こんにちは。ひとりで.comです。
2018年6月5日放送のガイアの夜明けは「発掘!”新たな資源”」と題していらないものといらないものをかけ合わせて価値有るものを作り出そうとする水産技術センターの臼井一茂さんがしかけるキャベツウニ、紙に変わる新素材ライメックスの品質向上を目指す株式会社TBMの開発責任者、松田聡さんの活動を特集する。
“限りある資源”を巡って争いを繰り返してきたのが人類の歴史なら、”限りないもの”を資源にできれば、世界を変える事ができるかもしれない。
大量発生し、やっかい者として捨てられる「ウニ」。この”使い道のない資源”が、あるアイデアで絶品食材に生まれ変わる。一方、地球上に無尽蔵に存在する「石灰石」。この”有り余る資源”を主原料にした新素材が今、紙やプラスチックの代替品として世界中から注目を集めている。
これまでの常識を覆す”新たな資源”の活用、その現場に迫る。
発掘!”新たな資源”
【目次】
いらないものといらないものをかけ合わせて新たな資源に
日本で消費される億のうにが外国産である。もちろん日本の近海にもうには多く存在するのであるが、品質が悪く多くのうにが放置されている。
そこで立ち上がったのが、神奈川県水産技術センターの臼井一茂さんである。臼井さんいわく、日本のうにもしっかり身が入れば売り物になると言う。
神奈川県の沖合いで磯焼けという現象が起きていた。磯焼けはムラサキウニが海藻を食べ尽くしてしまうことで発生する現象である。神奈川県は磯焼け対策に年間約480万円をかけ、ムラサキウニを約6万個駆除している。海藻がないと魚が育たず、アワビなども育たない。近年の温暖化の影響もあって、その被害は年々増え続けており、駆除がおいつかないのが現状だという。
このムラサキウニは身が少なく、食用にはむかない。それが放置されている要因にもなっており、悪循環が起こっている。
このムラサキウニを活用できないかと神奈川県水産技術センターの臼井一茂さんが立ち上がったのである。臼井さんは水産加工一筋25年。これまで小ぶりのカマスを使った揚げ物やまぐろのコンフィなどおよそ2,000にも及ぶ水産加工品を夜に送り出してきたエキスパートである。
ムラサキウニを使った養殖を3年にわたって行っている臼井さん。ムラサキウニに与えるエサはキャベツである。ウニは体重の約10%が身になると売り物になると考えられている。
身がほとんどなかったムラサキウニにキャベツを与えるとおよそ2ヶ月半で約6倍に身が増えることがわかってきた。さらに、キャベツを与えることで甘味成分が増し、苦味が4分の1まで低下していたのである。
キャベツを巡るウニ達の闘いを見ていると、人間同士の小さな争い事がちっぽけに見えてくる pic.twitter.com/F2dy4TZ1Bt
— ㈱セルタン採用チーム@とりこらぼ (@cellutane01) 2017年12月11日
三浦半島は日本でも有数のキャベツの産地で年間5万5,000トンものキャベツを生産している。三浦の春キャベツは甘みがあってブランド化している。
そのため、出荷基準も非常に厳しくなっているのである。
出荷基準が厳しくなるほどに、規格外品が増え、その割合は1割になるという。規格外品は箱代などを考えると赤字になってしまうため、畑で潰してしまうのだという。
この畑のもったいないを海の厄介者のエサに…と臼井さんは考えたのである。
我々が普段食べているウニの身は卵巣や精巣といった生殖器官で夏の産卵期に向けて大きくなるが、まさにそれが春キャベツの時期と一致するのである。
このキャベツウニの話を聞きつけ、大手百貨店高島屋のバイヤーが臼井さんと漁協の元へやってきた。横浜の店舗で売れる食材はないかと探していたところ、キャベツウニの話を聞いたのだという。
バイヤーの評価は上々だが、漁協の人間はまだ不安だという。というのも、まだ完璧なキャベツウニの成功方式を見つけたわけではなく、キャベツウニの身入りの状況を考えると、売り物として出せるのか懐疑的なのである。
石灰石を活用した紙に変わる新素材:ライメックス
2018年に行われた東京マラソン。その東京マラソンで扱われていた応援マップに使われていたのが、石灰石から使われた新素材である。その素材の名前はライメックスという。
このライメックスは株式会社TBMという企業が製造している。
特に2020年の東京オリンピックでは、さまざまな世界から多くの人が訪れることが期待されているため、そこでライメックスを使ったさまざまなものを出すことによって、ライメックス普及の起爆剤にしたいと考えているのだという。
ライメックスは90%以上がリサイクル可能で、環境に優しい新素材としていま世界から注目を集めている。
ライメックスの素材となっている石灰石は安価で世界中に豊富に存在する素材である。日本でも100%自給できる唯一の鉱物資源と言われている。そもそも通常の紙だと1トンの紙を作るのに20本ほどの木と100トンほどの水が必要となる。
一方、ライメックスは、ほぼ水を使わずに石灰石を8割、樹脂を2割かけあわせることで製造することができるため、環境にもやさしい素材なのである。
既に、名刺やポスター、アパレル製品のタグや商品のポップなどに活用され始めている。中でも最も力を入れているのが、飲食店でのメニュー表である。実際、大手回転寿司チェーンのスシローでは、ライメックスを使ったメニュー表が全店舗に導入されている。
ライメックスは耐水性があるため、濡れても問題ないのである。
薄い素材が仇に…ライメックスのメニュー表
そんななか、ある企業からクレームが入った。その飲食店で導入されているライメックスのメニュー表は明らかによれよれの状態になっていたのである。
フライングガーデンというハンバーグが有名な外食チェーンで、北関東を中心におよそ60店舗を展開している。
クレームの対応にあたったのは、執行役員の中谷桃さんである。差し出されたのは、昨年12月に納品したメニュー表で、明らかによれよれになっていた。
なぜ、こんなことになってしまったのだろうか。
現在、導入しているライメックス製のメニュー表は紙が薄く硬さがないため、メニューホルダーの中でずり落ち、他のメニューに潰されてしまい、よれよれになってしまうという現象が起きていたのである。
フライングガーデンは、ライメックスが環境に優しい、という理由で採用してくれたという経緯がある。しかし、よれよれになってしまったメニューはお客様にとても出せるものではないため、早急に見直す必要があったのである。
開発本部の松田聡さん(37歳)は、この件をうけ、よれよれにならない品質の向上を目指すこととした。
品質向上を行うにあたっては添加剤を加えることで、新たなラインナップを作ることにしたのである。添加剤の調整自体はそこまで時間がかからずに配合を終えることができ、いよいよ生産に移ろうというときに、大きな問題が起こったのである。
ライメックスの製造は、山形県の蔵王にある工場で行っているが、工場に行くと、
不適合品
の山ができあがっていたのである。
その不適合品を見ると、シートに大きな反りができてしまっていたのである。ライメックスにおいて、反りの許容範囲は2ミリ以内と定められているが、今回の不適合品の反りは5ミリと大幅に反りの許容範囲を超えていたのである。
世界進出のための品質向上のプレッシャー
うまく開発が進まない開発担当の松田聡さんは、ある焦りを抱えていた。それは、2017年3月に中東サウジアラビアのサルマン国王の来日に遡る。サウジアラビアでは、原油価格の下落と将来的な資源枯渇に危機感を頂き、産業の多角化を目指していた。
この来日でトヨタ自動車やみずほ銀行など、日本の名だたる大企業がサウジアラビアとの経済協力の覚書を交わす中で株式会社TBMも参加していたのである。
サウジアラビアは木や水は乏しい半面、石灰石は豊富に存在しており、ライメックスに大きな期待が寄せられているのである。
株式会社TBMは他にも40カ国で特許を申請し、世界進出を目指している。海外事業の早期実現には、品質の向上が欠かせないのである。その品質は開発責任者である松田聡さんにかかっていると言っても過言ではない。
松田聡さんは、品質向上のヒントを得るために会ったのが元大手化学メーカーの技術者である。既に引退はしているものの、現役時には100以上の特許を取得した人物である。
さっそくシートの反りの状態を見てもらうと、原因をすぐに特定した。その技術者いわく、温度が原因だという。これだけ幅のあるものを直線で作るには、温度が一定に保たれないと均質化したものはできない、というのである。
早速松田聡さんは向上に向かい、温度に目を向けて調整を行うこととした。
そこで松田聡さんは、シートの押し出し段階の温度ムラが原因ではないかと考えたのである。山形の蔵王は外気が寒い。シートの押し出し時、両端は外気にふれる時間が長く、温度が下がってしまう。すると中央部分との差が生じてしまい、それによって反りが大きくなってしまっているのではないかと考えたのである。
そこでその部分の温度を予め上げておくことで反りをなくそうというのである。
すると、反りは1ミリまで減らすことができるようになった。
目の前に大量にあるもの、そして大量にあり邪魔になっているもの、一見使いみちがないそれらも考え方を変えると価値ある資源になることが今回わかった。
私達のまわりにある新たな資源を掘り出す力、それは発想力。
あなたの近くにも宝は眠っているかもしれない。