[未来世紀ジパング]大きく変わる がん治療最前線 – 2018年5月16日

未来世紀ジパング
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こんにちは。ひとりで.comです。

2018年5月16日放送の未来世紀ジパングは「大きく変わる がん治療最前線」と題して

日本人の二人に一人がかかる病 がん。そのがん治療が、今年4月から大きく変わった。ロボットを使った手術と放射線治療で、公的保険の適用が大幅に拡大されたのだ。これまで高額で、治療をあきらめていた人に光明が。また、アメリカで注目されている最新治療法も紹介。

 

大きく変わる がん治療最前線

 

手術支援ロボット「ダビンチ」によるがん摘出手術

ダビンチ
ダビンチ

東京都文京区にある順天堂病院である手術をうける患者が急増しているという。それが、ロボットを使ったがん治療である。このロボットを使うことによって、胸を大きく開いて行う開胸手術や胸腔鏡手術といった手術を行う必要がなくなった。

この手術支援ロボットは「ダビンチ」と名付けられたもので、アメリカのインテュイティブサービカル社が開発したものである。これまでのがん摘出手術と比較しても患者への負担が少なくて住むのである。

手元の操縦桿でロボットを操縦することができる。もともと、このダビンチは軍事用として開発されたもので、兵士の治療を遠隔操作で行うためのものだったのである。開胸手術であれば5時間ぐらいかかるところ、40分ほどで手術が完了するというから驚きである。

 

ダビンチは2018年4月から保険適用の範囲が拡大し、昨年と比較しても4倍の手術症例数となっている。

 

愛知県豊明市の藤田保健衛生大学病院にも、ダビンチのスペシャリスト宇山一郎医師がいる。2009年の導入後、ダビンチを積極的に活用し、これまでに600件以上の手術を行ってきている。

藤田保健衛生大学病院が導入しているのはダビンチの第4世代と言われるもので、アームの直径が8ミリと非常に細くなっているため、より細かい作業が可能となっている。

 

 

開発が進む手術支援ロボット

 

保険適用の拡大で急拡大しようとしているロボット支援によるガン手術。日本の病院では、2000年頃から手術支援ロボットの導入がはじまり、いまやおよそ280台のロボットが日本の病院にはある。

これまでは、アメリカの企業が作ったダビンチが独占していたが、そんな中日本の企業が同様の手術支援ロボットの開発に乗り出していた。

それが、東京医科歯科大学と東京工業大学が連携した大学発ベンチャーのリバーフィールド社である。現在社員は23名。

現在、リバーフィールド社で開発している手術支援ロボットはダビンチと比較して、手の感覚という機能がついている。ダビンチは手の感覚がついていないため、どこに当たった…などという状況はわからなかったが、この手術支援ロボットでは、その感覚がわかるため、より正確な手術が可能になるのだという。

現在、開発を進めている段階で、2020年には何かしらの臨床試験を行える段階に進めたいという。

 

ちなみに、こうした手術支援ロボットは1台あたり約3億円、年間のメンテナンス費として1,000万ほどかかる超高額の医療機器となっている。

 

 

 

がん細胞にもっとも照射する重粒子線治療

重粒子線
重粒子線

ここまで、がんの手術分野の技術発展について見てきたが、それと同様にがんの放射線治療の分野でも技術進歩が起こっている。放射線治療は主に手術の場所が奥深かったりする場合に活用される技術である。

 

その中でも注目されるのが、重粒子線がん治療である。

 

一般的な放射線治療では、X線を発射させがん細胞を殺すものだが、X線は人の体に入った瞬間が一番強く、がん細胞に届く頃にはその力が弱くなっている。

それとひきかえ、重粒子線の場合、人間の体に入る瞬間よりもがん細胞に届いた瞬間が最大の力を発揮することができるため、照射する回数も少なく済むのだという。

 

こうした効果が認められ、2018年4月から前立腺がんなど一部のがんの治療に対して保険適用が認められたのである。それまで治療にかかる費用は300万程度だったが、それが約10万円と30分の1まで削減できた。

この重粒子線治療に関しては、世界でも日本がリードしている。重粒子線装置がある場所は世界でもまだ10ヶ所しかなく、しかもそのうちの5ヶ所が日本にあるのである。

 

ちなみに、重粒子線装置を製造しているのは、世界でも東芝と日立のみとなっている。

 

 

抗がん剤:オプチーボの価格が抑制される

オプチーボ
オプチーボ

さらに、薬による治療についても進歩が進んでいる。その薬というのがオプチーボという薬である。一般的にがんに対する薬、すなわち抗がん剤は、がんの進行を遅らせるために用いられることがほとんどであるが、このオプチーボという薬は、免疫の力を利用した抗がん剤である。

体内にある免疫細胞はもともとがん細胞を攻撃する力を持っている。しかし、この免疫細胞には攻撃を中止するボタンを持っており、そのボタンをがん細胞が押してしまうことがある。すると、免疫細胞は力を失ってしまう。するとがん細胞は増え、がんが進行していってしまう。

オプチーボは、この免疫細胞のボタンを守る力を持っており、それにより、がん細胞を攻撃し続けてくれるようになるのである。

 

オプチーボの価格は2014年に100mlで73万円、年間にすると3,500万円もかかる超高額の薬だった。それが、他のガンにも効くことがわかるようになり、政府は薬の価格を36万円に下げることを決定した。そして2018年には、28万円にまで下がったのである。

 

 

がんを消滅する光免疫治療法

 

アメリカのがんの最高峰の医学研究機関であるアメリカ国立衛生研究所では、約6,000人にもおよぶ医師や科学者ががんの研究を行っている。中でも最も注目されているのが、小林久隆さんである。京都大学大学院を卒業後、2001年からここで研究を続けている。ここで20年かけて小林久隆さんが研究したものが「光免疫治療法」である。

この光免疫治療法では、特殊なタンパク質と、タンパク質にくっつく性質を持つIR700という成分が入った薬を服用し、そこに近赤外線を照射してがん細胞を破壊するという仕組みである。

この開発した薬を注射すると、IR700がタンパク質とともにがん細胞まで運ばれていく。そしてそこに近赤外線を照射すると、化学反応を起こしがん細胞の膜に傷をつける。傷から水が入っていき細胞が膨張し破裂するというのである。

この近赤外線はテレビのリモコンなどにも使われているもので、人体への影響はほとんどないという。また、効果のあるがんの種類は問わず、末期がんでも効果が期待できるのだという。

2015年からアメリカで治験が開始されており、15人のうち14人に対して効果があったとされ、そのうち7人はがんが消滅したという実績も持っている。

この光免疫治療法、2020年の実用化を目指しているという。

 

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