのうち半分にあたる1,237キロについて廃線を検討しているというのである。JR北海道の鉄道事業における年間の営業赤字額は約534億円にもなっており、採算がとれる路線はひとつもないという。

さらに鉄道の補修や除雪にかかる費用もかなり経営を圧迫していたのである。

 

そんな中、夕張市役所の鈴木直道市長は、100年以上地元を支えてきたJR石勝線・夕張支線を自ら捨てるという選択をしたのである。鈴木市長は地域にあったインフラを新たに展開したいとJR北海道に進言し、7億5,000万円もの支援金を得ることに成功した。

 

 

 

 

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ないものねだりよりあるもの探し:わたらせ渓谷鉄道

 

群馬県桐生市と栃木県日光市を結ぶ、わたらせ渓谷鉄道。もともと足尾銅山で採掘した鉱石を運ぶための路線だったが、沿線の乗客が減る中、新たな施策を進めていた。その目玉が週末に運行しているトロッコ列車である。

トロッコ列車
トロッコ列車

 

窓がない列車では、自然を直接感じることもでき、トンネルに入ると天井がライトアップし満天の星空のような演出。そして、廃線となった線路をさながら映画のスタンドバイミーのように歩くことができるツアーを企画するなどして人気を博している。

こうした企画を推し進めているのがわたらせ渓谷鉄道の社長である樺澤豊さんである。樺澤豊さんは、

”ないものねだり”より”あるもの探し”

として、より魅力的な鉄道づくりを行っている。

 

このわたらせ渓谷鉄道は第三セクター鉄道と呼ばれる。

第三セクター鉄道は、自治体と民間企業が一体となって運営を行っている鉄道で、もともと国鉄で採算がとれなかったため手放したものが多く、その為経営難に苦しんでいる鉄道も少なくない。そんな中、集客をうまく行っている例もある。

例えば、山形鉄道では”ローカル線プロレス”といったイベントを行い、今ではそのチケットは抽選となるほどの人気となっている。さらに、肥薩おれんじ鉄道では、地元出身の坂井シェフのコース料理を提供し、利用者が5万人を突破したという。

 

ローカル線プロレス
ローカル線プロレス

 

 

 

 

 

観光列車に生まれ変わらせる!第三セクター鉄道の平成筑豊鉄道

平成筑豊鉄道
平成筑豊鉄道

福岡県になる平成筑豊鉄道はそうした第三セクター鉄道のひとつである。もともとは石炭を輸送していた鉄道である。博多から1時間の場所にある鉄道で、そこからおよそ50kmにわたって線が伸びている。

 

平成筑豊鉄道の赤字からの脱却に選ばれた新たな社長が河合賢一さんである。88人の社長候補から選出された。

 

河合賢一さんは小さい頃から鉄道会社で働くのが夢だったという。東京大学を中退後、大分県庁の職員として入庁。その後、熊本の九州産交バスの取締役をつとめていたが、今回平成筑豊鉄道の社長に応募したのである。

 

平成筑豊鉄道で乗降客が少ない新豊津駅。近くに中高一貫校があり、生徒の1割にあたる100人程度が利用しているのだが、最近は車など別の交通手段を使う生徒が増えていた。そこで、生徒にその理由を聞くと、殺風景である、汚い、といった意見が出てきた。

実は、人員不足と財政難から、清掃や修理などが駅に行き着いておらず、夜にはさながらお化け屋敷のようになっていたのである。

 

河合賢一さんは、この新豊津駅の新デザインをある人に依頼した。それが水戸岡鋭治さんである。水戸岡鋭治さんはJR九州のななつ星のデザインを手がけるなど、鉄道のデザインの第一人者である。

実は河合賢一さんが昔、水戸岡鋭治さんの事務所で働きたいと手紙を送ってから16年の付き合いなのだという。そういったつながりもあって今回水戸岡鋭治さんは無償でデザインを受けてくれるのだという。

 

新豊津駅の新たにできたデザイン。地元の学生にもその補修を手伝ってもらい愛着を持ってもらおうとしていた。新たなデザインでは、自然との調和を考え全体を山吹色とし、駅舎には生徒の絵を飾るための額縁も用意されていた。

 

 

日本各地を走るローカル線。人口が減り、乗る人が少なくなったから廃線にする。財政的に見れば当然の決断とも言える。一方で沿線住民の足をいかに確保するかという課題もあることがわかった。これから人口減少がすすみ、こうした廃線が増えていくと見込まれるが、それぞれの地域にあった解決策をどう見いだしていくかが求められているのではないだろうか。

 

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