こんにちは。ひとりで.comです。
2018年5月15日放送のガイアの夜明けは「コーヒー 新サバイバル!」と題して
国内最大のコーヒーチェーン、スターバックス。日本に上陸して22年目となるいま、全国に1300以上店舗を構え、直近1年間の売り上げはおよそ1700億円と圧倒的な存在感を誇る。盤石とも思える展開だが、ある”不安”が…。
“王者”が、自らを変えるために、これまでにない新商品を開発しようと動き出していた。
コンビニコーヒーの拡大などで、日本のコーヒー消費量は2016年まで4年連続で過去最高を更新。およそ2兆9000億円にまで膨らんだ巨大市場をめぐり、様々な企業が攻勢を強めていた…。
スターバックスの知られざる商品開発現場のほか、一般消費者へ新たな商品を浸透させようとする企業の”幻の豆”調達への挑戦を通して、私たちの身近な商品となったコーヒーを巡る戦いの舞台裏に迫る。
コーヒー 新サバイバル!
歳を追う毎に顧客が離れていくスターバックス?
全国におよそ1,340店(2018年3月現在)を展開するスターバックスコーヒージャパン。
若者であふれかえる原宿のお店をはじめ、フラペチーノという牛乳やコーヒーなどに氷を合わせた飲み物が人気となっている。ダークモカチップフラペチーノや抹茶フレペチーノなどさまざまなバリエーションがある。
特に10代を中心に人気が高く、スターバックスへのエントリー商品として非常に重要な商品となっている。しかし、歳を追う毎にその甘さゆえ、通う頻度が下がってくる…ということも内部資料から明らかになってきている。
さらに、近年コンビニなどで登場しているコーヒーなどの選択肢も出てきており、過酷な競争が起きている。
スターバックスコーヒーはアメリカのシアトルを発祥とするが、今ではその店舗数で日本ではトップの座となっている。1996年に日本1号店がオープンし、日本のカフェブームの火付け役となった。
都内にあるスターバックスコーヒージャパン本社の小さな一室、限られた社員しか入室できない通称“テスト・キッチン”では、東治輝さん(34歳)が大きなプロジェクトを任されていた。それが、30代以降の大人に向けたフラペチーノ商品『大人フラペチーノ』である。
東治輝さんは2年前に大手国内菓子メーカーから転職してきた“元パティシエ”という異色の経歴の持ち主である。
東治輝さんが商品開発のアイデアを求めて赴いたのは、イタリア・ミラノ。実はスターバックスは、ミラノのカフェ文化を目指してアメリカで生まれた会社。大切なプロジェクトのアイデアを、“原点”に求めたのである。
試作品の完成と大人フラペチーノの販売
ミラノから帰国した東治輝さんは早速試作品の開発に取り掛かった。スターバックスでは、生クリームを原料として使っていないため、生クリームを使ったフラペチーノを作ることにした。元パティシエの東治輝さん、パティシエ時代に使っていた濃厚な生クリームを使用することでエスプレッソを引き立てるのではないかと考えたのである。
テストチームからの評価も上々で、最終判断はCOOのプレイディー・ブリュワー氏が行うこととなった。イタリアのアフォガードのよう、スターバックスの原点に戻った感じだと評価をもらい、商品化が決定した。
東京丸の内で、移動販売車によるサンプル配布を行ったところ、30代・40代の人たちにも非常に好評だった。翌日、『エスプレッソアフォガードフラペチーノ』という商品名で販売がスタートとなった。
コーヒーの半世紀に渡る移り変わり
いまや、本格的なコーヒーを手軽に楽しめるようになっているが、その原点は半世紀前に遡る。日本でコーヒーが一般的な飲み物になったのは、1960年頃からである。この頃は、コーヒーをサイフォンで入れる喫茶店が流行った。
そんな中、缶コーヒーやインスタントコーヒーが登場し、手軽にコーヒーを飲めるようになった。これがコーヒーのファーストウェーブと言われている。
続いて1990年代以降、スターバックスやドトールコーヒーショップなど、コーヒーチェーン店が登場した。メニューもシンプルなコーヒーだけでなく、エスプレッソやカプチーノといったメニューの多様化が進んだ。これがセカンドウェーブである。
そして、サードウェーブでは、豆の種類や産地を明確に打ち出すシングルオリジンが売りで、ハンドドリップでコーヒーを入れるお店も増えてきている。
そして、各社はフォースウェーブとなる次の一手へと乗り出し始めていた。
幻のゲイシャ種でフォースウェーブを作り出そうとするスクロップ
ゲイシャというコーヒー豆をご存知だろうか?原産国はエチオピア。エチオピアのゲシャ村で発見されたのが名前の由来と言われている。栽培が難しく世界でも限られた場所でしか作られていない。このゲイシャを使ったコーヒーを日本に広めようとする会社があった。
千葉県流山市のショッピングセンター内にスクロップコーヒーロースターズというコーヒーショップがある。注文を受けてから豆をひき1杯分ずつ抽出して入れるのが特徴である。このスクロップコーヒーロースターズのコーヒーをすべて一手に引き受けるのが中嶋太郎さん(39歳)である。
中嶋太郎さんは国際的なコーヒーの資格であるQグレーダーを持つコーヒー鑑定士である。年間200種類以上のコーヒーを鑑定しており、スクロップコーヒーロースターズで扱うコーヒー豆の選別、買い付け全てを担当している。
スクロップコーヒーロースターズを運営するマルハンダイニングでは、自宅で本格的なコーヒーを飲む人が増え始めている現状を鑑み、幻の品種、パナマ・ゲイシャを使ってその需要を狙おうとしていたのである。
パナマ有数のコーヒー農園であるエリダ農園に中嶋さんから依頼を受けた買い付け業者が来ていた。このエリダ農園はパナマのコーヒー協会の会長をつとめるウィルフォードさんが運営している。
ウィルフォードさんは
ヨーロッパ、台湾、韓国や中国から既に購入の予約が入っている
という。すでにゲイシャ種を求める熾烈な争いが始まっていたのである。
なんとか、ゲイシャ種の確保ができそうだったのだが、課題はその価格。想定よりも高い価格でしか買い付けできそうにないため、中嶋太郎さんは次なる一手に出ることにした。
それが、
ゲイシャのブレンド
である。
ブレンドとは、別々のコーヒー豆を混ぜて、新しい味をつくることである。通常ブレンドとは、価格を安くするために行っていることが多いが、中嶋太郎さんはブレンドすることによってシングルでは出せない味を作り出そうというのである。
さっそく、新たに作り出したゲイシャブレンドを試す機会が訪れた。神奈川県逗子市にある地元密着のスーパー、スズキヤが周辺に出来た競合他社にはないコーヒー豆の取り扱いをはじめたいと依頼があったのである。
実は店舗の周辺にコーヒーを売りにする店舗が次々にオープンし、コーヒーの売上が前年比で2割も減ってしまったのである。
スズキヤでのテスト販売は上々で、自宅でおいしいコーヒーを飲むというフォースウェーブへの第一歩を踏み出せた。
一杯のおいしいコーヒーを作るためにさまざまな人が世界中を奔走していた。今までなかったものが身近なものになる、まさにコーヒーはそんな存在のひとつと言えるでしょう。
今度はどんなジャンルで新しい波が起こるのだろうか。