こんにちは。ひとりで.comです。
2018年7月31日放送のガイアの夜明けは「”奇跡の糸”が世界を変える」と題して西陣織から生まれた銀メッキ繊維が新たなウェアラブル端末を生む。これまでの価値を超える新たな価値で世界に挑むミツフジを特集します。
腕時計、メガネ、衣服などに情報通信端末を装着し、血圧、心拍数、消費カロリーなど日々の活動データを収集する「ウェアラブル(着用できる)端末」。その市場は年々拡大、今後も大きな成長が見込まれている。
そんな中、世界中から注目を集めている企業がある。導電性に優れる「銀メッキ繊維」の技術を生かし「シャツ型ウェアラブル端末」を開発したミツフジだ。この端末、心拍などの生体情報を計測し、それをスマホやパソコンで確認することができる。また、その情報を解析することで、体の「健康状態の変化」を把握できるのだという。ミツフジには今、介護、健康、さらにはスポーツ界など、様々な分野からオファーが殺到中。”着る”という行為の中で様々な情報をモニタリングする…最新技術の可能性に迫る。
“奇跡の糸”が世界を変える
【目次】
銀メッキ繊維のミツフジ
連日猛暑が続く日本各地。特に建設現場では、人手不足による作業員の高齢化、オリンピックによる建設ラッシュも重なり、熱中症対策に待ったなしの状態である。
その建設現場にミツフジ株式会社の社長、三寺歩さんの姿があった。ミツフジは銀メッキ繊維を活用した特殊なウェアを開発する企業である。これによって熱中症対策を行おうというのである。
このミツフジの銀メッキ繊維、さまざまな効果が期待されておりたとえば靴下に繊維を重ねると、抗菌防臭効果があると言われており、1週間ぐらい同じ靴下を履いていても臭いがしないのだという。
銀メッキ製品の開発を手がけるミツフジは1956年創業で、従業員は43名となっている。3代目社長の三寺歩さんは43歳でForbesの表紙も飾ったいま注目の若手経営者である。ミツフジは銀メッキ繊維を世界15カ国で販売し、業績を伸ばしている。
銀メッキ繊維とは、髪の毛の5分の1ほどのナイロンに銀をほどこしたものである。ミツフジの製品は他社と比べてもきっちりコーティングされており、そのため電気を通す導電性にすぐれているのである。
プロボクサー村田諒太さんも期待する調子を数値化するウェアラブル端末
ミツフジはこの銀メッキ繊維を使って、ある特殊なシャツを開発した。それがhamonである。このシャツは内側に貼られた電極を通して体の情報を得ることができるシャツ型ウェアラブル端末である。
このシャツはボクシングミドル級王者の村田諒太さんも活用している。このシャツを来てトレーニングを行うと、スマートフォンに心拍数などの情報を集めることで体の状態を捉えることができるのである。
さらに心電波形からストレス指数も導くことができる。今回村田諒太さんのデータから読み取ると、トレーニングの開始時にストレスがかかっていたことが判明した。話を聞いてみると、娘の受験の面接講座があり、それが気がかりになっていたのだという。
本人も自覚していなかったストレス状態も図れるとあって、今後の実用化が期待されている。
一度は諦めかけたミツフジ。3代目社長が新たな価値を見いだす
ミツフジのルーツは京都にある。そこには三寺歩さんの父であり、ミツフジの2代目社長である三寺康廣さんがいる。ミツフジは西陣織の織工場としてスタートした。
しかし、1980年代、生産拠点が海外にうつると苦境に立たされることとなった。活路を求めた三寺康廣さんはアメリカに渡り、1992年にアメリカの銀メッキ製造会社と契約し、ノウハウを習得した。それは日本初の抗菌靴下にも採用された。
順風満帆に思われたが、2012年、父三寺康廣さんから三寺歩さんのもとに思いがけない知らせが届いた。
今月、このままでは会社が倒産する…
というのである。
三寺歩さんは勤めていたIT企業を退社し会社を継ぐことを決意した。新しい市場を開拓するためには新たな製品の開発が必要だったが、父親は昔ながらのやり方を押し付けなんどとなく親子喧嘩となっていた。三寺歩さんは反対を押し切り、独自のシャツ型のウェアラブル端末の開発に着手し、2016年にhamonの発売にこぎつけることができた。今では海外からも問い合わせが殺到しており、売上はこの4年で10倍以上となったのだという。
建設現場の体調管理にhamonが活躍する
そんなミツフジに助けを求めてきたのが、建設会社の前田建設工業である。
建設現場の熱中症対策に課題を抱えており、それを解決するのにシャツ型のウェアラブル端末が使えないかというのである。
炎天下での作業は常に危険と隣り合わせとなっており、現場では冷房の設置や塩飴などさまざまな対策を講じてきたが、それでも足りないのだという。
しかし、現在の仕様だと汗をかくと電極がズレてしまい、データが正確にとれなくなってしまうのだという。これでは、使い物になりません。
そこで相談したのが、石川県にある繊維会社である。これまで伸縮性のある銀メッキ繊維を一緒に作ってきた企業である。ここで告げられたのが、伸縮性があることが逆に電極がズレてしまう要因になってしまっている、というのである。
そこで動きが激しい部分については、敢えて伸縮性の低い電極を貼り付けることによって、運動中のズレを防ごうとしたのである。こうすることで電極が固定され、データがただしく採れるのではないか推測したのである。試作品と研究を重ね、データにブレが生じないことを確認できた。
かつて抗菌などが主な用途だった銀メッキ繊維、いまウェアラブルという新たな分野での活躍が始まっていた。銀メッキ繊維を通して健康状態の変化を把握する、それができるようになれば、体調不良の前兆を察知するなど救える命も増えるのかもしれない。
さまざまな可能性を秘めた銀メッキ繊維、今後さらに広い分野での活用が期待できそうである。