こんにちは。ひとりで.comです。
2017年9月4日放送の未来世紀ジパングは「異常気象と闘う 第3弾」と題して森林火災を救うスーパータンカー、インドネシアの干ばつを救うラジオゾンデ、アメリカの竜巻研究の第一人者、藤田哲也博士を特集します。
雨が続いたり、思いのほか、気温が上がらなかったり、今年の夏も”いつもと違う”。それは日本だけではなく、いまや世界が毎年のように”異常気象”に見舞われている。
今回は、異常気象による「森林火災」「干ばつ」「竜巻」と闘う人々を取材した。力でねじ伏せるか・・・知恵と技術で防ぐか・・・それとも、身を挺して、謎を解明するか・・・
異常気象との戦い方は様々。一体、なぜか?
気象予測が未来の地球を救う
森林火災を救うスーパータンカー
アメリカのロサンゼルス郊外に世界の危機を救う世界で唯一のものがあるという。
それがスーパータンカーと呼ばれる飛行機である。この機体はボーイング747(通称:ジャンボ)がもととなっている。ボーイング747を大幅に改造して、機体の下から大量に水が放出できるようになっている。
この機体は、アメリカが抱えある問題を解決するために作られたものである。それが森林火災である。特にカリフォルニアは森林火災が多く、いまも20ヶ所が燃え続けている。
森林火災の規模も年々拡大しており、1年間の焼失面積は1990年代に1万3,000k㎡だったのが、2012年から2016年の4年間で2万6,000k㎡にまで拡大している。
これは異常気象が原因だと言われている。アメリカ以外でも異常気象はおこっており、インドやパキスタンでは53度もの気温を記録し、アスファルトが溶けるという事が起こった。またバチカン市国では熱波により水不足が生じている。
スーパータンカーの内部はもともとあった座席を全て撤去し、そこに水を入れるタンカーを10個設置している。合計で7万リットルもの水を入れておくことができる。この7万リットルもの水をたった1分で放出することができるのだという。
このスーパータンカーを作ったのは、アメリカの民間企業「グローバル・スーパータンカー・サービシーズ」である。設立されてまだ2年で従業員20名ほどの会社である。
この会社の前身は2013年に倒産したエバーグリーン航空。スーパータンカーはビジネスになると投資家が考え、このビジネスがスタートしたのである。このビジネス、日本とも無縁ではない。実はスーパータンカーの中には、JALの機体もある。2010年、JALが経営破綻した際にリストラされたジャンボがスーパータンカーとして生まれ変わってるのである。
2017年1月、チリで史上最悪と言われる森林火災が発生した。干ばつと熱波が重なり燃え広がった火災が1ヶ月経過しても消えず、東京ドーム7万個分の土地が焼失した。チリは国家非常事態宣言を発令するほどの被害となった。
セスナ機やヘリで消火剤をまくが一向に収まらない。そんな中、スーパータンカーに出動要請が出た。2週間で76回、水や消火剤をまき、発生から2ヶ月でようやく鎮火したのである。
日本製ラジオゾンデで観測データを収集
気象観測に欠かせない”ラジオゾンデ”という装置をご存知だろうか?装置には気温・湿度・気圧・風速・風向を測る機械が設置されており、地上から上空30キロの様子を測ることができるように風船のような形状をしている。
ラジオゾンデに関しては林先生が驚く初耳学でも一部紹介されたことがあります。
観測データは次々と送られて来て、気象衛星やアメダスなどとデータが統合され解析される。その結果をもとに天気予報が作られるのである。
このラジオゾンデ、その多くが群馬県伊勢崎市の明星電気で製造されている。この明星電気は日本でただひとつのラジオゾンデメーカーである。明星電気は1938年創業で従業員は389名の老舗企業である。
明星電気ではラジオゾンデ以外にも気象衛星で使う観測機器や無人観測機アメダスを製造している。近年、その需要は日本だけでなく、トルコやインドネシア、スリランカ、インドといった諸外国からの発注が増えている。
明星電気のラジオゾンデが選ばれる理由はその軽さにある。明星電気のラジオゾンデはおよそ40グラムで世界最軽量。ラジオゾンデが重ければそれだけ、空に飛ばすための水素ガスが大量に必要になるため、軽さは重要な要素なのである。
日本のラジオゾンデで干ばつ対策を行うインドネシア
そんなラジオゾンデがもっとも出荷されているのが、インドネシアである。近年干ばつ被害が多発し、気象予測をすることでインドネシアが抱えている問題を解決できているというのである。
数年前まで、ジャカルタの天気予報は時間別の予報はなく、予報の精度もおおよその状態だった。そこで2015年に日本のラジオゾンデを導入し、1日4回の予報、そして3日後の予報までできるのようになったのである。
ジャカルタより南部にあるサロンゲ村、今年も例に漏れず水不足となっている。しかし、天気予報を活用することで種をまく時期を調整することができるようになり、収穫量が50%も増えたのだという。
竜巻で世界を救った藤田哲也博士
アメリカは世界で発生する竜巻の3分の2がアメリカで発生するという竜巻大国で、年間1,000件以上の竜巻が発生する。
2017年5月にはオクラホマに竜巻がおそい、40軒もの家屋を破壊した。竜巻が多い地域では、竜巻シェルターを作っており、竜巻に備えている。
そんなアメリカでは竜巻を警戒するための竜巻警戒ラジオや竜巻アプリなどが普及している。
竜巻のもととなるのが積乱雲である。その中の一部が強い上昇気流と結びついて発生すると言われている。この説は日本人の藤田哲也博士が研究の結果導き出したものである。
藤田博士は日本からアメリカに渡り、竜巻研究に生涯を捧げた博士で、ミスター・トルネードとも言われるほどだった。
藤田博士は竜巻の現場を徹底的に調査した初めての学者で、積乱雲を上空から撮影することもあったという。アメリカで今では一般的になっているが、竜巻の強さを表す際には「フジタスケール」という言葉を陥る。地震で言う震度のようなものであった。
1960年代まで、竜巻は本数を数えるだけでその強さについては記録として残されていなかった。そこで藤田博士は竜巻の強さをF0からF5までに分類した。
現在でもEFスケール(=改良フジタスケール)という名で世界で使われている。
1970年代、竜巻はスキップして移動するため壊れる家と壊れない家があると考えられていた。しかし、藤田博士はそれに真っ向から反論。竜巻の中にいくつかの竜巻があるという説を唱えた。すると学会から猛バッシングにあう。
しかし、1979年に撮影された写真にいくつもの竜巻がうつっている事がわかり、それ以来藤田博士の説が一般的となり、その後竜巻が多い地域での住宅建設の強度設計の際、参考にされるようにもなった。