こんにちは。ひとりで.comです。
2017年8月24日放送のカンブリア宮殿は「台頭する新興家電メーカー①~便利なユニーク家電:ツインバード」と題してツインバード工業株式会社 代表取締役社長 野水重明(のみず しげあき)氏が登場します。
家電王国ニッポンに陰りが見える中で、異彩を放つ新興家電メーカーが続々と日本に現れている!
これまでの大手家電メーカーとは一線を画す、その実態をシリーズで追う。
1回目は、新潟県から生まれたツインバード。その製品は、ニッチでユニーク。客の「あったらいいな」の声にとことん向き合い、成長を遂げている。
成熟市場であったらいいなをスピーディに開発
【目次】
あったらいいなという家電を開発するツインバード工業
お手軽くつ乾燥機。先端に活性炭がついているため、匂いも取れるという。子供の靴であればおよそ1時間ほどで乾いてしまう。外に乾かした場合、突然の雨などでやり直す必要があるため、家で乾燥できることが重宝しているのだという。
このくつ乾燥機を作ったのが、日本メーカーのツインバード工業である。いま密かに人気上昇中である。
スティック型サイクロン掃除機やターンテーブルがなく掃除も簡単なフラットオーブンレンジなど、あったら良いと思える家電を低価格で提供している。
ツインバード工業の商品は家電量販店でも販売されている。ツインバード工業の商品アイテム数は約600種類に及ぶ。昨年の売上は年商134億円となっている。
その本社は新潟県の燕市にある。燕三条と言えば、金属加工の町として有名である。それぞれ専門の技術を持つ4,000軒もの工場がこの一体に集まっている。
1951年創業で社員は294人。この小さな規模で大手メーカーに挑んでいるのである。本社工場では、近所の方向けに毎年本社を開放して夏フェスを実施している。1日限りのイベントに2,000人もの人が訪れている。この夏フェス開催時には、普段家電を使っているお客さんから、不満の声を集める場を設けている。
たとえば…
- 製氷機の奥の部分は手入れができないので、汚いと思って使えない
- ドライヤーのコードが絡まってねじねじになるのが嫌
といった、声を集めている。
ツインバード工業株式会社 代表取締役社長 野水重明氏は…
自分たちが勝手に作りたい商品を作るのではなく、お客様の声から開発することを心がけている
という。
一緒にお客さまと作る…というツインバードのポリシーが詰まった商品が、本社のショールーム内に並んでいる。
例えば、LEDふとんライト。災害時に活躍するライトで、普段はベッドサイドで使えるライトが災害時には取り外して懐中電灯として使用することが出来る。
メガネや貴金属をキレイにしたいという声から作ったのが、超音波洗浄機である。
お客さまの声を素早く商品化するツインバード
普段、お客さまの声を集める中枢とも言える場所が、ツインバード社のコールセンターである。1日に入ってくる苦情や問い合わせは約300件。その声ひとつひとつがツインバードの開発のきっかけとなる。
この時期に意外に多いのが、掃除機に関する悩み。
例えば、購入当初のように吸引力がなくなってしまった
というような悩みが多く寄せられているという。
サイクロン式掃除機の場合、大きなゴミはダストボックスに溜まっていくが、小さなゴミがどうしてもフィルターの部分に付着してしまい、空気がうまく通らなくなりモーターが熱くなって吸引力が下がってしまうのだという。
コールセンターに集まった声は、月2回のVOC(Voice Of Customer)会議にかけられる。コールセンターから直接開発部に不満の声が届けられるため、開発へのフィードバックが早くなる。
大手家電メーカーの場合、企画から商品化まで2年かかると言われるが、ツインバードは商品化まで最短10ヶ月と早い。
メッキ加工メーカーから家電メーカーへ方針転換
ツインバードは、これまで数多くの商品を開発してきたが、もちろんその中にはほとんど売れずに廃止となった商品もある。
1991年に発売となった「和風炊飯器はがまくん」。他の炊飯器よりも絶対においしいと感じ、家電量販店においてもらったが、当時は全く売れなかったという。
今でこそ、羽釜の形をした炊飯器は他社製品で売れているものも増えているが、30年前からそういった製品を開発していたのである。
ツインバードの創業は戦後復興期にあたる1951年。野水電化皮膜工業所という企業名でスタートした。最初は洋食器などをメッキ加工する下請け会社だった。
下請けは発注元の商売に影響を受けてしまうため、ビジネスモデルとしては不利だと感じ、親会社の注文を蹴って自社製品の開発に踏み切ったという。
そして創業から12年後1963年 自社商品の製造販売を開始した。最初に作ったのが、冠婚葬祭用の金属トレイで、当時販売から1,000万枚を販売したという。
洋食器を作っていたツインバードが家電メーカーへと舵を切ったのが、2代目の野水重勝氏である。冠婚葬祭用の金属トレイは毎年同じものをあげていると飽きられてしまうため、電気ポットや電気ウォーマーなども開発して欲しいと依頼を受けたのが、家電製品にシフトしていくきっかけとなった。
最初に作ったのが、卓上照明。その後改良した調光タッチセンサーライトは9万5,000台を販売するヒット商品となった。大手メーカーが参入してこなかったカタログギフト市場でツインバードは成長していったのである。
現社長の野水重明氏は1965年生まれで子どもの頃は工場が遊び場だった。1989年にツインバードに入社し、取引先のなかった香港に赴任し海外市場の開拓に奔走していた。しかし、帰国してみると5期連続赤字と厳しい状況に追い詰められていた。
会社の立て直しを図り、2011年に社長に就任し、方向転換を決意した。そこで作ったビジョンが「あったらいいな」を作るということである。
最近ではお客さまの健康志向に応えるような商品を多く開発している。
例えば、ヘッドスパの第一人者の手の動きを再現したヘッドケア機のセレブリスト。
市販されているお茶っ葉を入れて粉末緑茶が作れるお茶挽き機。普通に入れると茶葉に7割の栄養成分が残ってしまうが、おれならカテキンなどを丸ごと摂取することができる。
さらに、近年人気のホームベーカリーだが、他社製品とは全く異なるブランパンメーカーを開発している。ブランパンとは胚芽を残した小麦粉から作る低糖質パンである。ただし、ブランパンの生地は膨らみにくくこねる際の回数や温度調整が難しい。
それゆえ、各メーカーは手を出してこなかった。しかし、ツインバードはホームベーカリー初のブランパン対応型の機械を開発したのである。
ツインバードの東京支社では、ブランパンのおいしさをアピールしようとカフェまでオープンさせようということで、2017年11月にオープンする予定となっている。
燕三条の技術を活かして世界に挑戦する製品開発
無印良品のコーヒーメーカーについてはガイアの夜明けでも特集されています。
無印良品の人気商品のコーヒーメーカーは1日260台を製造しているが、全く注文が追いつかない状態となっているという。1ヶ月待ちとも言われる。
これを支えるのが、燕三条の83社の協力工場である。日研シェルモールドは金属を鋳型に流し込んでつくる鋳造の技術を持つ。無印良品のコーヒーメーカーに入るフラットカッターという豆を挽く刃を製造している。
小林研業は研磨のエキスパート。世界に認められている高い技術を持っている。実はアップルのiPodの鏡面仕上げ技術を担当している。
こうした協力工場の高い技術を統合して、高付加価値製品を作り出している。そのひとつが扇風機のピルエットである。
宇宙でも活躍するツインバードの技術
2013年、種子島宇宙センターから打ち上げられた「こうのとり4号機」。このロケットの中にはツインバードの技術の結晶が搭載されていた。
それが、スターリングクーラーと呼ばれる冷却装置。スイッチを入れると一気にマイナス100度まで温度を下げることができる。
宇宙で採取したチリなどの保存に使用することができる。小型のものでマイナス100度まで温度を下げることができるのはツインバードのものだけだという。
この技術は、身近なところでも使われており、ディープフリーザーという業務用冷凍機にも採用されている。ワクチンなどの冷凍保存が必要な医薬品の運搬などに使用されている。