こんにちは。ひとりで.comです。
2018年5月29日放送のガイアの夜明けは「マネーの魔力2」と題してスルガ銀行の不正融資疑惑問題、レオパレス21の違法物件問題について特集します。
「家賃保証30年」といううたい文句で、日本全国で拡大したアパートなどを中心とする不動産投資。マイナス金利時代、金融機関からの積極的な融資姿勢もあり、「サラリーマン大家」たちが増えた。しかし、いま、いま大きな曲がり角を迎えている。
銀行から億単位のカネを借りて購入した物件は、実は割高。入ってくるはずの賃料は払われず、巨額のローンだけが残り、運営会社は破たん――。
女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」は、破産寸前の人々を大勢生み出し、問題解決の糸口は見えていない。昨秋から追跡取材をしてきたガイア取材班。個人投資家を囲い込み引きずり込んだ背後には何が?不動産投資の「魔力」を暴き出す。
そして、日本で初めてアパート投資の「30年一括借り上げシステム」を導入したレオパレス21。前回、取材班はレオパレス21とオーナーをめぐる「賃料減額」「契約解除」のトラブルを追跡した。今回、新たに浮上した問題をスクープ取材。シリーズ・マネーの魔力第2弾、不動産投資の実態に切り込む。
マネーの魔力2
【目次】
女性専用シェアハウス:かぼちゃの馬車にいったい何が?
女性専用シェアハウスの「かぼちゃの馬車」の自己破産がいま社会問題となっている。サラリーマンオーナー約700人が破産の危機に陥っているという。30年家賃完全保証という甘い言葉の裏でいったい何が起きていたのか…。
サラリーマンも定年間近の50歳になると、老後の安定について考えるようになる。今の生活レベルを落とさないようにどうやって過ごすことができるか、そこで思いつくのが、不動産投資ローンである。
木村さん(仮名)は、銀行から1億円を借り、「かぼちゃの馬車」に投資したひとりである。一見戸建てのように見えるがシェアハウスになっており、家具や家電も備え付けられてすぐに住めるようになっている。家賃はひとり3万円で、共益費が2万円。キッチンは共同となっており、1棟に6人が住むことができる。
ターゲットは地方から上京してくる若い女性。キャッチフレーズは「トランクひとつでそのまま入居」となっていた。
かぼちゃの馬車に住んでいた女子大生は
私立大学に入学するにあたって安い家を探しており、シェアハウスを選んだ
という。
かぼちゃの馬車の運営は株式会社スマートデイズ
その「かぼちゃの馬車」を運営していたのが、株式会社スマートデイズである。6年ほど前から事業をはじめ、都内を中心に約1,000棟ものシェアハウスを持っていた。2020年に上場も目指していたという。
仕組みは、かぼちゃの馬車のオーナーを募り、銀行が約1億円を融資し、そのお金を元手にシェアハウスを購入。株式会社スマートデイズはそれを一括で借り上げ、運営を行うというものである。そして、集めた家賃から経費を抜いてオーナーに支払うのである。
オーナーには入居率に関わらず30年間にわたって家賃の完全保証をうたっていた。先程の木村さんの場合、
- 家賃収入:70万円
- ローン返済:50万円
- 月収益:20万円
が毎月入ってくるはずであった。しかし、それも1年で崩れてしまった。株式会社スマートデイズは、2017年10月には家賃減額を申し出てき、2018年1月には支払停止してしまったのである。
そして、2018年5月には、株式会社スマートデイズは破産に陥ってしまったのである。オーナーの多くは頭金無しで億単位の融資を行っていたのである。
当初、9割と言われた「かぼちゃの馬車」の入居率、実態は空室ばかりで4割ほどだったのである。
融資を行っていたスルガ銀行
この融資を行っていたのが、スルガ銀行である。
記者会見で米山明広社長は
融資を受ける際、お客様の自己資金の残高を証明する通帳の偽造・改ざんが行われていた。それを相当数の行員が認識していた可能性が認められる
と発表した。
社長は、改ざんがあったことは認めるものの、どういう経緯でそういった事が行われていたのか、指示があったのか、についてはわからないと説明した。
なぜ、スルガ銀行はなぜ頭金もない人たちに対してローンの審査をおろしたのだろうか。
スルガ銀行は、鉄道模型の購入を目的としたローンや最高800万円を借りることができるロードバイクのローンや、若者が着物を借りられるようなローンなど、個人に特化した個性的なローン商品を数多く販売していた。
独自路線で高い収益力を誇り、業務利益額は近年、右肩上がりで「地銀の優等生」と評価されてきた。
スルガ銀行の融資のための資産証明改ざん方法
実際にどういった経緯でこの問題が起こってしまったのか…。加藤弁護士が真相究明に力を注いでいた。加藤弁護士は、2018年3月、ローンを組んだ複数名からの依頼を受け、株式会社スマートデイズなどの関係先を提訴した人物である。
加藤弁護士は、かぼちゃの馬車を販売していた販売代理店の社長と面会していた。この社長は、自らの手でお客さんの資産証明を約10回ほど改ざんしたという。
その手口はというと、元々パソコンに内蔵されているグラフィックソフトを活用して、資産残高をうまくコピーして貼り付け、あたかも残高がたくさんあるように見せるというやり方である。
例えば、残高が、
17,343円
だったとすると、頭の
17,3
の部分をパソコンのソフトで画像を切り取り、それを、通帳の残高部分の頭にくっつけるのである。すると…
17,317,343円
という形で、一気に3桁も通帳残高を増やすことができるのである。
スルガ銀行は、通帳の原本ではなく、通帳のコピーで融資を受け付けていた。もし、敢えて原本ではなく、コピーで融資を通すようにしていたのであれば、スルガ銀行側も改ざんを認識していた可能性がある、と加藤弁護士は指摘する。
そして、加藤弁護士は、スルガ銀行の元幹部社員との面会に成功した。加藤弁護士は、
資産残高の改ざんは銀行にとっても、融資が返ってくる可能性が低くなるためリスクが高い。それなのに、なぜ銀行側がそれを黙認していたのかがわからない
と指摘すると、元幹部社員は
まずは、融資を引っ張って営業成績をあげることが第一優先で、その後のことまでは考えられない
と社内の特別な事情について話した。
さらに、スルガ銀行内の調査資料によれば
営業部門が審査部門よりも優位に立ち、営業部門の幹部が融資の実行に難色を示す審査部の担当を恫喝していた
という事実が記されていた。
社内の営業部門では、営業成績に関わる恫喝が横行しており
お前、2億持ってこれるって言っただろ、今すぐ持ってこい。持ってこれるまで帰ってくるな
といったようなやり取りも行われていたのだという。
こうした組織全体が業績至上主義に飲み込まれていたため、改ざんを黙認する土壌ができあがったのだと推察されている。
スルガ銀行と不動産投資販売代理店とのLINEのやり取り
さらに、加藤弁護士のもとに持ち込まれた証拠は、かぼちゃの馬車以外のスルガ銀行と販売代理店とのLINEのやり取りであった。そのLINEのやり取りの中には、スルガ銀行の行員が販売会社に対して、書類の改ざんを指示するようなやりとりが残されていた。
これまで、スルガ銀行側は、社内での改ざん指示はなく、販売会社が勝手に改ざんを行っていたと説明していたため、このLINEは大きな証拠となる可能性が高いという。
スルガ銀行は現在、第三者委員会を設定して調査を開始している。
業界初で一気に拡大したレオパレス21
下記の画像は、2017年にレオパレス21が新聞に打ち出した広告である。
ここには、
- 敷金仲介手数料ゼロ
- 30年一括借上システム
- 家具家電付きの部屋を導入
数々の業界初を打ち出し、利用者にもオーナーにも広く受け入れられたレオパレス21は、またたくまに全国に建てられるようになった。
問題を抱えるアパートが1,000棟も見つかる
しかし、レオパレス21が建てたいくつかのアパートが問題を抱えていることが明らかとなった。
レオパレス21が2018年4月末に発表したプレスリリースによれば、
図面通りに作られていない可能性があるアパートが全国に1,000棟あり、その補修工事を行う
というものである。
そのプレスリリースによれば、集合住宅「ゴールドネイル」および「ニューゴールドネイル」シリーズにおいて、建築確認を受けた図面と実際の施工内容が一部異なるものがあり、補修工事を実施する、というのである。
補修工事が必要な場所は以下の場所である。以下の界壁と呼ばれる箇所は建築基準法で建築する際に必要と定められた箇所であるにも関わらず、それがなかったというのである。
ゴールドネイルシリーズの界壁がない
レオパレス21が展開するゴールドネイルシリーズは、1991年から1995年までの間に発売された木造アパートのシリーズでバブル崩壊後に業績が傾いた際に、このシリーズの発売によって、業績をV字回復させたとされている。
しかし、このゴールドネイルシリーズには、屋根裏に必要な「界壁」とよばれる箇所がないのだという。界壁とは、火災の延焼防止や遮音目的のため建築基準法で設置が義務化されているものである。
レオパレス21のゴールドネイルシリーズには、この界壁がない物件があるのだという。界壁がない場合、火災の際にあっという間に火が燃え広がり、被害が大きくなる可能性があるのである。
ガイアの夜明けは独自にリストを入手し、レオパレス21が上記の公表を行う前に岐阜県にあるゴールドネイルシリーズの独自調査を行った。現在メンテナンスを控えて、入居者はいない物件だった。
オーナーの許可を得て、屋根裏の界壁の有無を調べてみると…そこには界壁はなく、完全につつぬけの状態になっていた。
レオパレス21が提出した図面には確かに界壁が天井裏まで繋がっているのであるが、実際の物件にはそれがなかったのである。
岐阜市の職員も立ち会いのもと確認してもらうと、岐阜市は建築基準法違反と認定し、レオパレス21に対して是正を求めた。
さらに調査を進めると、三重県でも同様に界壁がないゴールドネイルシリーズが見つかった。こちらはなんと現在8戸中7戸に対して、入居者がいる状態だった。
こちらは、本来、石膏ボードを界壁として貼られていなければならないのが、薄いベニヤが界壁として用いられ、さらに全面に貼られておらず、隙間がある状態だった。
このゴールドネイルシリーズのオーナーは、この状態を正しい様式に補修するとなると、全部で約4,000万ほどかかるとリフォーム会社から通達された。
この物件に関しても、三重県桑名市の職員が立ち入り調査を行い、建築基準法に抵触すると認定した。
そして、その日の午後、レオパレス21が上述のプレスリリースを出したのである。
レオパレス21の苦しい記者会見
レオパレス21の関係者はこの件は、社内では隠蔽されてきた事柄であると指摘する。その関係者によれば、施工当初から20年にわたって隠蔽されてきたことであり、現役員は知っていることだという。
実は、界壁を巡る問題については、過去にも指摘されたことがあった。
2018年5月29日、レオパレス21は緊急に記者会見を実施し、このゴールドネイルシリーズの界壁がない問題について説明を行った。
今回、界壁がないということが発覚した時期について、レオパレス21側は
今回の指摘を受けて発覚したものであって、昔から知っていたという事実は経営レベルではない
と説明した。
こうした自体を受け、国交省幹部は
界壁がないことは違法であるため、是正勧告し、レオパレス21の建築士を処分する方針
と発表した。
日本では、超低金利政策のもと、大都市圏を中心に建設ラッシュが続いてきた。その中で、今回見てきたように家賃保証をうたった不動産投資の中にはずさんな実態があることがわかった。投資家や入居者を欺く行為には厳しい対応が求められる。
その一方で、投資は自己責任。身の丈に合わないものには手を出さない。慎重な見極めも必要なことなのではないだろうか?